ふっきりとキレる
現在、筆者はディスガイア6にハマってます。目下の目標は夜魔族を最高レベルにまで育成する事です。
でも先が長ゆす。
「……以上がわたくしと、その鬼畜変態の迎合の話になりますわ」
話をし終えたシラギクは実に清々しい表情であった。話の中では、断髪して氏族から出奔するまでに思い詰めていたのが嘘のようである。
そして、そこまで聞いてからレヴィがポンと手を叩いて思い出す。
「ああ、思い出した思い出した。確かそんな事してたっけなぁ」
「こ、ここまで聞かされてようやく思い出しましたのっ?貴方の記憶力、どこかバグってるのではありませんこと?」
「俺は過去は振り返らねー主義なんでね」
「い、言うに事欠いてっ……やっぱりこのままでは済ましておけませんわっ、再戦を要求しますわっ!」
「嫌に決まってんだろ、めんどくせー」
「むきーーーっ!どこまで人をコケにしますのーーっ!」
己のせいで不遇な目に合ったという過去話を聞いても平常運転通りのレヴィ。ここまで図太いと逆に凄いとさえ思えてくるのだから実に不思議なものだ。
「はぁ、はぁ……ともかく、わたくしの身の上話は以上ですわ」
「それで? 君はこれからどうするつもりなんだい。けじめを着けるまでは戻らないと言ってしまった以上、これで氏族に帰る訳はないだろう?」
「ええ、父上にそう啖呵を切った以上はその通りですわ……」
憂鬱な顔で項垂れるシラギク。これを見たライラットはレヴィに向き直り、形だけでも良いから父親に謝罪をして親子の中を取り持ってやれと言った。
氏族から出奔までしてレヴィを追いかけてきて、敢えなく負けてしまった彼女をこのまま見過ごす事など出来ない。
そもそもの原因はレヴィなのだからそれぐらいはすべきだと主張するものの、案の定と言うべきか全くやる気が無いように露骨に嫌そうな顔をした。
「誰が好き好んで頑固親父のケンタウロスに会いに行くんだよ。ぜってぇーめんどくせー展開になるから俺はパス」
「遊びの誘いを断るみたいに軽く拒否するんじゃないっ。大体、お前のその節操無い手癖の悪さが引き起こした事なんだから責任を取れっ!」
「お断りだね。つーかよ、仮に俺が会いに行ってそのままで済まされると思ってんのか? 絶対にひと悶着起こるだろ、それで本格的にケンタウロス族とぶつかる事になったらどーすんだよ?」
「それもこれもお前のせいだろーがーーーーっ!」
会議は踊る、されど会議は進まずみたいな事になってくる。それからも侃々諤々とした言い合いが続くが、レヴィは頑として己の非を認めようとせず話は平行線を行く。
「……もう宜しいですわよ、ライラットさん。それ以上言ったところで、その男が折れる事なんてないでしょう」
「だ、だが……貴女の今後の事も考えたら、ここではっきりと話を着けておくべきだろう」
「今後の事と言いますと……わたくしが生まれ育った氏族に帰るという事ですの?」
「それ以外に何も無いでしょう」
「いいえ、ライラットさん」
その場から立ち上がったシラギクは、勝負前とは違う清々しい表情で空を仰ぎながら話した。
「わたくしも旅に出始めた頃はそれだけを考えておりましたわ。けれど、その男の足取りを追ってあちらこちらの国を巡り歩く内に気付いてしまいましたの。今までわたくしは何て狭い世界で生きていたのかしら、と」
シラギクは生まれてからレヴィに出会うまで、氏族のテリトリー以上の地へ赴く事が皆無な生活を送り続けていた。
する事といえば、父親からの鍛練や近場への狩りぐらいでそれ以外の事は何もしなかったし、する必要性すら見出だす事も無かった。
言うなれば、彼女はアヤメ氏族という見えない枷を嵌められて生き続けたようなものだ。その事に疑問も何も感じなかったが、出奔後に多種多様な文化を直に目にした事で彼女の好奇心や探求心が大いに刺激されたのだ。
もちろん、ケンタウロス族という事だけで思慮の無い言葉を吐く者や嘲る者だっていたがそれを差し引いても外の世界へ飛び出した事は意義のあるものだった。
中でも特に食事文化がシラギクにとって大きなカルチャーショックとなった。基本、狩猟で捕った獲物の肉を焼くか炙るか干物にするぐらいの料理知識しかケンタウロス族は知ってなかったし不便という事も無かった。
だが、偶然に村を襲っていたある盗賊を撃退してそれの謝礼に村人から貨幣を得たシラギクがどう使おうかと思ってたところで食べ物を売ってる露店で使ってみたのだが……パンというものに野菜や薄い肉を挟んだ割りと簡素なものだったが、それがとてもつなく美味しく感じたのだ。
それ以来はレヴィを探し回る傍らで、各地の料理を堪能するグルメ旅をしていたのだ。
「自分の心に嘘は吐けません……様々な文化に触れてそれを楽しいと思ってしまい価値観も違ってきたとなったら、元の閉鎖的な生活には戻れませんわ」
「だが……それでは貴女の父親が……」
「たぶん問題ありませんわ。あの人の事ですからわたくしの代替えぐらいは用意してる事でしょう」
「代替え? それはつまり、貴女の代わりとなる人物という事か?」
「ええ、良くも悪くもきっぱりしてますから。わたくしがいつまでも戻ってこないと来たら、見切りをつけて養子を貰うなりして別の誰かを跡継ぎに据えられるでしょう。わたくしが逆の立場でもそうすると思いますわ」
あっさり言ってのける姿はどこか達観じみてすらいる。シラギクと父親の間は親子の関係でなく、氏族を率いる者とその後継者という間柄しか無いというのがよく分かる。
このように種族としての誇りなどに終始しがちで、家族間の情などが薄くなりがちなのがケンタウロス族の悪癖でもあろう。
「では、貴女はこれからどうするつもりなんだ?」
「そうですわね……一応の決着は着きましたのだから、鬼畜変態の事などすっぱり忘れて第二の人生を歩むという選択肢も無くはありませんわ」
「へー、そうか。んじゃ達者でな」
ごく軽い別れの挨拶をしたレヴィに、シラギクはまた厳しい顔つきに戻って鋭い視線を浴びせた。
「で・す・がっ! 反省のはの字も見られないそこの男を放っておくのは甚だ不安に尽きますっ。またぞろ異性に疎い生娘を毒牙に掛けるのだと思いますと目も離せませんわっ!……そこでライラットさんが仰ってた事を思い出しましたわ、確か敢えて側にいる事で鬼畜変態の手綱をどうにか握ろうとしてますのよね?」
「えっ、あ、そ、そうだなっ。何とか尽力しているがっ……」
実際には手綱なんて握れてないのであるが。それを自覚してるからこそ狼狽えてるのだろう。チラッとレヴィの方を見れば、非常に嫌味に写るニヤニヤ顔でいる。
「手綱を握る?寧ろ翻弄されてんだろうがw」と思ってるのが容易に分かる。実際その通りだから何も言えないのが余計情けなかった。
「ですのでわたくしもそれに加えさせて貰いますわ。二人で目を光らせておけば、いたいけな女性を襲う真似など出来っこありませんでしょうしね。お互いに協力して、この鬼畜変態を御してやりましょうっ!」
手を取って熱い眼差しで送られる視線が痛い。本当のところは抱かせてやる事で何とか性欲を鎮まらせてるのであるがそれを言うタイミングを完全に脱してしまった。
いっその事、今からでも言ってしまおうかと悩む隙を突いてか知らずかエストーラが喋ってしまった。
「つまりレヴィのセフレハーレム要員が増えたという事だね。ふふ、先輩として夜の営みの手練手管をみっちり教えてあげようじゃないか♪」
「…………は? セフレハーレム、とは何の事ですの?」
言ってしまったよこの野郎、それも堂々とセフレにハーレムのダブルパンチを。もうシラギクの事を直視できずに両手で顔を覆うライラットの心情などおくびにも掛けずにエストーラがペラペラと喋る。
「レヴィは類を見ない性豪なんだよ。当然、毎朝毎晩と発散させてあげなければならないのさ♪ 自家発電なんて味の無い事でなく、女体の快楽で彼を満足させてあげるのがハーレム要員の仕事だよ。もっと具体的に言うとだね、レヴィの【ピー】を【ズギューンッ】してあげて更に【バギュバギュンッ】として、仕上げに【ズドギュドンッ】と悦ばせてあげるんだよ♪」
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[放送禁止的用語多数につき、一部を伏せ字でお送りしております。何卒ご了承ください]
エストーラは実に良い笑顔で猥談を語った。止める余裕も無いライラットは体を丸めて縮こまる始末。
そして、余りにも生々しすぎる話でシラギクは顔から火が出るかのように赤くなった。
「は、はっ…………破廉恥の極みですわーーーーーーーーーーーっ!!!」
果たしてシラギクはハーレム要員の話を受けるのか受けないのか?