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スプートニク・ショック3

 翌年の四月のことだ。その頃には世間も何となく一段落したような空気が流れ始めていた。あの巨大地震は癒えることのない生傷のようだったけれど、それでも世間は少しずつそのことを忘れ始めていた気がする。血を流しながらも痛みは感じない。そんな感覚に近いと思う。

 そんな無痛流血的な世間の情勢とは裏腹に私たちは相変わらず退廃的な毎日を送っていた。私はどうにかオール優で一年を終えられたし、惣介も私と大差ないくらいの成績で二年に進学した。自慢じゃないけれどペーパーテストやらレポートは得意なのだ。まぁ……。それは惣介も同じなのだろうけれど。

「無事進学できて良かったよ」

 部室で履修届を書きながら惣介がそんなことをぼやいた。

「そうね」

「いや、マジでさ。出席足んなかったらどうしようかと思った」

「あんたは授業サボりすぎなんだよ……。留年したらどうするつもりだったの?」

「ん? そんときゃ仕方ないから一年余計にやるさ。ま! とりあえず進級できてラッキーだった」

 惣介は鼻歌交じりにボールペンをくるくる回した。やたら機嫌が良い。気持ち悪いくらいだ。

「……そういえば、弟くんどうよ?」

「ああ、あいつは元気してるよ。つーか、今朝一緒に登校した」

「ふーん。仲良いんだね」

「まぁな。悪くはないよ」

 惣介は私の質問に上の空のフリをしながら答える。ちょっと訳ありなのだ。いや、結構な訳ありかも知れない……。

 

 私が初めてその話を聞いたのは彼のアパートのベッドだった。情事の熱が冷め始めた頃。彼は弟の話をぽつりぽつり聞かせてくれた。

 惣介の話だと彼の弟は私たちより一歳年下のようだ。名前は京介。名字は……。阿久津。どうやら彼らの両親は離婚して互いに兄弟を一人ずつ引き取ったらしい。だから名字が違うのだ。ちなみに父親の姓が阿久津、母親の姓が浦井らしい。

「俺とアイツは父親が違うんだ。アイツが正当な阿久津家の長男で俺が不義の子なわけよ」

 惣介はこともなげにそんなことを言った。

「だから俺はおふくろの方についてったんだ。そりゃそうなるわな。親父だって血も繋がらない男と一緒に住むの嫌だろ?」

 惣介はそう言うと私の頬を優しく撫でた。指先の硬い感触が頬を伝わる。

「まぁアレよ。アイツはいい奴だからさ。俺なんかよりずっと親父を支えるんじゃねーかな? それに……。正直、今のおふくろをアイツには見せたくねーんだよな。派手な化粧して毎晩遊び歩いてるおばちゃん見たらきっとショック受けると思うしよ」

 惣介はそこまで話すと首を大きく首を横に振った――。


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