街に到着、猫かぶり再び
レヴィとライラットがレスタードより出発してから5日後……道中では色々とトラブル(盗賊の襲撃、料理関連の揉め事、あと性行為をさせろ云々など)があったものの、然したる事もなく次の街にへと到着できた。
まぁまぁそこそこに賑わっていそうな街である。と言っても、二人ともにこの街……ウエストピークというところに明確な目的など無いので長居する必要など無かったのだが。
片や、己の容貌に引っ掛かる女を探すだけであるし。片や、そういう行為を阻止しようと付きっきりで歩くぐらいだ。
そもそもライラットは観光など楽しむ気は更々ない。自分の目的はこの腹黒男の毒牙から初心な女性を守る為に住み慣れた街から離れてまでくっついてきたのだから。
変な行動しないか見逃さぬよう、少し前を歩いてるレヴィを凝視していると不意にこちらに振り返った。
「どうしたんですか、ライラットさん?そんなに僕のことを見てきて……ちょっと背中がムズムズしちゃいますよ♪」
ニコッと煌めく笑顔を振り撒けながらそう宣ってくる。初対面の人間だったら、どきまぎしてしまう屈託無く爽やかなスマイルだが裏の本性を知ってるライラットから見たら茶番も良いところである。
この男、街に入るや否やライラットが出会った時のように純真無垢を装った性格に早変わりしたのだ。人間というのはここまで瞬時に表情だけでなく声色、雰囲気に至るまでを切り替えできるものなのか。その手管は一流の役者を思わせる。
見ていたら騙された時の苦い思い出が浮かんでムカムカしてきたので、ヒソヒソ声ですぐに止めろと言ってみたのだが。
(あ~?俺が猫被ろうが被らまいが俺の勝手だろうが。あんま口出しするようなら大声で叫んでやろうか?実はこの厳つい女戦士に弱みを握られて良いように扱われてるんです~っ……てよぉ♪)
聞いた瞬間に脳天をかち割ってやりたい衝動に駆られたのは言うまでもない。だがしかし、第三者から見れば自分たちはどう写るのかを考えた。
一方は性格は腹黒いが可愛く華奢で守ってあげたいと思わせる美少年。一方はそんな美少年を手籠めにしてそうな屈強な外見の女戦士。
ここでレヴィがさっきの台詞を大声で叫ぼうものなら、群衆はどっちの言葉を信じるのか想像に難くない。大衆は自分の方を味方するに決まってるだろと暗に言うように他の人には見えない角度で黒い顔を現してニヤつくレヴィが余計に苦々しく思う。
そんなクソ最悪な野郎だと言うのに、さっきからレヴィに声を掛ける女性が後を経たないのも苛々の種だった。若い女性から妙齢の女、果ては同業の冒険者と思しき者たちまでナンパのように声かけしてきている。
もちろん、全てお断りさせてもらった……レヴィでなく、ライラットが威圧しながらの強制拒否だが。
ガタイの良いキツめの女戦士に睨まれれば、余程に図太くなければ立ってすらいられないだろう。実際ここまで十数人の女が寄ってきてたが、ライラットの鋭い眼光の一睨みで散っていった。冒険者でも例外無くである。
そうして歩いてると、唐突にレヴィが含み笑いをした。
「……ふふ♪」
「何を笑ってるんだ?」
どうせろくでもない事を考えてるんだろうと思っていたら、サッと耳元に寄って囁いてきた。
(そうやって他の女から遠ざけようとしてるところがよ……恋人を取られたくなくて焼きもちを焼いてる奴に見えたんだよ♪)
そう言われて、ライラットの顔がボンッ!と真っ赤に染まった。確かに客観的に見たらそうなるかもしれないが、断じてそんな事は無いと反論する。
(っ!?……ば、バカっ、誰がお前なんかに焼きもちなどっ……!)
(まぁ焼かれてもウザってぇだけだけどな、正直そんな女って重いしよ。つか、めんどくせーだけだし)
焼きもちを焼く女性をウザいや面倒くさいの言葉で片付けた。カップルだったなら即破局ものの発言である。
(それとな。あんま俺の後ろで睨み効かせんじゃねーよ。せっかくのカモが逃げちまうだろ)
(そ、それを阻止する為にやっているんだろーがっ!良いかっ、私の目が黒い内は生娘に手を出すような不純な真似は絶対にさせんからなっ!)
(ほー、そうかいそうかい……んじゃあ、その分発散できない性欲は遠慮無く、てめーにぶつけて良いって事か?)
生々しい事をボソリと言われたライラットの顔が更に茹で蛸のように赤くなっていき、まだまだ初々しい反応にレヴィがほくそ笑む。
ここに来る途中でも自分のを慰めさせてやったのだが、熟練には程遠いながら拙い動きにはまた違ったものがあり、大いに楽しめたもんである。
これだから処女と体を繋げるのは面白いのだ……ただ、良いと言ってもたまには変えないと飽きが来るものだ。ステーキが好物でも、毎日食ってれば飽きてくるのと同じ感覚であった。
なので、適当にぶらついた後は良い女の品定めに走る事とした。もちろん口喧しいライラットを欺くなり何なりして。
なるたけ、引っ掛からない線で書いていきます。