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フユシオン15

「実は今、私が冬木先生の小説の校正校閲してるんですが……」

 半井さんは少しバツが悪そうに言うと申し訳なそうに「それで……。今はちょっと忙しくて」と続けた。

「いえいえ、半井先生は悪くないんです。私が無理言ったから……」

 今度は冬木さんが半井さんを庇うように首を大きく横に振った。どうやらジュンくんは彼女たちの地雷を踏んでしまったらしい。

「……すいません。余計なこと聞いてしまったみたいですね」

 ジュンくんは二人のやりとりを見て慌てて謝った。

 『失言してしまった』。彼の顔にはそう書いてあるように見える。

「いえいえ。読者さんが待ってくれてるのに……。本当にすいません」

 冬木さんはジュンくんと半井さんの両方に深々と頭を下げた。きっと彼女としては責任を感じているのだ。『作家 冬木紫苑』としての。

「実は……。以前は兄に校正手伝って貰ってたんです」

 ふいに冬木さんが独り言のように呟いた。そして「ただ、もう兄は居ないんです。二年前に交通事故で亡くなりました」と続ける。

 冬木さんはそこまで話すと窓の外に目を遣った。色と光の強弱だけの世界。きっと彼女の目にはそんな色の洪水が映っているのだろう。

「……春川さん、高木さん。もしよろしければ私のお話を聞いていただけませんか? ちょっと込み入った話ですが一緒にお仕事するのであれば聞いていただきたいんです」

 冬木さんはそう言ってから視線を私たちの方へ戻した。不思議と目の焦点が私たちにしっかり合っている。

 覗き込んだ彼女の目はとても澄んでいて、それでいて何もかも知っているようでもあった。無垢な純粋さと痛みを伴った経験。その両方が彼女の目には宿っているように感じる。

「もちろんです。……というよりも聞かせていただきたいです」

 私は反射的にそう返した。正直仕事抜きにしても知りたいのだ。冬木紫苑という一人の女性について。

「では……。ちょっと長い話になりますが」

 冬木さんは前置きしてから自身の生い立ちについて聞かせてくれた――。

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