色々と奪われるレヴィ
タイトルからしてその手の話かと直感した、あなたの勘は正しいです。
翌朝、ベッドからむくりと起きたレヴィの顔色はぐっすり寝れた割には何故か優れてないように見える不健康そうなものだった。
「……すげー、体がだりぃ……あんな夢、見ちまったせいか?……つーか、夢ん中とはいえライラット相手に無茶苦茶ヤっちまったな俺……」
普段じゃやれない過激なことまで調子に乗ってしまくった記憶がぼんやりとだが残っており、滅多にない後ろめたさを感じてしまった。
しかし、夢の筈なのにやけに生々しい記憶だった。本当に彼女の体に触れてしたような気がするが……流石に現実であんな真似をライラットがする筈が無いだろう。
自分にちょくちょく抱かれてるが、まだまだ初なところもある彼女に演技であっても大胆な誘いを掛けるなんて無理なのだから。
やたらリアルだった内容を思い出す内に下半身が妙にスッキリとしていることに、まさかと思いながらシーツを捲って見てみたが……幸いなことに不始末は起こってなかった。
「はぁ、良かった……今更になって夢精とか童貞みてーな真似しちまってたらショックだからな。怠いけど動くとすっか……」
いつもの彼らしからぬノロノロとした動きでレヴィは部屋を後にした。
その後、同じ時刻頃に起床したライラット達と食堂で朝食を取ったのだが彼女達からいつもと何か違う感じだと言われる。
「レヴィ、何か疲れてるような気がするのだけれど」
「そうですわね。昨日の怪我がやはり堪えてますの?」
「いや、別にそんなことはねーよ……ただ、まぁ、何だ。体調自体は何もねーから心配すんなよ」
「そう言われてもな、顔色が何だか暗い気もするし。本当に大丈夫なのか?」
心配げな眼差しで見てくるライラットの視線にレヴィは気まずくなって目を逸らした。
まさか、お前相手に好き放題に欲望を満たしましたっていう夢を見たからそれで調子が崩れてるかもなんて言える訳が無い。
言ったら確実にライラットとシラギクから拳骨と平手打ちがサービス特盛でお見舞いされるだろう。
「その内に元の調子になるだろーから大丈夫だ」
「なら、良いんだが……それで今日はどうする? あのジョーカーAとやらの足取りを追うか?」
「まあそれもしてーところだが、オークが出没した場所なんかを詳しく聞き回ってみよーぜ。今までに現れたところを調べりゃ、何か法則というか傾向が分かるかもしんねーしよ。ついでに戦った奴らも何か違和感が無かったかどうかもな」
ジョーカーAのことはもちろん気に掛かるが、有力な手掛かりが無いままでは聞き込みをしても徒労に終わってしまいかねない。
それよりかはオークの問題解決を目指す方が近道かもしれない。
もし、あの仮面男が何かの形で関わってるならオーク問題に首を突っ込む自分達を見逃す筈がないだろう。
寧ろ、奴を誘き寄せれる種になってくれるかもしれない。
そういう思惑もあって、その日はレヴィ達は主に異常発生しているオークを中心に調べたのだった……。
「俺らが戦ったオークはそんな感じだったな」
「なるほど。ありがとう」
オークと戦ったという冒険者から話を聞き追えたエストーラが礼を言って立ち去る。
話を聞いたのはこれで五人目となるが、どの冒険者にも通じてるのは「オークにしては積極的に戦闘を仕掛けてきた」というのだった。
やはり、今までに現れたオークも通常の個体と比べると戦いを果敢に仕掛けてくる性質のようだ。
「単に気が荒いオークに偶々出会っただけ……というのは考えづらいね。これらが意味するところに何があるか……」
考えている途中で、別行動していたレヴィにばったり出会ったエストーラは真剣な顔から一転して満面の微笑みを浮かべながら駆け寄った。
「レヴィ、君の方はどうだったんだい?」
「ああ、偶然だけどオークに遭遇した場所を調べてみたんだが……駄目だな、法則も傾向もありゃしねー。バラバラ過ぎて、無秩序って感じだ」
「そうか、それは残念……ところでレヴィ」
「ん?」
手を引いて人目の少ないとこに行くと、エストーラが頬を赤らめながらレヴィの手をビキニブラを付けてる胸に押し付けた。
「昨日は色々あって頼みづらかったけど、今日の夜頃なんかどうだい? 久し振りに二人きりで……楽しみたいんだけれど♪」
夜のお誘いの言葉だった。昨日はオークとの集団戦闘もあって疲弊してるだろうと遠慮したが、レヴィも戦いの影響で昂ってることだろう。
だから、溜まった欲は全部受け止めてあげるとアプローチした彼女であったが。
「あー……悪りぃ、エストーラ。今日はそういう気分にいまいちなれなくてよ」
「えっ!?……そ、そんな、嘘っ。レ、レヴィ、私の体に飽きてしまったのかいっ? 今まではどんな時でも快く抱いてくれたじゃないかっ」
まさか断られるだなんて微塵も思ってなかったエストーラが取り乱して、半泣きにまでなる。
実際、彼女の誘いを一度でも拒んだことなんて無かったのでレヴィに飽きられたのかと嫌な気持ちが押し寄せてくる。
「お、落ち着けってのっ。別にそんなんじゃねーって……ただ、妙にスッキリしててよ。今だって、エストーラの胸を触ってんのに全然ムラっ気が来なくて俺も戸惑ってんだよ」
昨夜の淫夢のせいなのか、性欲が発散でもされたかのようでこうして女体に触れていても何も感じなかったのだ。これにはレヴィも驚き戸惑っている。
朝起きたときは別に粗相を仕出かしてた訳でも無かったのだが……何故か起きてからはそういったものが失せてるように思われるのだ。
さながら、一度ヤった後の賢者モードが持続し続けてるようである。
「ま、まさか……昨日、頭を怪我した時に何かレヴィの大事なモノに不具合がっ!?」
「それはねーよ。寝る前でも元気に反応してたからな」
「じゃあ、一体何故なんだい?」
そう聞かれても自分でも分からない。
確かに夢精などをした痕は残って無かったのだが……そこでふと思い付いたことがある。
痕が残らないように誰かが熟睡してる自分に夜這いでも掛けたのではと。
もしや、あの淫夢は現実でそういうことをされてたから同期して見たものだったのではと勘繰った。
「なぁ、エストーラ……昨日の夜にライラットかシラギクが俺の部屋に入ったなんてこと無かったか?」
「え? いやそれは無いよ。絶対にあり得ない、と言うか誰一人とも入ってなんかいないよ」
「何でそこまで言えんだよ」
「だって、私ずっとレヴィが寝ている部屋の前に居たんだから」
「は? 何で部屋の前なんかに?」
「いつ何時、レヴィからお呼びの声が掛かってもいいようにスタンバってたんだよ♪ 脳を半分ずつ眠らせて意識の半分は起きてたから誰もレヴィの部屋に来てなんかいないよ、万一先を越されたら悔しいからね」
誇らしく語ってるが……お前、ほんとに人間なの?と問い掛けたくなった。
しかし、理由は何であれ見張っていたことには変わりない彼女が言うなら誰もレヴィに夜這いなど掛けてきてないのだろうか?
「物音とか声も無かったか?」
「ああ、別に。静かなものだったよ」
「そうか……」
ますます性欲が霧散してる原因が分からなくなってきた……まあ、別に今どうこうする問題でもないだろうし、その内に復活もするだろう。
エストーラには悪いが、それまでは我慢していて貰おう。
そんなことも挟みながら、情報収集に勤しんだ日も終わりが近づき始め、時刻は夜にへとなった……。
「ふぁ……何でか知んねーけど……やけに眠いぜ……」
うとうとした顔で眠気を堪えながら、レヴィは部屋にへと戻ってきた。
時間は午後の七時辺りで、本来なら眠気を催すような時間帯では無い筈なのだが、どうしてかやたらと眠いのだ。
本当なら今日、方々で集めてきた情報をライラット達と共に精査する筈だったのだが、当のレヴィが夢うつつな状態ではまともな話など出来かねない。
という訳で、明日の朝まで持ち越しということになったのだ。
ライラット達は、この眠気の強さはひょっとしたら頭に負った怪我が何か関係してるんじゃないかと思っており、明日もこんな調子だったなら医者に診て貰おうと思っていた。
覚束ない足取りでベッドに倒れ込み、天井を仰ぐ。眠いにも関わらず下半身の一部は元気を取り戻していた。
「……今更になって、かよ……つか、ほんと眠い……何で、こんな、に……眠、いん……だ…………」
昨日と違って疲れが極度に残ってる訳ではない。
なのに何故、こうも強い眠気が襲ってくるのか……考える前に思考は睡魔に抗えずに堕ちていった……。
「……またここかよ。何でまた……」
ふと、目覚めると目に写ったのはまたピンクの靄が掛かった空間だった。
既視感に囚われながら、この後に起こるだろう展開を予期してると案の定というか、目の前に突如現れた女性に抱き着かれた。
「ふふふ、待ちくたびれたよレヴィ♡ 私と甘い甘~い楽しい時間を過ごそうじゃないか♡」
現れたのはライラットでなく、エストーラだった。
悩ましげな顔でレヴィを胸に抱き、腰を妖しげにくねらせて誘っている。
昨日に夢に見たライラットと同じく、セクシーさを意識した衣装に身を包んでおり、網タイツやガーターベルトといった下着で性欲を揺さぶってこようとしてくる。
(おいおい、二日も続けてこんな夢見ちまうなんて変じゃねーか?……それに夢だって分かってんのに、何でこんなにムラムラした欲が沸いてくんだ)
昨日はそういう夢かと流したが、流石にレヴィもこの淫夢に違和感を覚えだした。
現実じゃないという感覚に比して、沸き上がってくる性の渇きは今すぐに目の前のエストーラを押し倒したいという衝動を発してくる。
そして、今日出てきた仲間も最初から押せ押せといった感じで迫ってくる。エストーラは普段からそんな感じだが、ライラットの時は異様だと思った。
その時は単にそういう夢なんだと納得したのだが、それが二日に渡って続いたとなると何か嫌なものを感じたのだ。
その為にすぐに流されようとせず、この淫夢が何なのかと考えているレヴィに夢の中のエストーラが囁いてくる。
「どうしたんだい、レヴィ?……性欲が疼いてるだろう?……何も考えずに私に身を委ねて気持ちよくなりなよ♡…………天国に昇らせてあげるからさぁ♡」
甘い声が脳に浸透して、体が勝手に昂っていく。
衣服を押し上げる自分のモノを手で抑えながら、レヴィが離れようとすると瞬間移動のように距離を詰めたエストーラが濃厚なキスを交わした。
「んぐっ……!?」
「うふふ♡ 我慢してもだ~め♡……さあ、自分の気持ちを解き放って……極上の快楽に浸りなよ…………死ぬ程に、ね♪」
キスを交わした後のレヴィは、息を荒くして正気でも無くしたかのようにエストーラに襲い掛かってその果てしない獣欲を発散し続けたのだった……。
再び、淫夢に取り込まれるレヴィ。
これは本当にただの夢なのか、それとも……