隣の芝生は青く見えるものですよ
主に書き手さまに向けて書いたエッセイです。
何かを感じてもらえれば嬉しいのです。
『隣の芝生は青く見える』
ということわざを知らない人はあまりいないと思います。
一応説明しておくと、本当は大した差がなくても他人の物がより良く見えてしまうということです。
実はこのことわざは、海外由来で、
英語では “The grass is always greener on the other side of the fence.”
これを日本語に翻訳したものなんです。
これ、芝生のある大きな公園に行ったことある人であれば実感できると思うんですけど、
「あ、あっちの方が芝生が綺麗だよ!!」
で、実際に行ってみると大して違いが無かったりするんですよね。
芝生を真上から見ると隙間や枯れている箇所、雑草などが目に付きますけど、遠目で横から見ると、角度の関係でそういった粗が見えないから起こる現象なのです。
じゃあ、これだけ有名な『隣の芝生は青く見える』の対義語を知っている人はいるでしょうか?
いくつか答えを書くと、
『我が仏尊し』『隣の白飯より内の粟飯』『人の物より自分の物』などがあります。
意味は自分で調べてくださーい。
間違いなく知名度はグッと下がると思います。実生活の中で使っている人や文章を読んだこともほとんどないですからね。
つまり、多くの人は『隣の芝生は青く見える』方に共感と実感を持っているわけです。
なんでこんな話をするのかって?
それは、我々書き手にとってこの厄介な感情は避けて通れないからです。
ただでさえ人間は隣の芝生は青く見えがちなのに、小説投稿サイトには、ポイントやブックマーク、PVやランキング、感想や、コメント、レビュー、etc
青く見える要素がごまんとあります。
読者の方には想像もつかないかもしれませんが、書き手になるということは、この厄介な感情と多かれ少なかれ付き合っていかなければならないのです。
私に関していえば、それはもう大変です。上下の振り幅が大きいので、毎日ジェットコースターに乗っているようなものです。
読んでもらえた、ブクマが増えた、素敵な感想がもらえた、ポイントが増えた、レビューをいただいた、イラストをいただいたなどなど、すぐにテンションマックスです。
幸い私の場合、読んでもらえない、評価が付かないということはあまりないので、その点では恵まれているのですが、それでも青い芝生現象からは逃れられません。
面白い作品を読むと自分の才能の無さに打ちのめされます。
毎日ガンガン投稿されている書き手さまを見るたびに、ああ……なんてすごいんだろう。それなのに私は……と落ち込みます。
自分が書きたかったものと同じテーマの作品を読むと、ああ、書かなくてよかった。こんな素晴らしい作品と比べられてしまったら、死ぬほど恥ずかしい。っていうか、私いらないよね? よし、もう書くのはやめよう。なんて落ち込みます。
気の利いたコメントや感想を書く方をみると、ああ、やはり本物の才能を持つ人は、コメントからして違う。もう活動するのやめよう。と本気でへこみます。
とまあ、ネガティブなことを書きましたけれど、これね、気持ちが上昇トレンドの時は、全く同じ場面に遭遇しても、受け取り方が全く違うんですよ。
面白い作品を読むと、うわあ……無料で良いの? こんなに素晴らしい作品ありがとうございます!!よし私も面白い作品書くぞ!!
毎日ガンガン投稿されている書き手さまを見るたびに、ああ……なんてすごいんだろう。今日も元気そうで良かった。よし、私も頑張るぞ!! 千里の道も一歩から!!
自分が書きたかったものと同じテーマの作品を読むと、ああ、これは運命かもしれない。同じ価値観、感性を持った人と巡り合えるなんて。生きててよかった。うん、この書き手さまと仲良くなりたい!!
気の利いたコメントや感想を書く方をみると、へえ、そういう表現方法もあるんだ!! やった、引き出しが増えた!! ふふふ、どこかで使ってやろう。とほくそ笑みます。
と、こんな感じなのです。
だからね、何が言いたいかというと、自分の上昇トレンドと下降トレンドを意識すると良いですよって話です。
上昇トレンドの時は、何を見ても聞いても、大体前向きに受け止められます。刺激をパワーに変えることが出来るのです。
でも、下降トレンドの時は、何を見ても聞いても、ネガティブにしか受け止められません。刺激はすべて自分を抉るナイフになります。
太陽が昇り日が沈むように、人間の心も上がったり下がったりを繰り返しています。
それはとても自然なことで、それによって力が生み出されているのです。
良く言いますよね? 深くしゃがみ込んだ方が高く飛べるって。筋肉やバネだって、収縮するからこそ、力を出せるのです。
だから落ち込むのもへこむのも大事なことです。逆らおうとするとかえって大怪我をします。
良いことが重なれば嬉しくなりますし、幸せを感じますけれど、上限に到達すれば、あとは落ちるしかないのです。いつもより落差がある分、それはとても辛いものになるでしょう。
大切なことは、逆らわないこと。上限があるように、下限だってあるのです。下がり切れば、あとは上昇するしかないのです。
だからね、下降トレンドが来ることをしっかり意識出来れば、怖くない。とことん落ちましょう。フリーフォールなのです。
私は毎日ジェットコースターに乗っています。いいえ、もしかしたらフリーフォールかもしれません。
揺らぎのない人間になりたい? 周りに左右されない強い人間になりたい?
無理無理、人間は揺らぐものですし、周りに左右される存在です。良い悪いとかの次元の話ではなく、そういうものです。
元気になりたい? 早く立ち直りたい?
だったら、一刻も早く底まで落ちましょう。抗おうとすればするほど、時間がかかりますし、傷が増えます。
思い切り落ち込んで、へこんで、死にたいと思って、消えてしまいたいと願い、自己嫌悪して、嫉妬するのですよ。
慣れてくると、底打ちする瞬間が分かるようになります。
この感覚は、くせになりますよ?
いろんな事がありますけれど……それでも人間は、しなやかに生きるのです。