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◆ イライザに刻まれた印


 捕らえられたイライザの目の前に玉座に座る国王陛下を挟み王家の者が並んでいた。


 王城の一番大きな謁見の間ではイライザを全ての貴族達が遠巻きに取り囲んでいた。


 後ろ手に縛られたイライザはガクガクと震え涙と鼻水を垂らしながら陛下に縋るような声を上げた!


「父王さま!これはあんまりです!

 父王さまは私が可愛く無いのですか?

 母殿下!助けてください!」


 第二王妃は国王陛下の腕を揺すり

「陛下!どうかイライザをお助けください!必ずやイライザを改心させ陛下の憂いを晴らしますから!陛下!」


 国王は叫び声を上げる第二王妃を虚ろな目で見た。

(第二妃はこんなに品位が無かったか?・・・この妃からイライザが生まれたから)


 尚もイライザは叫ぶ。


「父王さま!私だけのせいですか?誰も私を注意しませんでした!・・・それなのに王家は私を見放すのですか!」


 イライザの言葉は国王陛下や他の王家の者たちに重い楔を打ち付けた。

 一番の元凶は国王陛下。

 暗い気持ちで国王陛下は第二王妃を見初めた過去を思い出していた。 


 二人の子を産んで暫く体調を壊した第一王妃を養生させるために奥の邸宮に住まわせた。

 ある子爵家に公務で向かった時に妃より二つ下の美しい娘を見初めた。

 鮮やかなローズピンクの髪にぷっくらと膨らんだ唇。国王陛下は気がつくと子爵家の娘をその日のうちに王城に連れ帰っていた。

 幼き頃より許嫁となり王子を二人も産んだ王妃が王城に戻った時には子爵家の娘は第二王妃に収まっていた。

 第一王妃の許可など無かった。


 私の天下だった。

 私の思うままになった。

 全ては順風満帆だったのでは無いのか?

 

 

 大きな鉄窯では鉄の棒に付いた人の手の大きさもある刻印を熱している。

 段々と刻印部分が赤くなり時折パチっと小さな音を鳴らす。


 頃合いと見た宰相ファーマは片手を上げた。

 縛られた縄が解かれイライザは手足を押さえつけられうつ伏せにされた。

 口には猿轡を嵌められたイライザは目に涙を溜め必死でもがいて暴れている。


「んっ!うっ!」

 必死にもがくイライザだが

 騎士の一人がイライザのドレスの腰の辺りを下のコルセットと共にナイフで切り破いた。


 すかさずイライザの露わになった腰肌に熱した刻印が当てられる。


 声ともつかない絶叫が謁見の間に響く。


 肉と血の焦げた臭いに居た堪れない貴族が席を外した。


 玉座に座る国王は肘掛けを強く握り爪は割れていた。


(最初から私は間違っていたのだ・・・可愛いからこそ厳しさも必要だったのだ!私は・・・私は・・・)



 長年の友の国王陛下を一瞥し代わりに宰相ファーマは冷静に終いの挨拶をする。

「この者はドーバー国にてこれから役目を果たす身。軽く手当てをしてすぐに出立させる。この刻印のせいでドーバー王国でも表に立つ事はあり得ぬだろう・・・彼の国でご自分の罪と罰に生涯対峙されよ。引っ立て」


 ぐったりと力の入らないイライザを力自慢の騎士が肩に担いで連れて行った。


 連れて行かれるイライザを母の第二王妃が血の涙を流し見送っている。他の王家の者も国王陛下の間違いを自分達も犯してはならないと心に誓いながら見送っていた。



 そして国王が愛した王家の華は幕を閉じたのだった。



 イライザが退場するとラティオーの隣にいたアウラはよろめき口にハンカチを当てながら冷たい汗をかいていた。

「アウラ大丈夫か?」

 慌ててアウラを抱き寄せ近くの椅子に案内しようとした。


「ラティオー様、外に・・・外に連れ出してくださいませ。臭いが・・・」

 すぐに鼻のいいアウラにはこの臭いが酷であったと気づいたラティオーはさっと抱き上げテラスに向かった。


「アウラ、無理ならあの場にいなくても良かったのに」

 心配のあまりつい口から出た言葉。


「いいえ、イライザ王女・・・イライザを追いやった一助をした私はあの場にいて最後まで立ち会わなければいけなかったです・・・ケジメなのですから」

 アウラの瞳には己のした行いのケジメをつける決心が受け取れた。


 ラティオーはまだ17歳のアウラに背負わせてしまった重い務めを後悔した。


「アウラ!」

(私がアウラにこんな事を簡単に頼んではいけなかった!すまない、アウラ)


 ラティオーはアウラを強く抱きしめた。

「もう、こんな事は頼まない!アウラには沢山迷惑をかけた、すまなかった」


 抱きしめられたアウラは嬉しそうに微笑んだ。しかし些か苦しいとラティオーの背中を軽くトントン叩いた。

「苦しいです、ラティオー様。ふふ、今聞き捨てならない事を仰いましたね。私達は夫婦になるのですよ。これからも何か有れば助け合うのでしょう?家族とはそういうものだと私は思いますが?」


 ラティオーの目が左右に小さく揺れる。

 泣きそうな顔で

「アウラの言う通りだ。家族とは助け合うもの。これからも、そうあろう。アウラが来てから私の心がいつも温かいよ」


 二人はオデコとオデコをコツンと合わせ小さく笑い合った。







最後まで読んでいただきありがとうございました。

とても嬉しいです。

さてイライザだけが罰をうけるのでしょうか?

明日は・・・

これからもよろしくお願いします。

楽しく読んでいただけるように頑張ります。


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そしてこれからの励みになりますので

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