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フユシオン22

 『異世界奇譚』のアニメ放映が終わった。どうやら最終回はかなり盛り上がったらしい。まぁ全話一三回の放送なのでほとんどプロローグみたいな話だったのだけれど。

「トレンド一位だってよ」

 兄がスマホをいじりながら嬉しそうに話す。

「よかったねぇ」

 私はまるで他人事みたいに返した。実際他人事なのだ。そもそも私は原作を書いていただけでアニメに関しては完全ノータッチだし、金銭的なことだって私には分からない。(後日兄から聞いた話だとアニメのお陰で預金残高は増えたらしいけれど)

「うんうん。これでまた読者獲得に繋がりそうだよ」

 そう話す兄はとても嬉しそうだった。おそらく兄はアニメ放映自体より、それで読者が増えることの方が大事なのだと思う。閲覧数と評価ポイント。あと読者からの感想。とかく兄はそれを気にしているのだ。

「そうだねぇ。妖パラって今何ポイントだっけ?」

「えーとね……。うん、五一万ポイントだね」

「ほんとに!? 先月は四〇万台じゃなかった?」

 私は驚いて兄に詰め寄った。そんな急激なポイント増加は今まで聞いたことがない。そんな私の様子を宥めながら兄は手帳は取り出した。

「うん。先月末は四八万だったよ。……さすが。としか言いようがないね。本当にそろそろトップとられるかもね」

 そう言って兄は手帳に書かれている今年になってからの『妖精達の平行世界戦争』のポイント推移を聞かせてくれた。

「年始は二九万。で三月にドカンと増えて三八万。そこからはじわじわ増えてったね。それで今月になってまた急激に増えたみたいだね」

 兄は淡々と話すと「ふぅー」と感心したようにため息を零した。

「ちょっと待って……。ウチら今年で六年目だよね?」

「そうだね」

「半井先生ってたしか一昨年から連載始まったんじゃなかったけ?」

「そうだね」

「……ウチらの小説って三年目で何ポイントだったっけ?」

「ちょっと待ってね」

 私はまるで尋問するみたいに兄に矢継ぎ早に聞いた。そんな私を尻目に兄はパソコンで私たちのポイントの推移を探してくれた。

「うーんとね。『異世界奇譚』の三年目は……。三〇万弱ってとこかな?」

「三〇万……」

 私はその数字を頭の中でこねくり回した。三〇万。悪くない数字だ。おそらくそれだけあれば文くら内で常にランキング上位に居られると思う。でも……。まるで半井先生に追いついていない。

 ヤバい。本当にヤバい。このペースで半井先生の作品が伸びていったら年内くらいには逆転される。私はなぜかそんな焦りを覚えた。

 今までは他人の作品のポイント数なんて気にしていなかった。でも妖パラだけは別なのだ。あの話だけは。

「ハハハ……。本当に抜かれちゃうかもね」

 私はショックを受けながら力なく笑うことしか出来なかった。正直な話、年下の少女にこんなに早く追い詰められるとは思ってもみなかったのだ。

 そんな私を見て兄は優しく笑った。そして

「御苑。あんまり気にしない方がいいよ。僕らに出来ること良い作品を作ることだけなんだからね」

 と言った。完全な正論。私の感情を完全にねじ伏せる言葉だ。


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