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小悪魔男子にご用心!  作者: スイッチ&ボーイ
第四章 長編【世界巡りと出会いの旅路】
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意外な活躍

ちょい遅れました。




「喰らってひれ伏しなさいっ! 『風月切波ウィンド・エンド』ッ!」



杖を掲げ、詠唱を終えた瞬間に前方を無数の風の刃が飛ぶ。

近場まで迫っていた十数匹のオークの群れは、脂肪も筋肉の鎧も意味を成さずに細切れになって物言わぬ肉片にへとなった。



見慣れない者には凄惨な光景だが、魔法を放った三つ目少女はどうだ!と言わんばかりに胸を張って自信に溢れた様子である。



「ふっふっふ、どうよ? 天才魔導師のあたしに掛かれば、下級魔法でもオークの群れなんてアリンコ同然よ。百匹来ようが無駄無駄無駄ぁっ、あーはっはっはっはっはっは♪」



ふんぞり返って高笑いするヤシャ・ツバキ……その姿は自信過剰というのがぴったりと似合うだろう。

だが、その実力は確かに本物というのをレヴィ達に知らしめていた。



「……凄いな、初級クラスの魔法なのにあの威力とは」

「確かに。これ程となれば自意識過剰になって有頂天になるのもむべからずということかな」



現役ベテラン冒険者の二人はそう呟く。

今しがた、ツバキが放った魔法は初心者冒険者の魔導師もよく使う極ありふれた攻撃魔法であり、威力はせいぜい人間ひとりに多少の切り傷を付けさせてる程度のもの。

専ら、相手の気勢を削いだり怯ませたりが基本の牽制技に過ぎないのだが……ツバキの並外れた魔力がその牽制技を必殺の威力にへと昇華させていた。



タフなオーク達をたちどころにバラバラにしてみせた現場がその威力の桁外れさをまざまざと残している。



「どう? これで分かったかしら、あたしの天才有能ぶりを。そのあたしがこの乳でかだけが取り柄のパーティーに入ってやってることに感謝することねっ♪」

「ツ、ツバキさん……そういうことを大声で言わないでください」



ライラット、エストーラ以上のバストの持ち主であるシラギクはその揶揄に恥ずかしそうにしながら諌めるが、ツバキは鼻歌混じりにステップまで踏んでる程に調子に乗っている。



「……てめー、自分の身に借金がのし掛かってる現実を忘れんなよな?」

「うぐっ!?……わ、分かってるわよそんくらいっ。金貨の五千枚や一万枚ぐらい、あっという間に叩き返してやるわよっ! 今のあたしの活躍、給金にプラスしときなさいよねっ?」

「へいへい(ま、銅貨三枚分ぐらいにしとくか)」



プラス分がみみっちい額とは知らずに、ツバキは比較的ご機嫌な様子であった。



……こうしてツバキが戦闘に参入し始めてから早一週間が過ぎている。



性格のキツさは当初は酷いものがあったが(経緯が経緯だけにしょうがないが)その度にライラットの軽い仕置きや、憎まれ口を叩かれながらも献身的に接してあげたシラギク。

そしてモチベーション維持の為に、敵の撃破数一体につき、給金の額を上げるというレヴィの取り決めによりツバキの態度も僅かずつではあるが軟化の兆しを見せている(ただし、上げる額はレヴィの匙加減というのは教えていないが)


最初の戦闘では、前衛に構うことなく魔法を放とうとしたがシラギクの懸命な制止と説得で付け焼き刃ながら隙間を縫うようにしながらコントロールする術を身に付け、以降もそのような方法を使っている。


彼女としては派手に吹っ飛ばすやり方が慣れてるし好きなのだが、こういう繊細なやり方もこれはこれで面白いと感じてきていた。




このように表向きこそ雑用係という名目の彼女だが、現在は……というか、最初から戦闘要員の仕事を重点的にしていた。



そもそもレヴィが彼女を加えようと思った大きな要因は、現在のパーティーにはいない優れた魔法の使い手という面も大きい。

ライラットは専ら自力での肉弾戦、エストーラは魔導銃こそ使えるが柔軟さには些か欠けており、シラギクは雷という一系統のものしか出来ない。


レヴィは自らの体に掛けられる魔力付与エンチャントを使用できるが、これも攻撃一辺倒なもので守勢に回るとやや厳しいところがある。



その点、ツバキは魔導師故に近距離戦闘こそ不得手だが、広範囲の殲滅に長けた魔法を数多く扱え、更に防御系や回復系の魔法もなかなかの練度で出来る万能系の魔導師で、性格の難を除けばまさに冒険者パーティーに加わるには逸材の少女だったのだ…………ただ、本人の性格と信頼なんて二の次という思考から腫れ物扱いされてきたので彼女と組もうという物好きは滅多にいなかったが。



(けどまぁ、実際すげー役に立つのは確かだぜ。今までの俺らだと離れた距離から纏めて攻撃できるのはシラギクだけだったしな……けど電撃に耐性のある奴が相手だと厳しいけど、ツバキなら幾つもの属性の魔法が使える。防御や回復の魔法もこなせるし、有望株を加えられたのは僥倖だな)



レヴィにしては珍しく好評していた。


日にちは浅く、連携もまだまだ。それに何かと突っかかる面もあるが、それらも踏まえて改善していけばいいだろう。



「ところでさぁ……こうやってちょいちょいオーク退治してるけど、お目当ての奴は一向に現れないわね」



お目当ての奴とは、アウセントの付近で迎合し、呪いでレヴィをあと一歩で死ぬ手前まで追い詰めた仮面の男……ジョーカーAのことだ。


呪いの根本だった悪魔を倒されて退散してから、大分日が経ったが行方を眩ましたままでレヴィとしては落とし前を付けてやろうと思ってるのだが何も情報が無ければ探しようもない。


そこで、アウセント以外でも発生している変異オークを片付けることで誘きだそうかと日がなオーク狩りに勤しんでるがジョーカーAが現れる気配は一切無かった。



「そうだな……この近辺のオークも討伐して回ってるがあの男、全く現れる気配が無い。この件から手を引いたんじゃないのか?」

「そうなら良いんだけどよ……ただ、ああいう手合いの輩はしつこいって相場があっからな、それに……」



自分達を驚異と認めたのなら、このまま雲隠れして逃げるとは思えなかった。何かしらのアクションを起こすかもしれないとレヴィは睨んでいる。



といっても、確信も何もない勘に過ぎないがそれだけ気に掛けてることだった。



「まあいつ出現しても即応できる心構えはしておくべきだね。今日のところはここまでにしておくかい?」

「だな。素材の換金がてら、一休みしとくか」



今日のところはこの辺で切り上げて、近場の街で宿を取ることになった。




△ △ △ △ △





「……はぁ~っ、やっぱベッドがある無しじゃあ快適さが違うわねぇ……初めて街を拠点に活動してた利点がしみじみと分かるわ」



宿のベッドに飛び込んで寛ぐツバキは感慨深そうに言う。

これまでアウセントの街を拠点にし、遠出が必要な依頼などをやってなかったツバキは常日頃から衣食住が整った環境が当たり前だったがレヴィ達のパーティーに入ってからは何もかもが違った。



街や村が近くに無い場所では野宿が当たり前で、食事にしたっていつも潤沢なものが揃う訳でもない。

長期に渡れば、保存が効く干し肉をメインにちょっとアレンジした程度の頻度が増えていく。

最も、食事事情に関してはレヴィが料理上手なのもあって他の冒険者パーティーと比べれば恵まれてるともいえる。



余談だが、食事当番ではレヴィが受け持つ回数がもっと多く、逆に最も少ない……というかほとんどやらせて貰えないのはライラットだ。

不器用な彼女はよく言えば豪快、悪く言うと雑な出来映えに味のものしか出来ないのでまあ仕方ないだろう。

一応、料理スキルの向上を試みてるが成果は今のところ無いままである。



「けどまあ、夜空を見ながら寝るのも案外悪くないし……あいつの作る料理も何か妙に美味いからそこは文句ないけど」



初めはあんな男が作るやつなんてたかが知れてると見くびっていたが、食べてみるとなかなかどうして美味く、思わずおかわりを要求してしまった程だ。



こうしてみると意外に居心地が良くて、旅をしながらの冒険が楽しくなってきていた。



……ただ、気に入らない面もあるが。主に女性陣に関連して。




「ライラットもエストーラもシラギクも……何よ、揃いも揃って巨乳巨乳爆乳って……当て付けかっ、貧乳に悩む女への当て付けなわけなのかしらねっ。冒険者らしく身軽なスレンダーボディになりなさいよっ。て言うか、そんな連中を意図的に集めたあの男女にも腹が立つんですけどっ!」



彼女らがレヴィの元に集ったのは偶々や偶然もあるのだが、ツバキにとっては自身のコンプレックスを刺激する輩が揃ってるので腹に据えかねるものがある。


何より、気に触ることは……



「……むっ、まーた結界を張ったわね。毎夜毎夜、何てお盛んな奴なのかしら」



魔力を肉眼で感知できる三つ目族であるが故に、ツバキはすぐ側で防音の結界が構築されたことをすぐに察した。


レヴィと他の女性達がそういう関係にあるのは周知しているし、ヤる時になると雑音のシャットアウトも兼ねた防音結界を張る習慣も知っている。



つまり、結界が張られた=女性と肌を重ねてるという図式は簡単に描かれるのだ。



「あいつ、ほんと猿か発情期の犬並に盛るんだから……少しは遠慮ってもんを知らないのかしらねっ」



性的な知識が皆無という訳ではないツバキだが、それでも毎日毎日こうもヤりまくってるレヴィには呆れる他はない。

あの薄幸じみた少女面で、下半身は雌を喰いまくる野獣なのだから性質が悪いとさえ思える。



今のところは、自分にその手の話を振ってくる様子は無さそうだがそれでも油断は禁物だ。何せ自分は絶世の美少女と自分でも誇れる容姿をしてるのだから。

性欲を煽られた奴がいつ何時、寝込みを襲ってくるかか分かったもんじゃないので、ツバキは寝る時は必ず周囲に防護結界を張るのが常態化していた…………しかし、当のレヴィからは重要な戦力として見られていても、異性としては未だに見られていないことを全く知らずにいた。



それはそれで喜ばしそうだが、逆に彼女のプライドをへし折りしそうである。





「何でアイツを抱かねーかって?……平たい体には興奮しねーんだよ俺は。最低でもCぐらいはねーとな」


誘わない理由その一、貧乳だから(乙)



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― 新着の感想 ―
[良い点] メカ山三等兵さん、こんにちは! 新作楽しく読ませていただきました! パーティーに、念願の回復・補助担当が追加されて、戦力面において、ますます充実してきましたね。レヴィのパーティーに新しい…
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