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◆ そろそろ私の出番か


 イライザの報告が逐一届く宰相室でファーマとラティオーは重たい溜息を漏らしていた。


「宰相、イライザがこれ程に執念深い性格とは・・・私たち公爵家だけに留まらずアウラにまで手を出した事はきっちり責任を取っていただきます」


「そうだな・・・しかし問題は国王だな・・・」


 ついついアウラの事で油断したラティオーは

「そうですね、父上・・・」


「ここでは宰相と呼べ!ふん、そろそろ私の出番か・・・一体幾つの貴族の家門が没落することになるのか・・・」


 目の前では顔色を無くしガタガタと震えている二人の侯爵令嬢がいた。

 この二人はイライザ王女主催のお茶会で毒入りポットとカップを素早く隠した令嬢達だ。


 二人の侯爵令嬢を興味なさげに見ながらファーマとラティオーは既に取り終えた調書を他のイライザ関連の調査の束の上にポンッと投げた。


「さて令嬢達は貴族牢にでも入ってもらおうか」


「えっ?本当のことを話せば放免されるのでは?」


 宰相ファーマは年端もいかぬ令嬢達に憐憫の顔を向け

「死んでも構わないのなら放免しよう」


 長く続いた緊張で取り繕うことも出来なくなった令嬢が

「どう言うことでしょう?お約束は守ってくださいませ!」


 ラティオーは溜め息混じりで切り出した。


「侯爵家のご令嬢方、貴方達はイライザ王女の証拠を隠した実行犯です。このままイライザ王女が生かしておくとでも?カミュー嬢の二の舞では?」


「!!」

 充分に思い当たるのか二人の令嬢は顔色を無くし口を噤んでしまった。


「残念だが君達がどんな証言をしようとも私の部下が全て見ていたのだよ。君達を連れて来たのはひとえに命を守るため」

 宰相の言葉を引き継ぐラティオー。

「イライザ王女は君達と一緒に取り巻きに入れている伯爵家の令嬢を介して大量の毒を入手したのだよ。それが君達の口に入らないとでも?」


「わ、私達はどうすれば良かったのですか?王女の命に逆らうことなど出来ませんでした!」

 それだけ話すと二人は泣き出してしまった。

 しかし一歩間違えれば人殺しになったであろう証拠隠しは軽い罪にはなるまい。

 既に意識を取り戻し先に収容されているカミューの両隣の貴族牢はこの侯爵家令嬢が埋める事になった。




 イライザ王女の部屋では誰一人共にいる者がいなかった。

 侍女達も今はこの部屋には居ない。イライザが追い払ったから。


 イライザは豪華なソファーで両脚を抱えるようにして丸まって座っていた。

 美しかった爪は歯の跡が目立ち始めていた。 


(ああ、どうしたらアウラを殺せるの?

殺す!

殺す!

絶対殺すわ!

もう!

私の周りには出来損ないばかりで何の役にも立たない!

どうして毒の事が分かったのかしら?

暗殺者を伯爵家のバカ令嬢に雇わせアウラを殺す?

・・・ああもっと早くて確実な方法は!?)



 ブツブツと呟くイライザがいきなり勢いよくソファーに立ち上がった!名案が浮かんだと、顔は綻んでいるがその目は深い暗闇に真っ赤な炎を揺らしている。


(そうよね!こんな時に隠し玉を使わなくていつ使うのよ!あいつを使う時が来たようね!)


 それから二日後の真夜中に全てを黒に覆った馬車が公爵家に近づいた。


 公爵家の裏門から黒尽くめのマントを着た者が馬車に近づき扉を開けて入った。


「良く来たわね。合図の木にくくり付けたリボンは後で外しておきなさい。ホホホホ、貴方の忠義は宝だわ。それで今日は貴方に大切な指示を授けましょう」


 そう言って馬車の中にいたイライザ王女は長細く薄い箱を手渡した。


「良い事?これには毒が既に塗ってありますの。かすり傷でもアウラにつければ良いわ。用件は伝えたわよ。貴方の忠義を見せてもらうわ。さ、行きなさい」


 話が終わると馬車から追い出すように外に出した。

 そして馬車は静かに走り出した。

 あっという間に馬車は消えて行く。


 黒いマントの者は馬車に目をやって暫くその場に留まっていた。

 震える手で長い箱を握りしめ中々その場から動こうとしない。



「メリサ。その箱をこちらに渡してもらおうか」


 覚悟を決めたメリサの顔をファーマは目を逸らすこともなく見ていた。


「君がイライザ王女の侍女をしていた事でいつも監視していたのだよ。王家から直接賜った侍女を返すわけにもいかなかったからね」


「そう・・・ですか」


「しかし君は本当に我が公爵家に心を尽くしてくれた。イライザ王女とメリサの関係を調べていたが元侍女であった事しか見つけることが出来なかった。メリサ・・・何を隠している?」


「旦那様・・・私は・・・」 

 メリサは急いで箱を開け自分の肌に毒の塗られた剣を当てようとした。 

 メリサの後ろにいたラティオーは素早く剣を蹴り落とした。


「あっ!わ、私を・・・私を死なせてくださいませ!お情けを!」

 ファーマは威厳を発し声を上げた。


「メリサ!お前が死んで悲しまない人間は、この公爵家にはいない!私達を、この公爵家を信じるのだ!」

 ハッとして泣き腫らした目をファーマに向けるメリサは崩れる顔を覆い叫んだ!


「私はこの公爵家が大好きでございます。この公爵家で私の誇りは回復されたのです。・・・昔、イライザ王女様にお仕えしていた時・・・イライザ王女様の宝珠のイヤリングが壊されていたのです。もちろん私が犯人ではございませんでしたが・・・イライザ王女様は・・・」


 ラティオーがメリサの言葉を助ける。

「メリサのせいにでもされたのか?」


 メリサは一つ頷き

「イライザ王女様より激しい折檻を受けました。いつもの事だったので耐えるしかありませんでした。しかし私が強情だったが為に・・・私が早くに折れていたら良かった・・・業を煮やしたイライザ王女様が弟を・・・弟を!」

 話しながらメリサはボロボロと涙を溢して崩れ落ちていった。


「弟はどうしたのだ?」


  メリサは公爵を見上げながら震えて答えた。

「弟は・・・弟のハロルドはイライザ王女様の専用監獄に囚われております・・・それが何処に在るのか分かりません・・・ハロルドは私の働きで命を繋いでいるのです・・・」


「父上、イライザ王女に専用の監獄などありましたか?」


「王家に隠し事は付き物だが・・・イライザ王女には、そろそろ腹を括ってもらわねばなるまいな。いや違うな・・・国王陛下こそ、ご覚悟を決める時であろう・・・」



 そんな事を口に出すファーマであったが、本来はあってはならない自分の出番・・・


一番覚悟を決めるのは自分だと思うのであった。







最後まで読んでいただきありがとうございました。

とても嬉しいです。明日はアウラの新たな能力が!


楽しく読んでいただけるように頑張ります。


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そしてこれからの励みになりますので

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