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◆ 一目おかれるアウラ



 ワインの利き当ては舞踏会初日の大きな話題をさらった。

 そして同時にヴィクトール公爵家嫡男の婚約者でありながら王女イライザの宿敵であるという新たな認識が加わり忙しい肩書きがつくアウラだった。


 アウラは昨日に引き続きラティオーの腕に手を回し会場中を練り歩き婚約者紹介の挨拶をしながら他の貴族たちと交友していった。


 貴族たちにはアウラの聡明さは一目瞭然のようで変人揃いのヴィクトール公爵家が渇望する令嬢だと認識を一致させた。

 しかし年頃の息子を持つ親世代の貴族たちは内心思うのだった。

(あれほどの令嬢がいたとは!なぜ一度も名が挙がらなかったのだ!うちに欲しかった!)と。


 イライザは憎しみのこもった眼差しを向け、ラティオーに憧れを抱く数多の令嬢からは羨望の眼差しや恨みのこもった視線を受けつつアウラは泰然としていた。

(ん?イライザ様以外にもラティオー様はおモテになるのね。ならば、ここで少しガス抜きが必要かしら?)


「ラティオー様、一通り挨拶も済ませましたのでお花を摘んでまいりますが宜しいでしょうか?」


 ラティオーはアウラの腕をそっと外してあげる。

「ああ、気をつけて行っておいで」


 私はラティオー様から離れわざと少し遠い場所でお花摘みをすることにした。そして用を済ませ部屋を出てすぐ五人の令嬢たちに囲まれた。

 一緒のミーナも落ち着いて様子を見ている。私はミーナに目配せをして口出し無用の合図を送る。


 早速一人目の令嬢が口火を切った。

「貴方、アルブス伯爵家ですって?聞いたところによると、お父様は貴族牢に入っている身らしいじゃない?そんな罪人の娘がラティオー様に取り入るなんて浅ましいにも程があるわ!公爵家は変人揃いだから私たちの親が許してくださらなかっただけで、だからって!貴方が拐って良い相手ではないのよ!」


「そうよ!今すぐに身をお引きなさいませ!私たちのラティオー様なのですわ!」


「あなたなんて今まで聞いたこともないわ!少し前まで卑しい身分だったのだわ!きっと!

本当に図々しいし生意気な!」


「あなたなんかにラティオー様はふさわしくないわ!昨日の事でいい気にならないで欲しいわね!」


 アウラは最後まで何も話さず様子を見ている5人目の令嬢に違和感を抱いていた。

(ん?五人の令嬢なのに一人は何も喋らないわね?)

 私は四人の令嬢が怒鳴るのを気が済むまで聞いてあげた。


 普段大声をあげることが無いのだろう。4人は最初の威勢が嘘のように鳴りを潜めた。

「ゼーゼー」

 4人の令嬢達は肩で息をしていた。

(大分ガスが抜けたかしら?それにしても・・・)


 アウラはそろそろ席に戻ることを考えた。

「あのう、もうよろしいですか?そろそろ帰らないとラティオー様が心配するので」

 にっこり笑ってその場を離れようとした時、ずっと黙って様子を見ていた令嬢が口を開く。


 突然お腹を抱えて大声で笑いだした。

「あははは。貴方、想像の上いく肝の座った方なのね。この令嬢たち百人が束になっても敵わないでしょう。面白そうだから付いて来たのだけど・・・なんなら(かば)うつもりだったけれど必要が無かった、豪胆だわ」


 それを聞いたアウラの顔に笑みが零れた。

「あら?私とは気が合いそうな予感がしますね。もしかして、こちらのご令嬢達とはお友達でしょうか?」


 いたずらな笑みを零しテンポよく返事が返ってくる。

「まさか。会話の中にアウラ様に一言申すとかなんとか・・・気になって付いて来てしまいました」


 それを聞いた四人の令嬢はギョッとしている。

 アウラは心の中でラティオーに出会ったときの感覚を思い出していた。

(この方の心根はラティオー様に似ていますね)


 アウラは自分から優雅にカーテシーをして挨拶をした。目の前の相手に敬意を表して。

「私はアルブス伯爵家次女アウラでございます。以後よろしくお願いいたします」


 するとアウラに負けず劣らずの美しい所作でカーテシーを返す

「昨日はありがとうございました。私はピノ・ノワール男爵家長女シュペと申します。こちらこそよろしくお願いいたします」



「ちょっと!な、な、な、なんなの?私たちの話はまだ・・・っ!」


 アウラは目に威厳を漂わせ

「まだ、何か?」


「「「ひぃー――」」」

 令嬢達はひるんだ。


 するとシュペ嬢も

「貴方達、公爵家に気に入られた令嬢にまだ何か物申すのですか?先程から話を聞いてくれていた温情を少し考えてみては?ふっ・・・」

 最後に黒い笑みを落とした。


 アウラとシュペはもう周りの令嬢達には目も合わせなかった。ガス抜きが効いたのか呆気に取られている隙にその場を離れた。



「シュペ様のお名前は昨日のワインの葡萄品種の名前ですね」

 

 穏やかに談笑していたシュペが驚く。

「確かに昨日のワインの葡萄品種ですがなぜ分かったのですか?」

「ふふふ。私の尊敬する()()の執事長がワインコレクターだったのである程度の品種の味を覚えることが出来ました」


 シュペは考える。ワイン醸造家の者でもこれほど卓越した舌を持つ者が何人いるのかと。


「やりますね。アウラ様、爵位の低い者からの提案で恐縮ですが、どうかこれからも仲良くしていただけると嬉しいです。それにしても・・・()()の執事長ですか?」 


 アウラはシュペの頭の切り替えの良さに心地良さそうに答えを返す。

(公爵家の皆様と私の家族以外でこれほど会話の息が合うなんて・・・)


「ふふ、そうですね。まずはシュペ様。そのうちに私の話が出回るでしょう。中には根も葉もない噂話もあるかと思います。私もシュペ様と仲良くしたいので、これからも真実ばかりを話すと誓いましょう。本当の家族の縁が薄い私には執事長、メイド長、コック長、メイドのミーナを含めた四人の()()がいるのです。これからは公爵家の皆さまも大切な家族になるでしょう。その中でシュペ様、私の大切な一番目のお友達になってくださいませ」


 誠実な答えをもらったシュペは感動した。決して裏切らないと心に誓い気持ちを素直に言葉に乗せる。


「喜んで最初の友になりましょう。私も・・・シュペ・ノワールもアウラ様には真実しか口にしませんわ」


 二人は互いの手を合わせ微笑みあった。





最後まで読んでいただきありがとうございました。

とても嬉しいです。


これからもよろしくお願いします。

楽しく読んでいただけるように頑張ります。


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― 新着の感想 ―
[一言] シュペはとても頭が回る賢い娘ですね。 これは出世しそうだ…! 仕事できる気配。
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