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プロローグ『BAD END』



「ズバリ、犯人はこの中にいるッ!」


そんなセリフを聞いた俺は、「またいつもの中二病か」と反射的に感じてしまう。


ただ、いつもと異なる点が2つある。


1つ目の異なる点は、周囲の反応だ。


このセリフを初めて聞いた大半の人間は、茶化すか呆れた反応を見せる。


だが、今この場に集まっている者達は彼女のこのセリフを至って真面目に聞いている。


そう。


誰も彼女の推理が妄想だと言うことに気がついていないのである。


そんな状況をお構いなしに、彼女は自分の妄想を語り続ける。


「…でしょう?であれば、外部の者の犯行とは考えづらい。つまり、犯人が居るとすれば今現在ここに居る可能性が1番高い」


そんな彼女の妄想推理を聞き、周囲がザワつく。


「貴様、まさか王族の中に犯人が居るとでも言いたいのか!」


大層な髭を伸ばした大臣のような男が怒鳴りつける。


「いえいえ、まだ推理は終わってませんよ?」


彼女はそう言いながら、頭にかぶっている茶色いチェック柄のキャスケットをかぶり直す。


そして、左手を顎に当てて思案するような仕草を見せ、「なるほど」と小声で言った後、「犯人が分かりました」と嘯く。


そんな彼女の言葉を聞くと、高級そうな椅子に座っている偉そうにしている者達はだけでなく、周囲の鎧を身に纏っている兵士のような者達もザワつき始める。


そう。


2つ目の異なる点は、ここがいつもの高校の教室ではなく、ヨーロッパの宮殿のような建物の中であること。


そして、ここに居る者達が世界史の教科書の中に出てくるような格好をしていることだ。


正確に言えば異なる点は3つだったが、最早気にしている時間はない。


何故なら、俺はこの後の展開を知っているからだ。


「つまり、犯人はここにブツがあることを知りつつ、正式な使い方を知らなかった人物。それは…」


言葉を止めた彼女を周囲が見守るなか、俺は冷や汗が止まらなかった。


「ワトソン君、あなただ!」


そう言った彼女は、いつものように満面のドヤ顔で俺に向かって指を突き立ててきた。


彼女1人が満足気な顔をしているが、周りで目が笑っている者は1人も居ない。


みんな、彼女の妄想を鵜呑みにしてしまっているのだ。


「そ、その男を捕らえよ!」


大臣らしき髭男が言うと、鎧を着た兵士達がじわじわと近寄ってくる。


「どうして…」


俺は自分にしか聞こえないような声で呟く。


俺には特別な力もなければ、彼女のように嘯くこともできない。


多分このまま犯人として捕まってしまうのだろう。


国宝を壊した犯人なのだから当然重罪なのだろう。


そう考えている間にも、鎧を着た兵士達はゆっくりと迫ってくる。


だからせめて、捕まってしまう前に、これだけは叫ばずに居られなかった。


「どうしてこうなったあぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」


俺の悲痛な叫びが、宮殿内に響いた。






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