スプートニク・ショック6
「僕たち家族の食事会に春川さんにも来て欲しいんです」
京介は少し間を置いてからそんなことを言った。あまりに普通に言うので理解が一瞬遅れる。
「ちょ……。待って待って!」
私は彼の言葉を止めるとその真意を頭の中でこね回した。惣介の父親違いの弟、彼らの離婚した両親、母親の不倫、複雑な家庭環境――。その歪な家族というピースになぜ私が加わるのだろう? そんな考えが三秒ほど頭を回る。
「えーと……。ちょっと整理させて。君は君のお父さんとお母さん……。あと惣介を仲直りさせたい……。そう思ってるってことで間違いない?」
私は自分の思考を整理するように言葉を選んで彼に尋ねた。
「はい、その通りです」
「うん。で、君はそのために食事会をどうにか成功させたい……。そして成功させるためには私に食事会に参加させたい……。ってこと?」
「はい。そうです」
「うーん……。そっかぁ」
そこまで確認して私は頭を抱えた。彼の話の内容自体は理解出来る。ただ意図が全く読めなかった。私が彼らの食事会に参加することにいったい何の意味があるのだろう……。どうしてもそこだけが分からない。
「説明が足りなかったですね。すいません」
京介は苦笑いを浮かべながら申し訳なさそうに項を掻いた。
「実は前にも食事会を企画したことがあったんです。でもそのときは兄貴逃げちゃって……。ほら、あの人勘が良いじゃないですか」
京介はため息混じりに言うと再び苦笑した。その笑顔には惣介に対する呆れと親しみが滲んでいる。
「そうね。惣介ってそういうとこあるよね。面倒くさがりだし」
「ええ……。兄はあれでけっこう頭が切れるんです。子供の頃からそうでした。父の雷が落ちる前にどっかにふける……。僕と違って要領が良い人なんだと思います」
京介はしみじみ言うと「まぁ、そんなとこも嫌いじゃないんですけどね」と付け加えた。
そこまで聞いて少しだけ京介の意図が理解出来た気がした。家族だけではダメなのだ。おそらくそれだけでは惣介は理由を付けて逃亡する。あの男はそういう男だ。ずるい奴なのだ。まぁ、京介同様私もそんな彼が嫌いになれないのだけれど。
「……そっか」
私はそこだけ言って話を切った。さてどうしたものか。




