◆ 国王の責任とイライザの断罪前
◆ 国王の責任
イライザは半狂乱で叫んだ!
「許さない!絶対に許さないわ!あなたは死罪よ!死罪以外はあり得ない!この王国の王女の私にした行いは到底許されないわ!近衛兵達よ!この女を捕らえ地下牢に連れていきなさい!」
(そうよ!地下牢で殺してやるわ!)
イライザの美しかった赤い瞳は見る影もなく、醜悪に歪んだ顔は王女の風貌を崩していった。
しかしイライザに命令された近衛兵達は誰ひとり動かなかった。それは警備にあたる王立騎士団も同じ事だった。
「何をしているのです!早く捕らえなさい!命令よ!」
近くにいた近衛兵達に向かって扇子を持った手が放たれバシバシっと音がする。しかし近衛兵達にはびくともしない。
イライザは益々怒りが身体中を駆け巡り近衛兵の剣を鞘から抜き取りアウラに向き合った。
「アウラ、全ては貴方が招いた不幸よ。私に逆らった事を後々も後悔して地獄に堕ちなさい」
アウラに向かって刃を向けようとしたその時、
「イライザよ。いい加減にしないか」
国王が突如現れた。隣には宰相のファーマを付き従えて。
「あっ、父王様・・・」
イライザはすぐさま剣を投げ捨て冷静さを取り戻し父王に擦り寄った。
先程の面影など微塵も感じさせない。
長い間父王を欺いた演技力だ。
「お前はなんと言うことを・・・貴族達に伯爵家如きと申したな・・・お前はその如きの貴族達から税を納められこの地位があるのだぞ。嘆かわしい・・・」
父王は顔色を無くし愛する娘の醜悪さに酷くショックを受けていた。
「父王様、違うのです。この女が私に要らぬ進言をしたのです!だから・・・」
イライザは話しながら目に涙を溜めていた。
「イライザよ。私は玉座の帷幕から全てを見ていたのだよ・・・アウラ嬢の言った言葉に万に一つも間違いがあろうはずもない。お前はいつから臣下の言葉に耳を傾けることが出来なくなったのだ?」
ここで王太子が今更ながらと寒々しく口を開く。
「国王陛下。イライザは幼き頃より人の話は聞きません。皆・・・手を差し伸べることを諦めてしまいました。国王陛下の過大なまでの甘やかしがイライザを傲慢で権力を笠に着た王女にした原因でございます」
国王陛下は今までと違う王太子の発言に心が冷えていった。
(王太子が私に刃向かうとは!)
国王の最大の汚点と言えばイライザだったのだ。寵愛する第二王妃の一粒種で可愛い可愛いと育て甘やかしていたとは思っていたが贅沢と高位の中で厳しさがなく育てば王家といえども品行方正に育つはずもない。
「父王様・・・違う・・・私は・・・」
イライザはまだ自分に有利だと思い違いをしていた。
(父王はいつでも私の味方よ!泣いて縋ればいつものように・・・)
父王は初めてイライザに全ての諦めを込めた目を向けた。
ここで初めて・・・やっと可愛い娘より国と自身の保身を取ったのだ。
宰相やこの王国の官僚達が調べ尽くしたイライザの所業は到底許されるものでは無かった。
己の目で見たイライザを今でも信じがたい・・・しかし
「イライザよ。き、貴様は・・・甚だしく・・・手を汚してしまった。数多の貴族令嬢達に罪を着せ目下の侍女達やその家族をいたぶった・・・余りに業が深い。貴様には王家の最後の罰を下す・・・」
イライザもここでやっと父王に見放される恐怖を味わっていた。
ガクガクと震える両手を胸の前で組んで
「父王様、イライザは改心いたします!どうかお許しくださいませ・・・」
幼気な顔で小首を傾げ父王の好きな小さな微笑みを向ける。
国王陛下は床に目を落とし力無く話す。
「貴様には・・・人の目に触れぬ腰に刻印を彫む・・・そして遥か南のドーバー王国の十六番目の妾となるが良い・・・」
しかしイライザは父王の言葉を遮った!
「いや!嫌です!ドーバー王は好色の変態ではありませんか!父王様、もうイライザと呼んではくれないのですか?」
「黙れ!貴様がこの地に戻る事は二度とあり得ぬ!
王家の処刑は禁じられている・・・
しかし・・・示しがつかぬわ。
今考えられる一番重い処罰を・・・
直ちにこの者に刻印を!」
それだけを言い切ると国王は素早く席を外す為に立ち上がった。
愛する可愛かったイライザの処罰が見ていられなかった!
すぐさま自分の部屋に向かうために玉座を立ったのだ!
――しかし
「国王陛下、逃げるのですか?」
国王の前に宰相ファーマが立ち塞がった。
「宰相・・・」
小さく呟く声だった。
しかし宰相ファーマは決してこの場から離れようとする国王を見逃すことは出来なかった。
「あのイライザの為に瀕死の者もおります。
尊厳を踏み躙られた者もおります。
輝かしい未来を奪われた者もおります。
取り返しのつかない程心と身体に傷を負った者もいるのです!
国王陛下!最後まで・・・いや違う、最後くらい父の責任として甘やかし増長したイライザの処罰を見るのです!
それが父であり国王である陛下の責任ではありませんか!」
父王である国王陛下は玉座に力無くストンと落ちた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
とても嬉しいです。たくさん読んでくださる方が
増えて涙が出そうです。
明日はイライザの痛いお仕置きが・・・
これからもよろしくお願いします。
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