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フユシオン5

 ジュンくんとの打ち合わせはスムーズに進んだ。彼は『バービナ』内では一番の常識人なのだ。京極さんとの話し合いよりもずっと楽で助かる。

「じゃあ明日は冬木さんとこ一緒に行こう」

「ですね。電車移動ですか?」

「それが良いんじゃないかな? 駐車場ないし、持ってく荷物も少ないからね」

「了解しました」

 打ち合わせ終了。あとは明日二子玉川に向かうだけだ。

 それから私たちは他愛のない世間話をしながらまったりとした時間を過ごした。昨日が忙しかったからこれくらいの息抜きをしてもバチは当たらないだろう。自然と京極さんの話になる。

「あの子ちょっと丸くなったんじゃない?」

 私は一昨日感じたことをジュンくんに聞いてみた。

「そうかもですね。いやぁ、僕たちとしては助かりますよ。ほら、あの子。昔はすごーくヤンチャだったんで」

「ハハハ、だよねー。私も初めて君らと会ったときは驚いたよ」

 京極裏月の第一印象。その最悪さは素行不良の多いアーティストが多いニンヒアでも群を抜いていた。別に悪い子というわけではない。俗にいうヤンキーってやつだ。きっとジュンくんも彼女の破天荒な性格にはかなり振り回されてきたのだと思う。

「お恥ずかしい限りです……。でも僕はそんな彼女が好きなんですけどね」

 ジュンくんはそう言うと珍しく照れたような笑みを浮かべた。

「あー、分かるわぁ。確かに京極さんのあのキャラって慣れると心地いいよねぇ」

「そうなんですよ。僕も会ったばかりの頃はやたら突っかかられましたが……。まぁそれはお互い様だったんですけどね」

 ジュンくんは懐かしそうに話すと「クスッ」と独り言のような笑い声を出した。

 以前京極さんから聞いた話だと彼らが出会ったのは六年前の二〇一六年だったらしい。当時の京極さんはまだ一七歳、ジュンくんは二二歳だったとか。

 その頃の彼らは茨城でアマチュアバンドをしていて。ギターが京極さん、ベースはジュンくん、ドラムは……。確か松田さんという男性だった。ちなみに現在松田さんは『バービナ』を脱退している。(松田さん脱退にはかなりややこしい事情があったけれど今回その話は割愛する)

 ともかく現在の『バービナ』と発足当時の『バービナ』は全くの別物のようだ。伝え聞いた話だと当時の彼らは今よりもずっとエッジが効いていたらしい……。

「……じゃあまた明日ね。八時に新宿駅集合で!」

「分かりました。よろしくお願いしますね」

 本日の午前の部終了。午後からまた慌ただしくなるだろう――。


 その日の仕事は昨日に比べて幾分スムーズに進んでいった。部外の仕事がないだけでこんなに楽なのかと痛感する。西浦さんの言うとおり時には心を鬼にして断ることが必要なのだろう。

 西浦さんはデスクに居なかった。今日は役員会議のようだ。社長、常務、専務、各部長の集まるニンヒアの幹部会議。本来私も部長代理なので参加するはずなのだが、今回は西浦さんが代行で出てくれた。

『あなたは実務に集中しなさい』

 西浦さんにはそう言われた。選択と集中。まぁ会議なんて嫌いなので正直助かる。

 段々と日が沈んでいく。ブラインドから差し込む日差しがオレンジ色に変わる。可能なら今日は日が沈む前に退社したいな……。そんなことを思った。


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