裏の本性は黒かった
一部にR15的描写があります※
時は少し遡り、ライラットが決死の思いでレヴィに胸の内をさらけ出した昨日の夜のこと。
「ライラットさん……そこまでぼくの事を想っててくれたなんて嬉しいです」
「あ、レ、レヴィ……」
抱き締めてくれたレヴィの優しい語りに、ライラットは熱が上がりすぎて頭がクラクラし始める。
これは脈ありなのか。そう考えて良いのか。
期待の眼差しを向ける彼女だったが…………面を上げたレヴィが言葉を放った瞬間に甘くなりかけてた空気は飛んだ。
「……んじゃ、お望みどおり骨抜きになるまで可愛がってやるぜ、ライラット♪」
「へ?え?」
可愛がってやる?何かおかしい単語が聞こえた。それに口調だって荒っぽくなったし、心なしか纏ってる雰囲気にも違いが出てるような気がする。
動転するライラットをニヤニヤと見るレヴィに、彼女が見慣れた普段の気の良さの笑顔は皆無で嫌らしい欲望が見え隠れしてるみたいにまで思える。
一体何が起きたのか理解しようとしていたら、手首の辺りにキツい感触が走った。気づくと後ろ手にされた腕が縛られたように満足に動かせない事になってるのに狼狽え、首だけを向けるといつの間にやら布切れで縛られていたのだ。
「なっ、こ、これは一体っ……レ、レヴィっ、悪い冗談は止めるんだっ。これを解いてっ……」
「ギャーギャー、騒ぐなよ。ほらベッドに横になれっつーの」
「う、うわぁっ!?」
脚払いされてベッドに倒れ込む。いきなりで腕が縛られてるとは言え、自分より遥かに小柄で華奢なレヴィに一瞬で体勢を崩された事に驚きが隠せなかった。仰向けになったまま固まってると、イキイキした感じでレヴィが服を脱がしに掛かってくる。
ズルッとインナーが捲られて割れた腹筋が露になって、あわあわしながら止めようとした。
「ま、ままっ、待てっ、ちょっと待てぇっ!?」
「あんだよ。この俺が抱いてやるってんだぜ、今さらやっぱ無理ですとか聞かねーよ」
「ひ、ひやぁっ!」
インナーの上から胸を掴まれて、甲高い悲鳴が出てしまった。なかなかの大きさを誇る胸だが、もちろん他人に触れられる事は初めてで恥ずかしさが募るが、掴んでるレヴィ(?)は何でもなさそうに感触を見聞している。
「ほぉほぉ。意外と柔らけーのな、ムキムキの体してっから硬いもんだと思ってたんだけど……これなら十分に胸でも楽しめそーだぜ♪」
「や、やめっ……揉まないでくれぇっ!お、お前、本当にレヴィ、なのかっ!?」
胸を揉みしだかれながらもライラットは真偽を確かめようとしたが、レヴィ(?)は素っ気ない態度で返す。
「何を聞いてんだよおめー。俺は正真正銘におめーが惚れたレヴィ・ベルラその人だよ」
「う、嘘だっ、レヴィがこんな……こんな事する訳っ……!」
信じられない形相でライラットは喚く。あの優しくて清純潔白を地でいく可憐な少年がこんな無理矢理な事をしてくる筈が無い、と思おうとするがいま目の前にいる彼にはそんなものなど無くて、自分を動けなくさせて無理矢理に事に及ぼうとしている。
「残念ながらこっちの俺が素なんだよ。普段の良い子ちゃんぶりは演技って奴さ♪おめーみたいな女を引っ掛ける為のな、実際にまんまと掛かってくれて俺的には有り難かったぜ」
「そ、そんなっ……」
純真無垢で他人を気遣いできる謙虚な姿勢の少年という、この最近で定着していたレヴィのイメージがガラガラと音を立てて崩れていく。普段からライラットに見せていた愛嬌溢れる態度は見せ掛け、この打算的で粗野な性格こそがレヴィの本質であったのだ。
裏表の激しさに付いていけず呆然とするライラットを見下ろすレヴィは、さながら生け捕った獲物を喰らおうとする獣のような顔をしていた。
「とは言え、意外と奥手なとこには参ってたぜ。俺の方から露骨なアプローチはやりにくかったからよ。お陰さまで性欲を抑えるのに苦労してたけど、やっと女を抱けるってのは嬉しいねぇ♪……俺の手で慰めんのはつまらねーし味気も無かったからよ」
膝立ちになったレヴィを見たライラットの顔が強張った。ズボンの一部を大きく盛り上げさせるそれが男の欲望なのが分かり、拒否感と嫌悪感に苛まれる。
「い、嫌っ、嫌だ、止めろぉっ!……そ、そんなのを近付けるなぁっ!」
「びびんなって。レイプなんて趣味じゃねーから痛くはしねーよ。代わりと言っちゃーなんだけど、滅茶苦茶に乱れるぐらいにハメ倒してやるからな♪あ、声の方は遠慮無く出して構わねーぜ。防音魔法を部屋全体に張ったからどんだけ喘いでも聞こえねーからな……そんじゃあ、たっぷり楽しむとすっか」
「あっ、あっ、嘘っ、止めてっ……あーーーーーーーーっ……!」
混乱がまだ収まらない中で、ライラットはその純潔を散らしてしまった……今の今まで猫を被っていた鬼畜レヴィによって。
……………………………………そのまま朝方まで抱き潰され、ライラットは全身を色々な液で汚された酷い格好で虫の息のような状態になっていた。
「……ぁ…………うぅ……」
「はーーっ、スッとしたぜー♪この頃はヤれなくて溜まってたからなぁ。まだ物取りねー気分だけど、取り敢えずこんくらいで勘弁しといてやるよ。そんじゃあ、俺は今日でこの街からおさらばするから、あばよ」
スッキリした様子で身支度を整えたレヴィは突っ伏して動かないライラットをそのまま置き去りにして出ていってしまったのだった……。
以上が昨夜の告白から、今朝方までにあった顛末である。
△ △ △
そして場面は現在に戻る。
「……よ、よくもっ……よくも私にあんな辱しめを受けさせてくれたなっ!あんなっ、強引で無理矢理な行為を強要してっ……あの後の後始末まで大変だったんだぞっ!」
今朝まで散々に抱かれてしまったライラットは酷く乱されてしまったものの、記憶は混濁してない状態であった。意識がハッキリとしてからレヴィにされた所業を思い出して、このまま逃がしてなるものかと気を抜けばへたる足腰を奮い立たせて情事の後を悪戦苦闘しながら片付けた。
そして街中で聞き込みをしつつ、まだ出ていっていない事を確かめて唯一の通用門を見張り続け、のうのうと出てきたところで追いかけてきたのだ。
醜聞を知られたくなかったので、人気が無くなる頃合いを見計らって姿を現した訳である。
怒り心頭のライラットはバトルアックスを突き付けて言ったが、当の本人はどこ吹く風と言わんばかりに飄々とした態度である。
「あー、そうだな。ちょっくらノリすぎて、出しすぎちまったわな。けど心配すんなよ、ちゃんと避妊魔法は掛けてっから妊娠の心配はゼロだぜ。俺は後腐れない関係に留めておきたいからな」
「あ、当たり前だっ!誰が貴様みたいな腹黒男の子なんか授かりたいものかっ、こっちから願い下げだっ!」
ガルルと今にも噛みつかんばかりの形相だが、レヴィは涼しげな様子でニヤついた笑みを崩そうとしない。ますますいきり立つライラットは、本性を現したレヴィに爆発した感情をぶつける。
「私のっ……初めてをあんなレイプで汚しおってっ!絶対に許さんぞ貴様ぁっ!」
「レイプだぁ?何を被害者面に言い方してんだよ。おめー、言葉の使い方が分かんねーのか?」
「な、何だとぉっ!?貴様っ、私をおちょくるつもりかっ!」
憤慨すると、やれやれといった感じで諭すような口で言ってきた。
「良いか?レイプっつーのは、暴行とか脅迫とかそんなんを掲げて無理矢理にヤる事を言うんだよ。あの時、俺はおめーに暴力とか奮ったか?何か弱みでも握って精神的に抵抗できなくさせたか?どーなんだよ、そこんとこはよ?」
思わず口ごもるライラット。確かに暴力はされておらず、精神的な縛りもされていないのは事実であった。
「そ、それはっ……確かにされていないがっ……けど私の手を縛っただろっ!それに合意も無しに、あんな真似をするなんて道徳が許さないだろがっ!」
「ありゃプレイの一環だよ一環。それにあんなもん、ちぎろうと思えば出来ただろーが」
確かにライラットの腕力なら引きちぎるのは容易かったかもしれないが、あの時は気が動転しまくってたし、すぐさまにレヴィの愛撫が始まってしまったのでそんな余裕などまるで無かった。
「おまけに道徳だぁ?……眠てー事を言ってんなよ。昨今は日銭を稼ぐ為に往来で娼婦が明け透け無く客引きやってるし、娼館だって小さな街にだってあんだぜ。そこで働いてる奴や通ってる奴にも道徳云々の説教かます気かよ?」
「論点をすり替えるなっ!今は貴様の悪質な手口を糾弾してるんだっ」
「悪質、悪質って……人の事を表面でしか見てねーからコロッと騙されるんだよ。文句言うなら、浅はかな自分に言えよ……それにおめーだって良い経験になったろ?自分で言うのも何だが俺ってテクニシャンだからな、処女だったのにあんだけ乱れて気持ち良くなれたんだから得した気分だろ♪」
言われて昨夜の痴態を思い出してしまったのか、ライラットの顔色が真っ赤になった。もう恥ずかしさと怒りがない混ざって、頭が爆発してしまいそうだった。
わなわなと奮えてると、おもむろにレヴィが立ち上がってそれまで向けてなかった目線を初めて合わせてきた。
「そんで?……ここまで来て俺に文句を言っただけで終わるつもりねーだろ。俺を成敗でもすっか?それともレスタードに戻って、俺の本性を暴露でもしてみるか?まぁ、あんな上玉も稼げる依頼も無いつまらねー街には金輪際行くつもりねーけど」
自分なりに愛着がある場所をつまらない呼ばわりされて、ライラットの頭に更に血が昇っていく。ぶん殴りたい衝動を辛うじて抑えながら、彼女は詰問した。
「それよりもまず聞かせろ……貴様は私にやったような事を何度も繰り返してきたのか?」
「あ?そーだなぁ……覚えてる範囲だと、両手両足でも足りねーぐらいにはやってきたぜ。それがどーしたんだよ?」
悪びれもなくしれっと喋ったその態度には反省とかそんな色が全然無かった。剣呑な表情を引き締めたライラットは、びしっと指差すと高々に宣言した。
「なら…………今日から私は貴様の側でずっと添い遂げてやるっ!」
「はぁっ!?何なんだ急にそれはよ」
「ここで貴様の所業をとやかく言ったところで、止める気とかそんなのは全く無いんだろうっ。だったら、私のように毒牙を掛けられる人がもう出ないように付きっきりで監視してやるという事だ、貴様が拒否して逃げても絶対に離れんからなっ!ギルドには除籍の届けを提出したから、私もフリーの身分だ。遠慮無く付いていってやるぞ」
これがギルドに除籍願いまで出した理由だった。自分を謀ったレヴィのやり方は妙に手慣れたものだと感じていたので、恐らくは同じことを何度も繰り返してきた常習犯だと思ったのだ。案の定、それはぴったり当たった。
口で言っても止めてくれるような性格じゃなさそうなのは昨晩の時点で分かっていた。だから、自分のように処女を弄ばれる女性をもう出さない為にもこの猫被り男を四六時中でも見張らなければならない。
知り合いも多いレスタードから離れるのは寂しい気持ちもあったが、それ以上にこんな男を野放しにしてる方がいけないと思ったライラットの決意は固かった。
「鬱陶しい事を考えやがって……言っとくけどよ、俺はそういう風に束縛されんのが嫌いで…………待てよ、そうだなぁ……」
ライラットの考えに露骨に嫌そうな顔で拒否ろうとしたが、途中で何か思案するように考え出した。てっきり反論の嵐が起こるものだろうと身構えてた彼女にしてみれば、拍子抜けしてしまったがこの男の真の性格を知った今だと安易に安心は出来ない。
その予想は辛くも当たってしまった。ニヤリと意地悪い笑みを浮かべたレヴィが交換条件を出してきたのだ。
「へっ、窮屈になるだろうが受けてやっても良いぜ、あんたの提案をよ……ただし、ひとつばかり条件を付けさせて貰うぜ」
「……な、何なんだその条件っていうのは」
どんな条件を出す気なのかと身構えていると、とんでもない事を言い出した。
「俺の旅に動向させてやる代わりに……俺の愛人になるんだよ」
「なっ!?……あ、愛人、だとぉっ!」
ふしだらな言葉に目を見開いて隠しきれない程に動転したライラットを、見世物を見るかのようにしながら続けた。
「そう、同行してる間は俺の愛人扱いさせて貰うぜ。最も公に言いふらすつもりはねーし、普段はただの旅仲間ってスタンスを貫いてやるからそこんとこは安心しておけよ……夜の世話はしっかりやって貰うけどな」
夜の世話という意味が何なのかはそっち方面の知識に疎いライラットでも察した。要するにムラムラした時は好きにヤらせろと言ってるようなもんだった。
これまで冒険者稼業一筋に仕事をしてきて浮いた話も無かった彼女に、これは些かよりも重い難題であった。
(な、何て恥辱なんだ、こんなゲスい男の愛人になるだなんてっ……だがっ、ここで私が拒否したら恋愛に初心な人を手込めにする鬼畜男を好き勝手放浪させる事になる……!)
誇りや生きざまをかなぐり捨てて、この先自分の人生の中で最大の汚点になるだろう条件を呑むか否か…………葛藤の末にライラットが出した答えは。
「わ、分かったっ……愛人にでも……何にでもなってやるともっ!」
この瞬間、レスタードで幾多の武勇を誇っていた重戦士の女冒険者ライラットは猫被り腹黒鬼畜少年のレヴィの愛人にへとなってしまったのだった……。
……そしてレヴィに翻弄されながら、怒涛の旅が始まる事にもなるのだがこの時はそんな壮大な事が起きるなどとは露にも想像していなかった。
「そんじゃ行くぞ、俺の愛人一号」
「そ、そんなあだ名で呼ぶな、馬鹿っ!」
「お、主人に口答えか?……なら、ペナルティだな、ほれっと♪」
「ひやぅっ!?し、尻を撫でるなクソ馬鹿ーーーーっ!」
旅路に不安一杯すぎるライラットだった……。
投稿後に章作成を予定してます。