ショート劇場 其の一
短めのギャグを詰めた話になります。漫画で言う、次話の間や巻末に入ってる四コマ漫画的なものです。
『薄着の意味』
不純な動機に理由で仲間入りとなったエストーラ。
言動、性格共に癖はあるがその実力は確かなのはライラットも認めるところ。
銃を使っての戦闘スタイルは中距離と遠距離戦に即しており、前衛をレヴィとライラットが務めれば隙も失くせるし、援護射撃によるサポートも可能なのも良いのだが。
「聞こうと思ってたんだが」
「何だい?」
「どうしてジャケットのすぐ下がビキニだけなんだ」
敵の攻撃を受けた時にそれではダメージが大きかろうと思っての事だった。それに対してエストーラが答えたのは。
「まぁ私は射撃戦が基本だから、あまり着こむ必要が無いからだよ……けれど、一種のスリルを味わってる側面も大きいかな」
「スリル?敵の攻撃に晒される事がか?」
「それも無きにしも有らずだけど…………もし人目があるところで破られてしまったらという事を考えたらね、不思議と興奮してきてしまうんだよ♪他人に軽々しく肌を見せてしまうというのがこう、ぞくぞくっとしてしまうと言うかねぇ、ふふふふふ♪」
「……………………」
露出狂の疑いが発覚したが、ライラットはただただ無の境地に至ったような顔をしていたそうな。
『思考は人それぞれ』
「しかし、君も君で見ようによっては刺激的な格好をしてないかい?」
「どこがだ。別におかしな服装じゃないだろう」
ライラットはきっぱりと言った。自分の格好は冒険者としてはごく普通の物であるのだ。刺激的だ何だのとかいう部類とは縁が無い姿であると。
「いやいや、だってそんなに見せつけてるじゃないか……腹筋を」
「腹筋?まぁ……確かに目につくだろうが、だから何なんだ?」
インナーなので立派に割れてる腹筋は見えるが、それが何だと疑問符を浮かべる。
「君もまだまだ世間というのを知ってないね」
「どういう意味だ?」
「世の中には君のように腹筋が割れた女性がストライクゾーンていう趣味嗜好の者もいるんだよ」
「はぁ?何を馬鹿な、そんな嗜好してる男なんている筈が無い。それに筋肉を見るのが好きなだなんて仮にあっても理解しがたいな。見て何が楽しいんだ」
彼女は知らない。この広い世の中には筋肉フェチという拗らせた性癖の持ち主が存在するという事を。
また創作の物語においてもそのようなキャラは多く、筋肉女子をメインとした漫画やアニメまであるというのを。
「俺は楽しいと思うけどな」
「レ、レヴィっ?た、楽しいって何がだっ」
「俺とヤってる時に腹筋をぴくぴくさせてるのが楽しいって事だよ」
「あぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!言うなぁーーーーーーーっ!!」
知りたくなかった事を知ったライラット、それからは行為の時はさりげなく腹筋を隠すようになったそうな…………無駄だったが。
『不思議な袖』
アンジェリカの袖は不思議な袖。必要な物が欲しい時に、何でも出してくれる魔法の袖だ。
「あ、しまった。地図を忘れちまった」
「大丈夫ですワンズマンさん、どうぞ」
ある時は地図を取り出し。
「ふぁっ!?しまったです、愛用のスコップを置き忘れてきちゃったです!」
「ここにありますよフィーロ。出かける前は身支度をしっかりしてください」
またある時はスコップを。
「待機してる間に腹拵えをしておきましょう」
袖を探ればあら不思議。瑞々しく新鮮な食材が綺麗なままで次々と出てくる。
「……前から気になってたんだが、アンジェリカの袖の中ってどうなってるんだ?」
「別に普通ですが」
「そんなの嘘ですよ。色々と詰め込んでるようには見えないのに、ホイホイと色んなのを出してくるなんておかしいのです。何か種があるに違いないのです」
どうにも気になるワンズマンとフィーロはこぞってアンジェリカに詰め寄って謎を解こうとした。
「仲間のよしみなんだし、聞かせてくれねーか?」
「そうですよ~、このままじゃ気になって夜も眠れないのです。知~り~たいっ、知~りたいっ、あそ~れ、知~りたいっ♪」
「……お二方は……ご存じですか?」
アンジェリカは両目を見開きったホラーのような顔でゆっくりと喋った。
「知らなくて良い事を知ろうとしたばかりに……いつの間にか消えてしまった、なんていうお話があるのを?」
「……い、いや」
「し、知らない、です」
「そうですか……まぁ別に深い意味はありませんが、私の袖の秘密を知りたいというなら…………その事を踏まえた上でお聞かせしても宜しいのですが……如何で?」
「すまん、止めとく」
「あ、あたしも止めとくですっ」
「そうですか……懸命なご判断ですよお二人さん」
結局、どうなってるのかは本人以外誰も分からなかった。
これからも時々、差し込んでいきます。