◆ イライザ主催の『策略のお茶会』
ヴィクトル公爵家のアウラ宛に王家を介してイライザ王女からお茶会の招待状が届いた。
ヴィクトル公爵夫人には招待状は無くアウラだけが招かれた。
母グロリエは余裕に
「まあ、あからさまね。随分と幼稚なことを・・・そうね、同日の同じ時間にテラ王太子妃にお茶会を開く様にお願いしようかしら。ふふふ」
招待状に目線を落としながら頭の中で色々な策を立てているアウラを安心させようとする母に暖かく心が包まれる。
「お母さま・・・ありがとうございます」
「ふふふ、当たり前のことだわ。アウラ」
そう言いながらグロリエは膝に置くアウラの手を握る。
こんなに心強い事はないとアウラは当日の疑念を一つ母に話した。
母はアウラの話を聞いて思い当たる事だと顔を曇らせた。
イライザ主催のお茶会はあっという間に訪れた。
イライザの部屋では取り巻きの令嬢に囲まれながら子爵家のカミューに甘い声で囁く王女がいた。
「私の大切なお友達、カミュー。貴方は今日、アレを持ってきたかしら」
「ハイ。イライザ王女様、私の胸元にアレを隠してございます」
「そう。良い子だわ。カミュー少し趣向を変えようと思うの。私の親愛なるカミュー、そのアレを貴方のカップにも入れなさい。そしてアウラと共に飲みなさい」
「えっ?それでは私も眠ってしまいますが・・・」
イライザは蠱惑な微笑みをカミューに向け事の成り行きを説明する
「ホホホ。安心なさい。貴方は私の手伝いで忙しかったのよね?当日に貧血でめまいがしたのよね?ここの友達が貴方をすぐに介抱してこの部屋に連れて来てくれるわ」
イライザ王女様の話を聞いてホッとしたカミューは
「かしこまりました。それでは皆さま、必ず私を介抱してくださいませ」
イライザ王女様に直接御用を賜ったカミューは取り巻きの令嬢達に対して高飛車な態度で接していた。
周りの令嬢は顔色一つ変えず笑っていない目で小さく頷いていた。
約束の時間より早く到着したアウラを見て周りの令嬢達は心底驚いていた。
公爵夫人自らが選びに選んだドレスはアウラの超絶な美しさと確たる品位を見事に現していた。
ドレスや調度品に負けず引き立て合うアウラの佇まいには誰もが知らぬうちに近寄りがたいものになっていた。
アウラは茶会の会場を歩いて下見をしていた。母のグロリエからある程度の様子を聞いていたので確認作業をしていたのだ。
これから開かれるお茶会の庭園から母達が開く茶会までの距離と道を頭に叩き込む。
(あの場所がイライザ王女様の部屋・・・。一階の一番端の部屋で陽当りの良い場所だわ。
よし、下準備は良いわね。後はアンナが来てからだわ)
小さな楽団の奏でる曲がイライザ王女主催のお茶会が開かれる合図だ。
美しい庭園に赤い絨毯が敷き詰められ白く美しいレースのテーブルクロスには王城の花々と美味しそうな茶菓子が並んでいた。
テーブルの上にある席次に従いアウラは椅子に近づいた。
アウラの隣にはカミューが早々に席に着いていた。座ったままで
「私、バース子爵家次女のカミューでございますわ。お席をご一緒させていただきますね」
ギラつく目で冷笑を湛えながら目下の者が先に挨拶をした。
自分はイライザ王女様と親交があるのだから、たかだか伯爵家と下に見ている事がありありと分かる態度だった。
アウラは気にも止めず
「そうですか。主催されるイライザ王女様より先に席に着いて良いのですか?カミュー様」
カミューは周りを見て誰一人席に着いていない事に顔を赤くしてプイとアウラから顔を背け急いで席を立った。
軽やかな曲から華やかな曲に変わりいよいよイライザ王女様が現れると各令嬢達のそばに給仕が現れ一斉に椅子をひき令嬢達が座る補助をした。
イライザ王女は先に招待した令嬢たちを座らせ主賓挨拶をするために一段高い自分の席に立った。
「皆さま、今日は私の呼びかけに快く賛同しこの席を共に過ごせることを心より嬉しく思っておりますわ。
どうか上下の垣根無く楽しく寛いでくださいませ」
挨拶を終えても席に着こうともしないイライザは一通りグルっと見渡しアウラを見つける。
アウラから目線を外さず一層厳しく睨みつけた。
アウラの何も恐れない凪の目線にイライザは心底怒りに震えていた。
(ふん、貴方の最後を楽しませてもらうわ)
「私、家でもお茶を淹れる事を嗜んでおりますの。アウラ様のお茶も私が淹れますわ」
目の前のポットから香り高すぎるお茶を静かにカミューが淹れた。
「さあどうぞ。アウラ様召し上がってくださいませ」
明らかにカミューの声がうわずっている。
その淹れられたお茶を静かにアウラは見ていた。
(やっぱりこう来てしまったのね)
「私もいただきますわね」
カミューは自分の淹れたお茶のカップを手に取った。
「えっ?」
アウラが酷く驚く顔に先程のかかされた恥に溜飲が下がるカミューは戸惑うこともなく口に含んだ。
「駄目よ!誰か!!」
アウラは咄嗟にカミューのカップを払い落とし大声を上げアンナを探した!
「ゴッボッ!!」
暫くするとカミューは目を見開き口から血を噴き出した!
「えっ?なんで?」
カミューは咄嗟にイライザを見た。
イライザ王女は特段驚きも無く無表情で扇子で顔を隠していた。
「アウラ様、箱をお持ちしました!こちらです!」
急いで走って来たアンナはアウラの前で小さな木箱を開けた。
「アンナ、この毒の香りはテロドキ草だわ。右から二番目の解毒剤を早く!」
アンナは急いでカミューの口に解毒剤を当てたが苦しむ口端から溢れてゆく。
残り少ない解毒剤にアウラは咄嗟にアンナから奪い取り自分の口に含んだ。
そして鼻を塞ぎ無理やりカミューに口づけ覆った。
ゴクッと音をたてなんとかカミューは解毒剤を飲み込んだ。
血と一緒に大きな咳でむせながらも・・・なんとかカミューは一命を取り留めた。
この騒ぎのどさくさに紛れイライザの取り巻きは証拠のポットとカップを隠してしまった。
そして事の顛末を忌々しげに見ていたイライザは赤い絨毯の上でカミューを抱くアウラを威嚇した。
「これはどういうことかしら?」
見下ろす目線で忌々しくアウラに蔑みの言葉をかける。
口元を血で汚しながらも凛としたアウラは物申す。
「ふふ。イライザ王女様が・・・一番ご存じなのでは?」
その一言がイライザを余計に苛立たせた。
「何を生意気な!」
アウラ目掛けて右手を高くあげ扇子を打ち付けようとした。
「お辞めなさいませ。イライザ様」
気がつくと王太子妃テラと公爵夫人そして騒ぎを聞きつけた宰相ファーマと補佐のラティオーがイライザを囲んでいた。
「クッ!」
イライザはとりあえず騒ぎをカミューに擦りつけるために
「子爵令嬢、貴方はこの騒ぎの責を負うため、この王城の出入りを禁止します。皆さま行きますわよ」
取り巻き達を引き連れこの茶会は幕を閉じた。
「アウラ、大丈夫なのか?」
無事にカミューを王城の医術師に引き渡してホッとしたアウラは心配を隠しもしないラティオーに笑顔で答えた。
「ふふ、大丈夫ですよ。無事にカミュー様も一命を取り留めました。解毒剤をお母さまに用意していただけたので本当に良かったですわ」
心から安堵し喜んでいたアウラだったが自分の惨状を思い出し母グロリエが選んだドレスを血で汚してしまった事にひどく落ち込んでしまった。
だがさすがは公爵家。母のグロリエは全く気にもせずアウラの功績を褒め称えていた。
そんな中、乾き始めた血で汚れたアウラの口元をラティオーは痛ましそうに拭いていた。
(母上から聞いていたがアウラは毒の事まで知り尽くしている。一体、どんな過去が・・・)
そして拭きながらふと思う。
アウラのファーストキスは私では無いのか・・・?
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