◆ イライザ王女の企みとアウラの義家族
イライザ王女は取り巻きの令嬢達を自室に招いていた。
「貴方達は私の大切なお友達よね?」
令嬢達は揃って
「はい。イライザ王女様。もちろんでございます。この様な栄誉を賜り恐悦至極でござますわ」
「私もイライザ王女様のお側に侍ることが幸せでございます」
令嬢達の口は慣れた様に揃ってイライザを褒め称える。
しかし誰も心から笑っていない。
そんなことを気にもせずイライザが徐に口を開けた。
「ねえ、聞きました?ラティオー様この度の舞踏会で婚約者を連れてお見えになるそうですわ」
寂しそうな顔でイライザは令嬢達の反応を見る。
「恐れ多くもイライザ王女様・・・私も聞きましたの。伯爵家のアウラ嬢と聞きましたわ」
「アウラ・・・そう。アウラね、身の程も弁えない常識のない子のようね。貴方達はどう思うのかしら?」
「もちろん、そうでございます。ラティオー様はイライザ王女様が一番お似合いにございます。後から来た害虫には相応しくございませんわ」
「まあ、貴方は子爵家のカミュー様ね。良いわね。・・・カミュー様以外はお帰り願えるかしら?」
他の令嬢達はサッと席を立ちカーテシーをして部屋から去った。
一人残されたカミューにイライザはテーブルから小瓶を出し渡した。
ぎゅっと手に握らせ小声で囁く。
「カミュー様、この小瓶の薬は眠り薬でございます。アウラ様のお茶に忍ばせ眠らせてくださいませ。お茶会で眠ったとあっては大きな恥となりましょう。どうか私の願いを聞いてくださいませ。貴方の家の爵位が上がる大手柄となりましょう」
最近取り巻きに加わったばかりのカミューはイライザ王女の一番の駒となれば爵位の低さをカバー出来ると浮き足だった。
「はい。喜んでイライザ王女様に忠誠をお誓いします」
カミューのギラついた瞳に満足したイライザはそっと部屋から出してこれからのことを労った。
しかし時間が経つごとにイライザは苛立っていった。
公爵家の婚約者として認められると言うことは・・・会ったこともないアウラに無性に腹が立つ。
(今まで上手く潰して来たのに!)
イライザは自室で自分の爪を噛んでいた。時折、近くのものを投げつけ側付きの侍女達を扇子で叩きつけていた。
「なんなの!アウラですって!許せないわ!殺す!ラティオーは私のものよ!この王国最高の地位と美しさは私の手の中にこそ在るべきだわ!そうよね?」
周りの侍女達に目を向ける。
叩かれすぎてうずくまっている侍女達の悲しい性か
「ハイ。左様でございます。イライザ王女様」
やっと少し気が晴れたのかイライザは口の片側を上げ小さく笑う。
扉の外から小声で囁く者がいた。
「イライザ王女、連れて参りました」
イライザ王女は一人の侍女にアゴを上げ開けるよう合図する。
そっと開けられた扉の前にはアウラの義母と義姉がいた。
急に王城に連れて来られて訳の分からない二人はただオドオドとしていたがいくら平民出でもこの国の王女の顔は知っている。自分達がこの場に連れて来られた事に驚愕していた。
イライザは機嫌の悪さを隠しもせず
「何をしているの?早く入りなさい」
二人は後ろから背中を強く押され前屈みに倒れ跪いた。
「良いわね。貴方達には椅子は勿体無いわ。そのままの姿勢でこちらの質問に答えなさい」
義母と義姉は周りで倒れて血を流す侍女達に自分達の立場の危うさを悟った。
「なんなりとお尋ねください、王女様」
「はて?王女とは誰かしら?貴方達は余計な事を知らなくても良くてよ。それよりアウラ・・・その太々しい女の弱点は何なの?」
二人は心底困った。アウラは自分達の知る何も知らない小娘では無かったから。だから何も答えることが出来なかった。
ただ黙っている二人にイライザはイライラし始めた。
「貴方達は私を馬鹿にしているの!」
バシッとイライザの持つ扇子が義母の頬を打った!
「ひぃー」
フローラが縮みあがった。
「あのう・・・王女様・・・じゃなくて・・・本当に、本当に私達の知るアウラじゃ無いんです!あの子、正体を隠していたんです!騙された被害者は私達です!」
二人を興味なさげに見下ろしていたイライザは
「アハハハ。そう?正体を隠していたのね。それなら盗み癖も男を連れ込んだ事も隠していたのね?そうでしょう?」
二人は一瞬ギョッとしたが声を揃え
「そうです!そうなんです!盗み癖も男を連れ込んでいたことも隠していたのです!」
「ならそろそろ悪い子にはお仕置きが必要だわ。隠し事は発覚する頃合いじゃ無いかしら?」
二人は察した。己の身の可愛さでイライザの望むままに頷くのであった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
とても嬉しいです。
イライザ王女の企みもアウラの嗅覚のお話も
もうすぐです。
楽しみにしていただけたら嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。
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