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興味を持ってくださりありがとうございます。
この小説は、チョコミント青梗菜・ザベスのソロアルバム「宇宙ビィーム」と連動した作品となっております。
「宇宙ビィーム」を聴いていただけるとより楽しめる作品になっておりますので、是非お聴きください。(詳細はあとがきにて)
「久しぶり、元気だった?」
真っ白で丸っこいフォルムの車から降りてきたのは、エスパーの彼だった。
優しい笑顔でこちらに手を振っている。
パリッとアイロンの当たったシャツに、グレーの綺麗なスーツを身にまとって、すっかり大人の雰囲気だった。
顔色もすごくいい。
そんな彼をめがけて私は駆け出した。
人目もはばからず、思いっきり抱きついた。
「えっちょっと!みんな見てるよ・・・!」
照れくさそうにあたふたする彼は、相変わらずのシャイボーイだ。
私は周りの目よりも、久しぶりに会えたことの嬉しさの方が上回っているので、無敵なのだ。
「会いたかったよ!」
涙をこらえて満面の笑みでそう言うと、彼も頬を赤らめてにっこりと笑った。
高揚感で私たちだけ宙に浮いているように思えた。
・・・よくよく見ると、本当に少しだけ地面から足が離れていて驚いた。
彼の方を見ると、「ごめん、嬉しくって少し力が漏れちゃったよ・・・」と申し訳なさそうに頭を搔いていたので、「最高だね!」と笑った。
私たちは大衆居酒屋へ足を運んだ。
「久しぶりに会ったのに、ホテルのレストランとかじゃなくていいの?」
彼は不安そうに何度も聞くので、「どこで食べるかより、誰と食べるかが重要なんだよ!」とほっぺをつねっておいた。
彼は、あれからとても大変だったらしい。
感情のコントロールが力のコントロールに繋がるらしいとわかり、家を離れる決意をした。
はじめは力仕事をよくしていたそうで、昔に比べて随分と体格が良くなっていた。
「君がね、指切りをしてくれたから、いつも頑張れたんだ」
そういって優しく微笑むから、私は少し泣きそうになった。
ビールといくつかの料理が運ばれてくる。
「あん肝と砂ぎも?なんか渋すぎない?」
そう言って彼は笑った。
「私とずっと美味しいものを食べて生きていく人生とか、どう?」
私はビールグラスを持ち上げながら、そう聞いてみる。
「それはいいね!最高だよ」
そう言って彼もビールグラスを掲げる。
「「乾杯!」」
――ガチャンッ
グラス同士がぶつかる鈍い音がした。
――終――
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
この物語はこれでおしまいです。
これからも物語の登場人物たちが、この世界のどこかで生き続けますように。
ザベスのソロアルバム「宇宙ビィーム」に関する情報はこちらからご覧いただけます。
https://choco-bok.jkjm.jp/zabeth/