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フユシオン19

 それから半年後。『異世界奇譚』のアニメ放映が始まった。兄から聞いた話だと初回放送後の反響もそれなりにあったらしい。SNSと匿名掲示板。その両方で賛否両論だったとか。私も一話の放送は聞いた。映像は分からないのでラジオ感覚だったけれど。

 放送を聞いた限りでは作品の世界観は私の思っていたモノと少し違っていた。舞台設定やキャラクターは私の描いたモノで間違いない。でもそのキャラクターたちの立ち振る舞いは私の脳内にあったモノよりずっと明るかった。どちらかと言えば私の考える『異世界奇譚』はダークファンタジーなのだ。まだ一話だけなのでなんとも言えないけれどアニメ版ではそれが薄まっていたように思う。

 兄から聞いた話だとネット上での反応も私の感想と同じだったようだ。元々、私たちの作品の読者だった視聴者は割と批判的だったらしい。気持ちは分かる。もし私が『異世界奇譚』の読者だったら同じような反応をすると思う。

 逆に読者以外の視聴者。つまり『異世界奇譚』に初めて触れた人たちには割と好評だったようだ。声優の配役やテンポの良いストーリー展開。それは単にアニメとして見るなら悪くない……。のだと思う。

 ともかく、そんな感じで『異世界奇譚』のアニメの放映は始まったわけだ。賛同と批判。その両方を集めながら――。


 アニメ放映開始から一ヶ月後。兄に「取材申し込み来てるけどどうする?」と申し訳なさそうに聞かれた。

「うーん……。どうしようかなぁ」

「いつも通り断っても良いよ。もしくは質問だけ貰ってメールで返信しても良いし」

「そうだね。今回も受けたくないかな」

 私はパソコンのキーボードに指を乗せたままそう応えた。正直、取材は受けたくないのだ。取材元に内密にして欲しいと頼んでもきっと世間に私たちの姿が露呈するし、何より見知らぬ人に根掘り葉掘り質問されたくない。

「了解……。じゃあ先方に断りの連絡入れとくよ」

「ごめんね。質問返信ならするって伝えといて」

 我ながら生意気な作家だと思う。でも本当に取材だけはダメなのだ。取材を受けるぐらいなら執筆を辞める……。そう言い切れるぐらい抵抗がある。

 それから兄は取材元に『取材申し込みありがとうございます。誠に勝手ながら今回の取材は辞退させていただきます。せっかくお誘いいただいたのに申し訳ございません。もし質問等ありましたら書面でお答えしますのでお気軽にお問い合わせください』と丁寧で素っ気ないメールを送ってくれた。毎度のことだけれど少し取材元に申し訳ない気持ちになる。

「そうそう! 妖パラ更新してたよ」

 お断りのメールを送り終えると兄がテンション高めに言った。妖パラ。正式タイトル『妖精達の平行世界戦争』。私たちが愛読している文藝くらぶ内の作品だ。

「やったー! じゃあ更新終わったら聴くよ」

「うん。じゃあ読み上げ準備しとくよ。……にしても半井先生ってすごいね。僕らよりだいぶ後から連載始まったのにもうランキング常連だよ」

「本当だよね。……この調子じゃそのうち順位抜かれちゃうかもね」

「ハハハ、本当だよね。僕らもうかうかしてらんないよ」

 兄は笑いながらそう言うと「マジで」と付け加えた。


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