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小悪魔男子にご用心!  作者: スイッチ&ボーイ
第三章【仲直りと祭りと怪盗と】
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合流、そして……

漸く五十話まで漕ぎ着けました……次は百話を目標に頑張っていきます。




その後、交代で見張り番と睡眠を交互に受け持ちながら、何事もなく迎えられた翌日の朝……昇る朝日を受けながら、レヴィは大きく伸びをしていた。



「んーーっ、良い朝だぜ。昨日はとんだトラブルになっちまったけど、張りきって行くとすっか」

「………………」

「何だよ、シラギク。そんな仏頂面で見てきて」

「ぶ、仏頂面にもなりますわよっ、昨日あんな事をされたのですからっ!」



同時に気まずそうにしているライラットはその目撃者で、あんな事というのは昨日レヴィと一緒に寝てからその後の事。

レヴィに抱きつかれて胸に顔を埋められたままで二人とも寝たのだが、交代の時間になってライラットが起こしに来た際、何故かシラギクの服が捲り上がっていて下着と素肌が露になってる状態であったのだ。体勢はそのままで。


ちょうどその時にタイミングが良いのか悪いのかシラギクが起きて、谷間に直接顔を突っ込まれてる現状に数秒固まった後、遠吠えのごとき絶叫が発せられたのだ。



「だから何度も言ってんだろ。事故だよ事故、どっちかの寝相が悪かっただけだ」

「う、嘘おっしゃいっ。わたくしが寝入った隙に服を捲ったのでしょう、そうでなければ説明がつきませんわっ!……ほ、本当に全く油断も隙もありませんわね、もうっ」



傍目から見ると昨日以前までと変わらなく思えるが、シラギクのレヴィへの態度は若干の軟化を見せている。

今も怒ってこそいるが露骨な嫌悪感は無くそこまで苛烈な風にも見えなく、声を張り上げてまで怒声を響かせる事も無かった。


親密、というにはまだ遠いかもしれないが昨日の一件で心は幾分か和らいできている。出来れば、このまま歩み寄って貰いたいものだ。

全員の怪我も大体治ったし、後はエストーラがここへ合流してきてくれれば旅も再開できるだろうと思ってた時に遠方から土埃が上がる程の猛ダッシュをしながら彼女が来た。



「レヴィーーーーーーっ、無事だったかーーいっ!」


「おうエストーラっ……うぷっ?」


レヴィまで数メートル近付いたところで跳んできて、そのまま抱き抱える様にしがみついてきてレヴィが思わずよろける。

ビキニブラに包まれた胸に顔を押し付けさせ、恋人がハグするような熱い抱擁をかわした。


「ああ、レヴィ。元気そうで安心したよ、君が崖下に落ちてしまった時は肝が冷えて仕方なかったけど、元気な様で良かったっ……痛むところは無いかい?お腹は空いてないかい?ムラムラとかはしてないかい? 性欲が溜まってる様なら発散しないといけないよ、いやしないと駄目だね寧ろ駄目だね、よし善は急げと言うし、そこの木陰で私と熱いアバンチュールな営みをしようか♡」


再会したレヴィへの気遣いが途中から欲望丸出しになっている。そのままレヴィを抱き締めて、ハァハァと変態チックな吐息を漏らしながら木陰にフェードアウトしかけるがライラットによる拳骨で阻止される。


「……痛いじゃないか。愛の一時を邪魔するだなんて無粋だよ」

「会って早々にしけこもうとするな。と言うか、私とシラギクの事をスルーし過ぎだ」

「ああ、うん……君達も無事な様で何よりだね良かった」


真顔でかつ淡白な棒読みというレヴィとの落差が激しかった。まあ彼女らしいといえばらしいが、微妙に傷付いた。


「そんな慌てんなよエストーラ……夜になったら、たっぷり可愛がってやるからよ」

「それは楽しみだね。なら今は我慢してその時を心待ちにするよレヴィ♡」


早速とばかりにいちゃいちゃし始めた。完全に二人だけの世界モードだ。

もう見慣れた光景になってきたが、本当に明け透けなく本音を言い合えるのはある意味で正直者の鏡であろうか。

そんな二人を達観しながら眺めつつ、横目でシラギクの様子を窺うと「ふん、朝からお盛んではしたない事ですわね」と言ってレヴィ達からそっぽを向いていた。

その対応はいつも通りだが露骨なまでの嫌悪感は薄くなっており、険悪になる様な罵倒も侮蔑も言ってくる気配が無い。



心境の変化がここにも少し現れてる様だ。この調子で行って欲しいものだとライラットは願った。


「ああ、そうだ。無謀にも私達を襲ってきた不貞な輩二人はきっちり始末しておいたよ」

「二人だけだったのか? 数が少なく感じるが……やはり盗賊か追い剥ぎの類いだったか?」

「さてね。そうとしか言えない風貌だったけど、レヴィの無事を確認するのが最優先だったから生死以外は路傍の石ころ並にどうでも良いよ」


なかなかにドライであった。

まあいきなりボーガンを射ってきたのはそいつらの方だから、賊でなくとも正当防衛は成立するので問題にはならないだろう。

トラブルこそ起きたが、大きな怪我もなく全員が無事に合流できたので一行は次の街にへと移動を再開した。



その最中にシラギクはある事に思い悩んでいた。



(……ひょっとして、あの襲ってきた者達は……わたくしが……)



襲撃をしてきた賊の正体……もしや、自分が撒いてしまった種なのではないかという疑念が心中に浮かんでいたのだった……。




△ △ △ △ △




山道をようやく抜け、平地にへと渡ったところで良い時間になったので今日もここで野宿をする事になった。


テントの設営に食事も手早く済ませ、就寝に入ろうとなったところでエストーラがそわそわとし始める。

言わずもがな、一日ぶりにレヴィに抱かれるので気が急いているのだ。

それでいよいよとレヴィが寝てるテントに向かおうとしたところで、意外な珍客に阻まれた。



「少しお待ちになって」


「……君か。何か用でもあるのかい?」



シラギクに呼び止められたエストーラは露骨に不機嫌な顔になる。

これから、めくるめく絶頂タイムを始めようという時に待ったを掛けられた上にあまり好いてない相手だ。

話があるなら手短に済ませろと言うと、レヴィにちょっと話があるから行くのは待って欲しいという事だった。


「話自体は早く終わらせるつもりですわ。ですから、少しだけわたくしに時間をくださらない?」

「……それは今でないと駄目なのかい」

「出来れば早い内に済ませておきたいんですの……お願いしますわ」


ここでシラギクが何と頭を下げてまで頼むという真似をした。これにはエストーラも思わずたじろぐ。

今までエストーラにも高圧的に接してきていた彼女がこうまでしてくるとは俄には信じられなかった。

迷ったが、ここまでされては無下に突っぱねるというのも流石にこころが痛む。


「……はぁ、分かったよ。頭まで下げられちゃ、私も曲げるしかないね……すぐに終わらせておくれよ」

「ええ、ありがとうございます」


それから足早にレヴィのいるテントまで行った……礼まで言うシラギクの態度に何か引っ掛かるものを感じたエストーラだが盗み聞きする趣味など無かったので、適当な頃合いになるまではその場に居とこうとした。




……その頃、性欲を沸き上がらせて寝っ転がりながらエストーラの来訪を待ち構えていたレヴィだったが不意に現れた影が彼女のでない事に違和感を抱き、形からシラギクが来た事に疑問を感じた。



「……レヴィ、起きてらっしゃる? 少し話がありますの」

「話だぁ? 悪りーけど、これからエストーラと……」

「そのエストーラとは話を付けてありますわ。早急に終わらせるつもりですから、お願いしますわ」



続きを話す前にシラギクの方からそんな事を言われた。

あのエストーラが自分に抱かれるよりも、シラギクの方を優先させてやった事に驚きを感じながらも、そうまでして来たという事は余程に重大な話でもあるのかと感じ取ったレヴィは滾った性欲を落ち着かして話を聞いてやる事にした。


テントから出て、シラギクと向き合うと彼女の表情に何か後ろめたいものというか背徳感の様なものが浮かんでいた。


「何なんだよ、話ってのは?」

「その……わたくし達を襲ってきた賊の事ですの」

「賊? そいつらはエストーラの奴が殺したって言ってただろ。今更どんな話があんだよ」

「そいつらが襲ってきたのは……わたくしのせいかもしれませんの」


どういう意味かと尋ねれば、実は数日前に別行動をしていた際に盗賊と出会っており過半数はその場で殺したが二、三人を故意に見逃したというのだ。

つまり、あの二人は物盗り目的でなく、報復の為に攻撃を仕掛けてきた可能性があるというのだ。


そう思ったのは、あの時に執拗にシラギクだけに狙いを定めていた事から。

単に山道だったから機動力を発揮しにくいケンタウロスを優先的に狙ったと考えていたのだが、エストーラが言っていた二人だけという事が気になっていた。


「盗賊になった者は大抵が用心深いでしょう? それなのに襲う相手より頭数が少ない状態で、積極的に攻撃を仕掛けた事が腑に落ちませんでしたの……ですから、その……」

「金銭じゃなく、命を奪う方に傾倒してたって訳か?」

「はい……そう考えましたら一番の目的は、わたくしへの復讐という理由が当て嵌まりますの」


言われてみれば、確かに納得する話だった。

しかし、そうなると次に問題となってくるのが……



「俺らが怪我したのは、最終的にてめーのせいって事になるよな?」

「っ……そう、ですわ。そう思われても仕方のない話ですわ、元を正せばわたくしが賊相手に無用な情けを掛けたのが原因ですもの……」

「それで? 俺んとこに来たのは懺悔するのが目的か?」


こくりと頷いた。そして、まだ納得しかねないと言うなら自分の身を好きなようにやっても構わないとまで言ってきた。


「貴方はわたくしの身を助けてくれました、身を呈してまでも……怪我をした根本がわたくしの非であったなら、それはわたくしが負うべき責になります。貴方がしろと言われるなら、わ、わたくし……覚悟を決めておりますからっ」


助けてくれた恩に報いたく、また自分の不始末の精算も兼ねてシラギクはそう申し出た。

この男の事だ。こうして弱味を握ったなら、躊躇なく肉体を差し出せだの言ってくるだろう。

だが、それも自分の行いによるツケだ。そう言われたとしても拒むつもりはない。


人格とか何もかも底辺にしか写ってこなかったレヴィが見せた打算も何もない男気に、シラギクは大っぴらにはせずとも好感を抱いた。

そんな男に自分の不始末のせいで怪我をさせたなら……どんな形であれ、恩を返さざるを得ない。



「……屈めろよ。そんで胸、晒してみな」

「っ……わ、分かり、ましたわ……」



不敵に笑ったレヴィがそう言った。やはり、自分を抱こうという気だ。

だがそれも致し方ない、ここは無心になって耐えるのだ……シラギクは自分にそう言い聞かせながら、言われた通りに四つ足を畳んで屈み、上着のボタンを外していって下着姿を露にした。

冷たい外気が当たり、自分でもコンプレックスに感じている巨大な胸を男の目に晒してる事に否応なく羞恥心を感じてしまう。



(や、やはり、とてつもなくっ……恥ずかしいですわっ! こんな、みっともないぐらいに大きな胸を男の目の前で晒すだなんてっ……で、ですが、これもわたくしの怠慢が生んだせい。何も考えずに堪え忍ぶのですわ)



それでも流石に目を開けてはられず、閉じた視界の中でレヴィが次にやってくるだろう行動を予期して心臓が早鐘を打つ。

そして、その時は早く来た。



「あっ……はんっ!」



レヴィの手が胸を掴んだ。そのまま、感触を楽しむかのように揉み回されて口から堪えきれない声が出てしまう。


「揉みごたえがあって、やっぱ良いな……もっと声、聞かせろよシラギク」

「やっ、くふっ……で、出来ませんわ、そんなの恥ずかしいっ……あんっっ♡」


強く揉まれた時に一際甲高い悲鳴が出て、慌てて口を手で抑えた。



(だ、駄目ですわっ、あまり大きな声を出したら他の者に気付かれちゃいますわっ……け、けれどっ、この手の動きっ……す、凄く気持ちよくって♡ ご、極上のマッサージでも受けてるかのようで……こ、声が抑えきれないですわぁ♡)


暫くの間、好き放題に揉まれて押し殺す様な喘ぎを上げ続けるシラギク。

快感の波に理性が押し流れつつも、あの時の様に一線を越えるだろう時が来る事に不安や恐れを感じる。

やがて、十分に堪能したのか手が離れた。

いよいよだ、次はいよいよ本番行為をしてくるに違いない。

身構えて固くさせていたシラギクであったが、次に言われた事は彼女の予想を裏切るものだった。



「もう良いぜ、シラギク。十分、楽しめたからよ」

「へっ!?……も、もうというのは、これで終わりという事、ですの?」

「ああ、そのでか乳は十分に堪能できたしな。良い声も聞けたし、今日のところはこんぐらいにしといてやるよ」



思わず呆気に取られるシラギク。てっきり、この流れのままで抱かれるだろうと半ば確信してもいたのでここで終了と言われるのは予想外であった。

安堵する反面で、何故ここまでと言った真意が図りかねず自分の方から聞いてみた。


「わ、わたくしを……抱きませんの?」

「別に抱けってのはてめーも言ってねーだろ。それとも何だよ、欲求不満だから抱いて欲しいってか?」

「そ、そんな訳ありませんわっ! ただ、性欲の権化の貴方がこれで満足するだなんて妙だと思っただけですわっ」

「その日の気分ってもんがあんだよ。それに今日はエストーラが待ってる事だし、あいつが痺れ切らして来ねー内に退散しといた方が良いぜ」


そういえば、少しだけと言ってたがそれなりに時間が経ってしまってる。

今ここに来られたら、非常に面倒な展開になってしまうだろう。

シラギクはどこか納得しきれないものを感じながらも、レヴィがもう十分と言ったなら良いだろう。

上着を着直して身支度を整えていると、レヴィが含みある顔で言った。



「あ、言っとくけどこれでチャラになったとか思ってねーよな?」

「っ!……や、やはりそうでしたのね。今日は都合が悪いからあれだけに留めておいた訳ですか……つ、次は何をするつもりですのっ」

「別に今日したのと変わんねーよ。俺がやりたいって言った時に揉ませりゃ良いだけだよ」



疑っていたがまたもや拍子抜けする内容だった。ただ胸を触らせるだけで良いだなんて、それだけで本当に満足する男じゃないというのは嘗ての記憶から明らかであるのに……。


(ま、まあそう言うのでしたら変に食い下がる事もありませんわ……む、胸ぐらいならまだ許容できる範囲ですし、ね……)


実際、不快などより快感の方が勝ってたので存外悪くない……と、無意識にそんな事を考えてしまい、頭を振って淫らな考えを打ち消したシラギクは自分の寝床にへと帰っていった。



シラギクの後ろ姿を見送りながら、レヴィは独白する。



(この機に抱いてやっても良いんだけどよ。義務感で抱かれようだなんてじゃ燃えねーしな、その気になるまでは待つ事にすっか……さってと、この下半身の疼きはエストーラの体で存分に発散するとすっかな)



揉んでいる内に再燃した欲望は、もう来るであろうエストーラに対して思いっきりぶつけてやろうと思いながらレヴィはテントの中に戻った……。



取りあえず、その夜は夜更けまでハッスルしまくった事を追記しておく。





情事の内容が気になる方は、ノクターン版まで。

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― 新着の感想 ―
[良い点] メカ山三等兵さん、おはようございます! 50話達成おめでとうございます!いつも、レヴィたちの楽しいやり取りを読ませていただき、楽しませてもらております。 >「ああ、レヴィ。元気そうで安心…
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