◆ 公爵家は果たして変人なのか?
アウラは連れてきた家族達と〈敵対するイライザ王女の計画〉を練っていた。
しかし話が少し逸れる。
「あのね、皆。実は私、気になっている事があるのだけど」
執事長のエンドは心得ている様で
「公爵家の変人疑惑でございますか?」
流石はエンド。アウラは安心して懸案を口に出す。
「そうなの。私たちを迎えてくれた公爵家の皆様は一体、どこに変人の要素があるのか分からないの」
気まずそうにニヤが話す。
「私は分かるような気がします」
「えっ?そうなの?」
続けてミーナとコック長パーニスとエンドも気まずそうに頷く。
「アウラ様、近いうちに分かる事と思います・・・」
(公爵家の中で働くようになり気づいたことなのだろうか?)
この微妙な間にアウラはそれ以上問い詰めることを辞めたのだった。
本当にそれから数日後の午後であった。
「さて、そろそろ今期雇った新たな使用人たちを改めるとするか。セバスチャン〈今期雇った使用人〉をエントランスに集めてくれ」
セバスチャンは慣れたもので新たに雇い入れた20人全てを集めた。
公爵の手元の資料には部屋付きメイドや庭師にコック、下働きの者まで20人の新人の詳細が事細かく記されていた。
不安そうな顔の者からただ呼ばれたからという事で集まった者まで暫く公爵が何を話すのかとエントランスに佇み待っている。
さて、ここからがこの公爵家の真骨頂だ。
ファーマが階段踊り場から資料片手に声を発した。
「君たちは新人ながら良く働いてくれている。しかし今期も残念ながらネズミが16匹も紛れていた。今から言う名前以外は出て行ってもらおうか。アリス、ハンナ、トム、ロア。君たちだけこれからも雇おう」
他の使用人たちは・・・ある者は諦念しある者は吠えた。
「なぜ!辞めなきゃならないんです!?一生懸命働いていました!」
公爵は手元の資料にサッと目を通し
「ほう。庭師の者か、お前は侯爵家のネズミだな」
「!」
ファーマは余裕綽綽の面持ちで尋問は得意中の得意らしい。
この茶番を公爵家の家族とアウラや他の使用人たちも見ていた。
アウラは突如始まった茶番に内心驚いていたが的確な炙り出しの手腕に心から拍手を贈っていた。
(素晴らしい手腕だわ。でもこのやり方だと・・・変人・・・そう言う事だったのね)
アウラは瞬く間に頭の中で納得した。
毎年の恒例らしい。
「今年はイライザ王女が送ってきたネズミが10匹もおる」
クビを命じられたメイドたちは一斉に頭を下げた。
「父上、後の5人は隣国のスパイですね。その者は捕らえましょう。捕らえよ!」
実は扉の外で待機していた王都騎士団が息を潜めていたのだ。
あっという間に部屋は静かになった。
「さて残った4人は一気に減った者たちの仕事分が増えるだろう。今のうちなら辞めても構わないよ?」
しかし4人は誰も動かず屋敷に残る意志を示す。
こうして本当の忠誠を誓う大切な人材を集めるのが公爵家のやり方なのだ。
でも残念ながらこのやり方は辞めた者の不服を買うのだ。
少しでも公爵家の隙を探ろうとスパイを送り込んだ貴族家門や隣国の者は弱みを握られ息をひそめ己に火の粉が掛からぬ様に生きていくことになる。
しかし腹いせにこっそり噂を流す。
人の噂の恐ろしや・・・公爵家の噂は尾ひれがつきまくり・・・いつか変人の集まりと噂される様になったのだ。
まあそれを気にする公爵家では無いのだが。
だが、しかし良心的な貴族からは
≪いくら爵位が高くても大事な娘を変人の処へは嫁がせたくない≫
打算的な貴族は端から相手には出来ない。
唯一、嫁取りの支障となる事だけが、オマケにイライザの盛大な邪魔もありつつの公爵家が抱える困り事だった・・・そのはずだった・・・。
しかしなんの巡り合わせか・・・
正義を貫いたからか・・・
アウラという宝を見つけることが出来たのだから。
運命とは分からないものなのだ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
とても嬉しいです。
明日も続けて2話投稿です。
執事長とメイド長です。大切なアウラの家族なので
本編の閑話としてあと少しお付き合いください。
よろしくお願いします。
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