スプートニク・ショック1
浦井惣介の話をしよう。私と彼の顛末について――。
二〇一一年、四月。私は都内にある私立大学に入学した。大学構内の桜は世相とは対象的に綺麗に咲き乱れていた。世相――。まさにその年の世相は厄災そのものだったと思う。
高校の卒業式から程なくしてその厄災が日本を襲った。それは後に東日本大震災と呼ばれる大地震で震源から離れていた東京でさえそれなりの被害を受けた。まぁ、幸いなことに私の家族や友人に被害者はいなかったのだけれど。
当時の私はまだまだ子供……。いや、はっきり言ってクソガキで被災地のことなど何も考えていなかった。むしろ卒業旅行が潰れたことに憤慨していたくらいだ。思慮が足りない。今を楽しみたい。そんな年頃だったのだ。控えめに言って自分勝手な高校生だったと思う。
陰鬱な三月。それは一〇代の私の心を確実に蝕んでいった。本来なら友達とワーワー騒いでどこかに行きたかった。美味しいものも食べたかった。そんな不満や怒りが日に日に溜まっていたように思う。
だから大学の入学式でも私は完全にぶうたれていた。着慣れないスーツと履き慣れないパンプス。それとお通夜ムードの世相とが混ざり合って最高に窮屈に感じた。まぁ……。ともかくそんな状態で私のキャンパスライフは滑り出したのだ。息が詰まる。心底そう思った――。
キャンパスライフが始まってから私は軽音サークルに入った。高校時代にガールズバンドをやっていたと学部の先輩に何気なく話した結果、半ば強引にサークル加入させられたのだ。思えばこの頃から面倒ごとが断れない性格が災いしていた気がする。面倒事センサー。それがいつも悪い意味で働く。
軽音サークルはこぢんまりとしたサークルで、サークルメンバーは私も含めて六人しかいなかった。四年生が二人、三年生が一人、二年生が一人、新入生が私を含めて二人……。こう言ってはなんだけれどサークルの体を成していない気がする。ちなみに私を勧誘したのは三年生の先輩だ。おそらくは四年生から脅迫めいた勧誘命令が出ていたのだろう。
今になって思えばそこが全ての因縁の始まりだった気がする。私と浦井惣介の――。
浦井惣介。彼は私と同い年の学生だった。学部は違う。だからサークルが違っていたら顔見知り程度の関係だったと思う。
背は高く細身で、目つきが異様に悪い男だった。眼光が鋭いとかそういう悪さではない。非常に不健康そうな目という言い方が近いと思う。気味の悪い男……。私が彼を見て最初に抱いた印象はそれだった。扱う楽器はベース。言い得て妙だけれど彼にはとてもベースが似合っていると思う。
ともかく、そんな形で私と惣介との関係はスタートしたのだ。一筋縄ではいかない。そんな関係が。




