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◆ ほう。これはもしやお宝発掘?



 着替えを終えたアウラが応接間に戻るとみんなのおしゃべりが一斉に止まった。


「あら、私のドレスが生き返ったわね。アウラ、この美しさを隠していたなんて!まぁなんてこと!」

 母のグロリエが感激していた。

 いや、その横でラティオーが盛大に感激していたのだが。

 親が見ても恋愛初心者だったラティオーが初めて心を動かされた様子が微笑ましい。

 頬を染めアウラに魅入っていたラティオーを父ファーマはからかった。


「ハハハ。ラティオーお前、顔が真っ赤だ!」


「あ、な、な・・・父上、何を!」



「あのう、私は何からすればよろしいのでしょうか?」

 

 至って冷静なアウラはテストの内容が気になって仕方がなかった。学術院にも通っていなかったので執事長やメイド長が出す問題以外にテストを受けた事がないからだ。


「そうだね、気になるよね。まずは字を書いたり読んだりは出来る?」

「はい。困らない程度には」


「一番最近読んだ本は?」


「ルミノックスの書とラクリモサ哲学書です」


「えっ?ラクリモサ哲学書は隣国の言語しか存在しないだろう?アウラ嬢は何ヶ国語話せるのだ?」


「私はこの国の周りの全て4カ国語を話せます」


 父上が手に持っていた空のパイプを落とした。

「はは、では算術は?」


「一応、執事長から領地経営で困らない位には教えてもらいました」


「芸術分野はどうかしら?」


「残念ながらあの家で音の出る物はできませんでした。絵画と刺繍なら趣味程度ですが出来ます。寧ろピアノをやってみたいです」


「この物怖じない性格にマナーは完璧。頭の中も申し分ない。おまけにこの美しさ・・・ラティオーでかした!」


 父上が両手を挙げて万歳ポーズをしている。


「もうアウラは私達を虜にしてしまったわ。驚くならついでに今のうちに驚きたいわ。他になにか自慢出来ることはある?」

 母上が期待のこもった目をしてアウラを見ていた。


 アウラは直立不動のままクルクルと頭の中で考えて言葉にだした。

「公爵家ではお役に立てないかも知れませんが私の四人家族は何処でも暮らしていけるようにと掃除、洗濯、お料理にお菓子作りと身の回りの事は一通り教わったのでなんでも出来ます。でもその中で一番の自慢は鼻が・・・嗅覚が異常な程に良い事です!」


 斜め上のアウラの宣言に一同固まった。

 どうリアクションして良いのか分からなかったからだ。


 そこでアウラが連れてきた家族のメイド長ニヤが助け舟を出した。

「アウラ様の嗅覚のおかげで無くしものが見つかることもございましたし伯爵家では何度も食中毒の危機から救われました。嗅覚と聞いて驚かれるかも知れませんが役に立つ事が多いのです」


 今の説明を聞いた公爵家は満足気に頷いていた。

 母上は嬉々たる顔で

「そう。今の説明で大いに喜ばしい事だと分かったわ!だから()()()・・・やっぱり宝を掘り当てたようね。ふふふ」


 ファーマとグロリエは小さく目配せをした

「あなた・・・」

「ああ・・・」

 二人は感慨深く微笑み合った。



 立ったままのアウラの腕を掴みラティオーが庭園へと誘った。


「もうテストは終わりですか?」


「これ以上、何をするというの?・・・よく今までこの宝を伯爵家は隠していたな?違うか、よく隠れていたね。アウラ嬢」


「ラティオー様、テストに合格したのなら婚約者になったのでしょうか?それでしたらアウラとお呼びください」


「うーん。まだ正式に婚約式をしていないからね。でも喜んでアウラと呼ばせてもらおう。支度金・・・まさか伯爵家に届ける?」


「ふふふ。まさか」


「クックック、だよね」


 いつの間にかアウラとラティオーは二人きりの時には砕けた話し方で気心を通わせていた。・・・いや最初からか


「うーん。そうだなぁ・・・アルブス伯爵家。虐待の罪で投獄すべきか。でも婚約式を終わるまでは爵位はこのままが良いか、悩みどころだな。アウラはどう?」


「そうですね。私も四人の家族を連れてきた事で簡単に立ち行かなくなるだろうと想像が出来ていました。ただ、支度金で揉めるかと思うのです」


 予想する答えをいとも簡単に導き出すアウラにラティオーは心を動かされる。


「うん、私もそう思うよ。アウラ、君とは恐ろしいくらいテンポが合うのだ。私はせっかちで仕事柄、人の粗が見えるとすぐに指摘してしまう」


 今更か?というイタズラな瞳でアウラは答える。


「ふふふ。存じています。初っ端からやらかしてくださったので・・・私と家族をその日のうちに攫ってくれました。せっかち以外の何ものでもないですね」


「!・・・はぁ参った。参ったついでに話しておかなくてはいけない事があるのだ」


「?なんでしょう・・・」


「私は21歳になるが今まで縁談の話がなかった事を不審に思わなかったかい?」


「そうですね、昨日の今日なので正直思わなかったです」


「うん、君のそういうところが良いと思うよ。・・・姉上が王太子妃になったのが5年前だ。当時はまだ君と同じ17歳で私が16歳だった。王太子様には母違いの妹君がいて15歳だった。王家は妹君を私の家に降嫁させようと目論んだのだ」


「とても良いお話ではないですか」


「いやいや一つの家門から姉弟で王家と縁を結ぶと血の結びつきが強くなり過ぎる。それに・・・何より・・・苦手なのだよ・・・あの妹君が・・・」


「あらあら途端に口籠るほどの方なのですか?」


「もうね・・・そりゃ強烈だ・・・」


「それで私は何をすれば良いのでしょう?」


「はあ、本当にアウラは話が早い!気持ち良い!四人の家族の皆さんありがとう!」


「大袈裟ですね。確かに私の家族は優秀ですが」


 ここからは宰相補佐の顔を覗かせるラティオーが真剣な顔で話し始めた。


「これから早急に婚約式の準備をする。アウラの噂も一緒に流していく。でも、これから舞踏会シーズンが始まるからその時に婚約者として先にお披露目挨拶だけは済ますよ」


「その方が牽制できて良いのですね?」


 ラティオーは話がスムーズに進む事に嬉々として続ける。

「そうだよ!で、問題はこの時アウラの実家がどう出るか・・・それと王太子の妹君イライザ王女の出方とそれによる対処。これを頼める令嬢が今までいなかった・・・」


 アウラも一度深い溜息をこぼし

「そうですよね。なにより、この国の未婚のレディーの頂点ですから」


 から笑いとアウラと同調した深い溜息をこぼしながら

「はは。て、言うかね・・・ことごとくイライザ王女が私の縁談話を潰してくれたからね、牽制も何も無いよね」

 ラティオーの目から光が消えた。


 アウラは即座に自分の為すべきことを理解した。


(私のお役目がはっきりしたわね)

「ラティオー様、何か資料はありますか?」


「それなら一度、姉上と会ってもらおうか。近いうちに会えるよう手配する」


「分かりました。早速お役に立てそうで良かったです」


「ね、本当に・・・」

 頼もしげにアウラを見つめているラティオー。

 ラティオーの心にはフワフワとした暖かいものとモゾモゾするようなくすぐったい気持ちがせめぎあっていた。


(ははは、せっかちは恋心までもか・・・

だが今はまだアウラには・・・)





 







最後まで読んでいただきありがとうございました。

とても嬉しいです。

テンポを崩さずお話が進むよう頑張ってます。

飽きずに読んでいただけると幸いです。


これからもよろしくお願いします。

楽しく読んでいただけるように頑張ります。


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そしてこれからの励みになりますので

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