武器マニアの出張所 ~馬よ運べ! その伝説を~
黒森 冬炎 氏 「移動企画」参加作品
企画参加させていただきます。
ピーターと申します、以後お見知りおき下さいませ。
本店の武器マニアでは語られない、武器やそれを扱う人の移動に欠かせない馬達の姿の一片をご覧くださいませ。
※アンサーストーリー、引用、参照など、この作品はご自由に扱って下さいませ。
リアルでも、ファンタジーでも関係なく武器が好きなピーターです。
今回は出張所ということで武器そのものでなくとも、外す事ができない「運搬」を考えてみたいと思います。
最近のファンタジー作品ではいくらでも物が入って、重くもならない「アイテム袋」みたいな最高なチートアイテムがあったりします。また、距離と言う概念を崩壊させるゲートや扉も自由に出し入れしたりしてますね。
アイテム袋や、空間歪曲、何人でも浮かせる飛行魔法、ワープとかタイムトラベルとか、すっごいのが沢山ありますよね。
もちろん、ファンタジック生き物の背中にまたがることだってあります。
竜の背に乗せてもらうようなシーンは王道でありながらもロマンあふれる滅茶苦茶カッコいいシーンになったりします。
ダチョウを大きくしたようなパワフルな鳥、海を泳ぐ巨大なクジラや魚達などなど、どれも乗ってみたいと思いますね。
まぁ、現実にいたとしたらダチョウより巨大な鳥には踏みつぶされ、クジラや魚達には酸素ボンベ無しの深海ツアーに連れて行かれることでしょう。
現実・ファンタジーに関わらず「移動」という手段は様々考えられています。
最近のファンタジーは中世のヨーロッパの雰囲気をベースにして、独自にアレンジした世界観を用いている物が沢山あります。
その中でも「馬」はリアルでもファンタジーでも移動手段の代名詞とも言える程の存在感を持っています。
馬は人間の友とも言われるように、騎士が馬にまたがる姿はカッコいいですね。
馬車に乗って世界を旅するなんてのも、ファンタジー的な印象があったとても素敵ですし、観光地で馬に引いてもらったりするのも嬉しい物です。
また、馬には沢山の伝説があり、時には神の使いに、時には悪魔にと姿を変えて登場します。
今回は現実でも空想でも、登場する馬に焦点を当ててみました。
◇
~現実~
みなさん、馬と聞くと競馬場を元気に走り回っているサラブレッドを思い出すのではないですか?
騎手を背に乗せた状態で時速70キロメートルという高速で駆け抜ける、走る事に特化した種です。
背も高く、細いながらもたくましい足と一歩一歩揺れる毛並みで美しさを感じさせてくれます。騎手の方が小柄な事が前提なので、その対比もあってとても大きく見えますね。
サラブレッドという言葉は完璧・徹底的な種という意味があり、人間によって徹底的に管理し、走る事に極限レベルまで特化した種であり、1頭1頭に血統書が存在します。
その育成方法もストイックでスパルタとしか思えないほど、走る事に特化させています。
戦場を駆ける馬や、馬車などを引く馬となると、整備が行き届いていない道を進む事になるため、速度特化のサラブレッドは正直向きません。
体が丈夫で、筋力と体力があり、坂道でも登っていけるような馬が理想です。
実は馬の品種というのはとんでもないくらいの分類と系統があり、体の大きさなどでも呼び方や分類が変わったりします。
品種によっては競技で競うような、障害物を飛び越えたりするジャンプを苦手としていながら、悪路でもパワフルに進む事を得意としている馬もいますから、戦場に行く馬はこうしたパワフルタイプがいいですね。
性格についても馬は元々、臆病なので人間が棒を振りかざして近づくだけでも全力で逃げてしまいます。
パワフルタイプで性格も勇敢なタイプ、気性が荒いタイプでないと「突撃!!」という号令に驚いて、背中に騎士を乗せたまま、クルリと反転して全力で逃げ去って行ったりする可能性もあります。
号令と同時に馬たちがパニックになったり、四方八方に逃げ去ってしまえば、かっこ悪い事この上ないです。
こうした馬の気性や品種・個体による能力の違いを見極めて、適切に乗りこなすために人間には「馬術」という馬の力を引き出す技術が産み出され、今日に至るまで研鑽が続けられています。
馬の体の動かし方によって生まれる力を逃す事なく、人の力も加える事で生み出される効果は足し算ではなく掛け算のような結果を生み出します。
決して眉唾ものではなく「人馬一体」という言葉に代表されるように馬と人の力が一体化するという現象は現実に存在しています。
前述したサラブレッドでも「あの馬とあの騎手が一緒になると強い」とか言われたりしますからね。
馬の駆ける速度の中で人が武器を繰り出せば、人間では出せない速度を加算した一撃を生み出す事ができます。
走る事が苦手な品種だとしても馬である以上、人間よりははるかに早い速度で移動ができます。流鏑馬のように馬上から弓を射かける事ができれば、定点に留まっていては出来ない射撃もこなす事ができますね。
実際に騎手が乗っている方が、馬が単身で走るより重いにも関わらず、速度があがる事が多く適切にコースを走り抜ける事ができます。
障害物も馬に呼びかけて飛ばせるよりも、乗馬している方がスムーズに障害物を飛び越えたりします。
馬もとても頭が良いので、馬にとって気に入らない性格の悪い人間が乗っていれば、嫌がって暴れたり、ワザと飛ばなかったり、走らなかったりします。
人間が友として馬との信頼感が無いと馬の力を引き出す事はできません。人間の友として、特別な絆を感じる理由も分かりますね。
◇
~ファンタジー~
空想や想像、伝説や神話の世界になると馬たちも凄まじい存在になります。
神話によっては太陽や月は、空を駆ける馬達が引く馬車で世界を回っていたりします。
強大な力の象徴だったり、信仰や神秘の中心になっている存在を動かしていたのは実は馬達だったのです。
大いなる存在でもある天体を乗せた場所を引く、そんな馬達も神聖な存在として崇められていました。
純粋で清い心をもっている乙女の前では優しくなり、その膝で眠り、乙女だけを背に乗せる。
額に角を持つ白馬ことユニコーン。語源はラテン語の「1つ」と「角」を合成させた用語からきています。
実は気性はものすごく荒く、他の馬とは比較にならないほどの速度で走り、象すらもその角で突き殺してしまうそうです。
そして、その角は毒を無効化し、穢れた水を清らかな水にする事ができるとされています。
強さと速さを兼ね備えた上、毒すらも通じない一角獣がユニコーンです。
北欧神話では、最高神でもある主神オーディンの愛馬が滑走する者という意味の名を持つ、スレイプニルです。
巨大な体を持つばかりか、その足は6本とも8本とも言われており、他のどんな馬たちよりも速く駆ける事ができたそうです。
繰り手が主神オーディンだったということなので、多数の世界をつなぐ世界樹ユグドラシルの枝の上ですら走り抜けることができたのでしょう。
悪魔オロバスは悪魔という名前を冠していながらも、馬本来の性格と頭の良さを昇華させたような存在です。
儀式によって呼び出されたオロバスは馬の姿で現れます。過去や未来を問わずあらゆる問に答えられる知能と、召喚者に対して誠実で、迫る厄災を弾き、欺く事をしないと言い伝えられています。
馬の知能の高さ、友と認めた人物への誠実さは馬本来の気高さを感じさせてくれますね。
他にも、馬の上半身に魚の下半身を持ち、湖沼や河川の水中を馬が駆け抜けるかのように自在に泳ぎ回るケルピー。
人間の上半身と馬の下半身を持ち、馬の脚力と人間の器用さと英知を併せ持つケンタウロス。
ギリシャ神話のメデューサの血から生まれた、翼を持つ白馬、大地ではなく天空を駆けるペガサス。
実体を持たず、悪夢を伴って眠りの中に現れる、黒い馬の姿をした悪魔ナイトメア。
馬の姿や力を持つ伝説・神話を数え上げればキリがないほどです。
しかも、東洋西洋を問わず全世界のあちこちで馬に関する神話伝説が語られているほどです。
貴方はどんな伝説の馬をしっていますか?
ピーター個人的には、ゲームの中で1頭で巨大な馬車を引くばかりか、森林でも山岳でも気にせず踏破していく馬車馬が世界最強ではないかと思っています。
馬1頭で8人乗りの馬車とか引いてるシーンがあったりしますが、これこそ最高のファンタジーではないでしょうか?
◇
いかがでしたでしょうか?
現実でも伝説でも、馬は人間にとって欠かせない移動手段でありながら、人類という種族としての友人が馬達だったということも分かりました。
馬達がいてくれたおかげで、人類の文明・文化は大きく広がっていきました。
ずっと身近にいてくれたおかげで、空想や想像の世界にも馬達が大きな影響を与えてくれました。
現代では馬達と触れ合うのも動物園だったり、乗馬クラブだったりと限られた場所になってしまっています。
それでも日本道路交通法に「馬は軽車両とする」みたいに人間の生活に深く根付いているのもまた馬たちです。
馬達のイメージを強く持ちながら、ファンタジーを覗くと、これまでと違った風景が見えるかもしれませんね。
駆けよ!!
あえて赤兎馬を外すこの勇気!!
みんな知ってる三国志でも最強とも言われる呂布の愛馬がこの赤兎馬。
本編で言わなかったからって怒らないで……
ん? なんか視線が……
あー! 松風!! ごめーん!!
君たちは現実でありながらもファンタジーなんだよぉ!
ちなみに歴史に名を残すような名馬とされる馬達は、ネット上でも一覧表としてまとめられていたり、詳細な解説をされたりしています。
馬って本当にすごい。