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小悪魔男子にご用心!  作者: スイッチ&ボーイ
第ニ章【イタズラ騒動とケンタウルス娘】
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悩む戦士

だいぶ間を空けてしまい、申し訳ございません……。

身辺は特に何も無かったのですが、いまいち筆が乗ってくれなくてこの様です。



村で一泊した後、レヴィたちは村民からの報酬を受け取って村を後にした。

立ち寄ったのは偶々であったが、結果的には困っていた村人たちを救った事になるので良かったと言えるだろう……最もいの一番に寄ろうとしたレヴィは下心満載であったが。




「快晴日和だなぁ、こういう日は気分も晴れ晴れとするもんだぜ。なぁ、お前ら?」



街道に戻り、先を行くなかで非常ににこやかな顔でレヴィがそう言う。

確かに空は晴れ模様、天気は快晴であり暖かな日差しもあってのんびりとした散歩気分に浸らせてくれるだろう。


ただ、後ろを行くライラットは腰を押さえながら疲れきった顔である。

その横にいるエストーラは態勢は似たようなものだが、対照的な嬉し顔だ。



「……何が晴れ晴れとだ、昨夜は本当に無茶苦茶にやってきて……お陰でこっちはまだ腰が痛むんだぞっ」



軋む腰骨を撫でながらライラットが苦言を呈する。何があったかと言うと、感謝の宴が終わった後にエストーラと纏めてオールナイトでヤられたのだ。

それもいつもより一層苛烈なもので、そのせいで二人とも今朝は腰も脚もガクガクで立つのも覚束ない程だった。



「俺のプライドに触る真似をしたてめーらのせいだろ? 本当ならまだヤり倒してーところだったのを勘弁してやったんだから良心的だろーが」

「何が良心的だっ! だ、大体あんなに激しい事をしてっ……ぼ、防音の結界を張ったからって誰かに覗かれたらどうするつもりだったんだっ!」

「そん時は誤魔化すさ。連れが盛ったもんだから致し方なくしてましたってよ」

「流石はレヴィ。素晴らしい機転じゃないか、確かにそう言えば誰であろうと引き下がってただろうね」

「お、お前らの頭はネジが外れてるのかぁっ! そんな事を言おうものなら、間違いなく節操の無い関係を持ったふしだらの集まりと思われるだろうっ!」



相変わらず不遜にも程がある。あの発情でしおらしい態度が今では夢のようだ、個人的に言うと結構良かったが。



「で、レヴィ? 君はどう考えてるんだい、あの立て看板のこと」

「あぁ……間違いなく、罠だったなありゃ」



一転して真面目顔になったエストーラの問い掛けにそう返した。



そもそも、あの村にレヴィが寄ろうとしたのは彼好みの情報が書かれた看板を見つけたからであったが……。



「復帰した村長に聞きゃあ、特段目立つ物も作ってねーし踊り子なんて洒落たもんもねーって話。そんで戻って来てみれば肝心の看板は綺麗さっぱりに消えてると来たもんだ、十中八九に誘き寄せる為だったな」

「とは言うが……誘き寄せるというのは誰をだ? 看板の内容がレヴィの気を引きそうなものばかりだったから、まさか立てた奴はお前が狙いだったとでも?」

「さーてな、証拠もねーし。何か知ってそうな悪魔はぶっ倒しちまったからな、他人に恨まれる理由も俺にはさっぱりだしよ」

「……本気で言ってるのかお前」



ライラットから言わせれば、他人に恨まれる理由の候補に真っ先に上がるのはレヴィがしでかした女性関係のあれこれである。

上手くやってきた、とは本人の言だがそれで本当に後腐れが何も無くなったとは思えない。



「前にも言ってただろう、私以前に多くの女性とその場限りの肉体関係を築いてたと。その中の誰かがお前の事を根にもって仕組んだ可能性だって当然あるだろう、何か心当たりぐらいは無いのか」

「ねーな、そもそも顔とか名前も忘れたし」

「なっ……」



何て事を言うのだろう、仮にも一度は交わった相手を綺麗に忘れるだなんて……それも悪びれなくさらりと言って。

ある種、潔すぎて呆気に取られる他なかった。

見た目相応でない精神構造らしいのは分かってたが、ここまでドライだったとは思わなかった。


「いつか報いを受ける事になるぞ」

「報いだぁ?……へっ、んなもんどーってことねーな」


比喩でなくそう言ってやった。言葉通り、ここまで女心を弄ぶような奴はいつか必ず刺される羽目に陥ると思ったのだ。因果応報というもので。

それでも態度を改めずにのうのうとしていて、ライラットはキツイ目で睨んでいたが無意識に力んでいたせいか唐突に脚がへたれた。



「うっ……あ、脚がっ」



今朝方までガタガタだった足腰に余分な力を入れてしまったようで、疲労でもぶり返してしまったようだ。

道端に座って手で揉み解すとマシになったが、復帰にはまだ暫く掛かるかもしれない。



「軟弱な足腰してんじゃねーよ」

「う、うるさいっ、こうなったのはそっちのせいだろう。あんなに激しく朝までされたら誰だって体に響くものだ」

「そういうわりにはエストーラの方はピンピンしてんじゃねーか?」

「うっ、そ、それは……」



言葉に詰まって目を逸らした。


見るからに鍛えられた体つきのライラットに対して、エストーラは女性らしさに恵まれたスタイルの持ち主。

体力があってタフそうに見えるのはライラットであるが、エストーラも意外なタフさを持ち合わせているようで今朝こそまともに出歩けない状態だったが今ではそれを窺わせないぐらいだ。


それはともかくとして、一旦の小休止に入ろうとレヴィが提案して一行はその場に留まる事になった。


珍しい気配りにこれにはライラットも驚き、その気遣いを嬉しく思った……最初は。



休憩を言い出した瞬間に、レヴィはライラットに一瞥もくれる事なくエストーラを連れて木陰の方にへと早々に行ったのだ。

何をしに行ったのかは考えるまでも無いだろう。


「あ、あいつめっ……まだ足りなかったとでも言うのかっ! あの節操無しっ、下半身野獣めっ!」


悪口が虚しく辺りに響く。少しの間はレヴィたちが行った方を睨んでいたが、その内に馬鹿らしくなってふて寝するように寝っ転がった。

空を流れる雲を眺めながら、荒れた心を宥めようとするも口からは愚痴が溢れる。



「全くあいつめ、毎日のように……わ、私としてきてそこにエストーラも加わったのに全然性欲が衰えないじゃないか。何なんだあいつは本当に……し、真性の性獣なのかっ」



普通なら枯れてもおかしくない筈なのだが、一日も間を開けずに女性ふたりと宜しくヤってる絶倫ぶりには舌を巻くしかない。

最初は自分の身で性欲をコントロールしてやると意気込んでいたが、数日経っただけでそれは早くも萎縮してきていた。


このままではいけない、と思いつつもあの傍若無人な男を御しきれる自信も霞み始めており、ライラットは項垂れた様子だ。

幸い、一人っきりになれたのでその間に何か良い考えでも纏めようかと思ったがさっぱりであった。



「……本当に……どうしたものか……」



ごろんと横に寝っ転がって思案に明け暮れるライラット。



そうしている内に時は瞬く間に進み、暫くしてからの事。彼女の耳にある音が微かに聴こえた。



「む、この音は……馬蹄か?」



起き上がって耳を澄ますと確かに聴こえた。方向はちょうど自分たちが歩いてきた方だ。早馬でも走ってきたのだろうか?

邪魔にならぬよう道端に腰掛けていた体を起こして、道の外にへと移動する。

高低差も無く障害物も無い平坦な道であったので、蹄を鳴らして駆けてくる馬の姿はすぐに見えてきた。



ところが、遠目に見たライラットは疑問を感じる。



「何か……シルエットがおかしいな?」



騎乗してるだろう人影は見えるが、その前にある馬の首が無いような気がしたのだ。目を凝らして見ても、やはり同じだった。

疾走してくる首無し馬に警戒を募らせたライラットは武器に手を掛けたが、程無くして近づいてきたそれが魔物の類いなどでは無い事に気が付く。



軍馬のように引き締まって逞しい馬体、そして本来なら首と頭がある部分には人の上半身がくっついている……それは亜人と称されるケンタウロス族の一大特徴であった。



警戒を解いたライラットであるが、なぜ人と交流がほとんど無い筈のケンタウロス族が人里に続く街道をひた走っているのかが少し気になった。

駆け抜けているところを見るに何か理由でもあるのか。

そうしていると、自分を通り過ぎようとした辺りでケンタウロスが急停止してこっちを振り返った。

栗色のおかっぱ頭をしている女性のケンタウロスはこっちに意味深な視線を送っている。



「そこの貴女……傭兵かしら?」



その言葉にライラットはムッとした。よく冒険者と傭兵を間違える輩はいるが、血生臭い荒くれと混同されるのは心外である。

モラルが低い冒険者がいるのは否定できないが。



「私は傭兵なんかじゃない、ちゃんとした冒険者だ」

「あら、そうでしたの。それは失礼しましたわ、見るからに戦闘が本職のように思えましたので」



まぁそれは否定できない。一般の冒険者と比べてもライラットはガタイが良いのだから。こういう時、鍛えるのも程々にしておくべきだったかとちょっと後悔もしていた。



「けれど冒険者だと言うのなら、わたくしには都合が良かったですわ。少しお話をさせて貰って宜しいかしら?」

「私は別に構わないが……話とは何だ?」

「ええ、ちょっとした聞き込みのようなものですわ」



パカパカと蹄を鳴らしながら脚を綺麗に畳んでケンタウロスの女性は背中に背負った得物を置いて隣に座ってきた。人の上半身は細身(一部は過剰なぐらいに出っ張ってるが)だが、馬の胴体分でかい事もあって隣に居座られていると妙な威圧感を感じてしまう。

そんな中でもライラットはこのケンタウロスは何か他の者とは違うような雰囲気があるのを察していた。


まず、目立つ程に白く美しい馬体。ケンタウロス族の事は話程度には知ってるが、このように白馬じみたものだというのは聞いた事が無かった。

大体、普通の馬のように地味な色合いという話だ。もちろんこのケンタウロスが例外という事もあり得るだろうが……何というか、仕草や話し方に上品っぽさを感じたのである。上流階級の貴婦人のごとき整った顔立ちもそれに拍車を掛けた。



「貴女、この近くで主に活動されてますの?」

「あぁ、少し前まではな。今は事情があって拠点にしてた街から離れたが」

「なるほど……ではお聞き致しますわ、実はわたくしある冒険者を探しておりますの。そいつはつい最近まである街に滞在していたのですが、今はもういないそうで同業者に話を伺いながら探しておりますの」

「自分で聞き込みしながら探しているのか?冒険者だと分かってるなら、ギルドに問い合わせた方が早いと思うが」



その方が手っ取り早い気がしたのだが、それを言うとケンタウロスの女性は顔を険しくさせて怒気を漲らせた。



「いいえっ、あの男はどこのギルドにも所属せずにそこらをぶらぶらほっつき歩いておりますのっ!ですから、こうやってわたくしが直々に方々を駆け巡りながら探し回っておりますのにっ……ああーっ、腹立たしいっ!腹立たしぃですわっ、このわたくしにこんな労力を無為に使わせるあの男が憎たらしくて仕方がありませんわっ!見つけた暁には、ギッタンギッタンに叩きのめしてズタズタのボロカス雑巾にしてあげますわよっ!」



今日日使われてないような言葉を交えながら怒り心頭になって、持っていた先がサーベルのようになってる風変わりな槍を地面に何度も突き刺している。

余程、腹に据えかねてるらしいがそいつに何かされたのだろうか。



「ま、まぁ事情は分かったから落ち着いたらどうだっ。力になれるかどうかは分からんが、私も助力するし……」

「……こほん、失礼しましたわ。あの男が絡むと、嫌でも感情が昂ってしまいまして」

「それで、その冒険者はどんな奴なんだ?」



ケンタウロスの女性……マルセリーナ・シラギクが語るところによると次の通りであった。



・見た目は可愛らしい容姿をした黒髪の少年。

・冒険者としては低ランクに属している。

・どこにも属していないフリーで幾つもの国を経由してるらしい。



……聞いている内にだんだんとライラットの顔色が曇ってきた。もしかしなくても、今はここにいないがあいつの事なのではと思い始めているのだ。

黒髪自体が珍しいというのに、そこに可愛らしい容姿の少年と来れば嫌でもあいつが思い浮かんでしまう。



「とまぁ、大まかですけれどこれらが手がかりになっておりますの……って、あら?どうしましたの、顔色が優れないように見えますけれど」

「えぅっ!?い、いやっ、別に何でも、ないぞっ……あ、あぁそうだ、名前とかは分かっているのかっ?」

「もちろん、一時も忘れた事はありませんわ。その男の名は……」



この時、ライラットは心の中で祈るようにしてどうか自分の予想が外れてくれますようにと願っていたがそれは無惨にも的中した。



「レヴィ・ベルラっ。わたくしにとっては怨敵といっても差し支えない輩ですの、草の根を掻き分けても絶対に見つけてやりますわっ!」



心の中でライラットは崩れ落ちた。もうこれは間違いなく確定的。

シラギクが探している男というのは、自分の純潔を奪った憎たらしいあんちくしょうのレヴィに他ならない。

そして彼女がこれだけ憤慨してるとこを見るに……恐らくはシラギクもレヴィの毒牙にやられてしまったのだろう。



(ま、まさか先刻に言っていた報いがこんな早くに実現するだなんてっ……ていうかあいつ、亜人でもお構い無しなのかっ!もう獣だっ、獣っ!人の皮を被った卑しい獣だ、あいつはぁっ!)



表面上はどうにか平静を取り繕ってレヴィに対して鬱憤をぶちまけていたが、何かを感じ取ったかシラギクが訝しい目でライラットを見据えた。



「……時に貴女、レヴィ・ベルラと何か関係がおありかしら?」

「ひゅっ!?……い、いや、無いっ、無いぞっ。そ、そもそも初めて聞いたからなそんな名前はっ」



咄嗟に誤魔化してしまって悪手だったかと悔いたが、理由はどうあれまさかレヴィの愛人なんですなどと口が裂けても言えない。

しかし、元々ポーカーフェイスや腹芸が得意という訳ではないライラット。

動揺による挙動不審で裏返った声にひきつった顔と、それらがますますシラギクに疑念を抱かせてしまうのだった。


「本当に知りませんの?」

「ほ、本当だっ、誓って嘘など言っていないっ」

「本当の本当に?」

「本当の本当の本当に、だっ!」


しつこいぐらいの念押しをはぐらかそうとしてる。とは言うものの、視線は定まっておらずやけに脂汗を掻いてるところが怪しいことこの上ないが悲しいかな本人は気付いてない。



「そう、なら信じると致しますわ」

「そ、そうかっ(ふぅー、何とか誤魔化せたかヒヤヒヤしたぞ)」

「ところで話は変わりますが、レヴィという男はとんでもない女好きですの。ですが、貴女のような筋肉質な方には食指も動かしはしないでしょうね」

「いやそんな事は無いぞ。あいつと来たら、私のような女も手籠めにしようとして…………あっ」



痛恨のミスであったっ!

自然に話を振られたライラットはあっさりと関係を自白してしまった。巧妙な誘導尋問に逆に感心してしまう有り様だった。



「やはりっ……知っておりましたのね、あの男の事をっ!さぁ、白状なさいっ、女の敵の協力者っ。あの鬼畜エロ魔神はどこにいやがりますのっ!」

「い、いやちょっと待ってくれっ、話を聞いてくれぇぇぇぇぇっ……!」





青空の下で修羅場じみた光景が拡がった……。




ケンタウロス娘=胸部は豊満。


シラギクの人物像なんかは、さるお方に影響されたと言っても過言ではありません。え、さるお方とは誰かって?

モンスター娘界のレジェンドこと、オカヤド先生にございまする。

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[良い点] 新作、楽しく読ませていただきました! >モンスター娘界のレジェンドこと、オカヤド先生にございまする。 私も、オカヤド先生の作品は大好きです!一番好きなのは、ラクネラです。あんな風に、ツ…
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