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62 解決策はすでに示されている。

 

 楠坂の体が魔王に乗っ取られた。


 俺がその現実を飲み込むまでに、二つの剣は何度かち合っただろうか。金属音がなくてはぶつかったことも分からないうえに、その音だって十重二十重になっていてはっきりとしない。


「うへぇ……ヤバいですね。ヤバい戦いですね」

「魔王に乗っ取られた方、底上げされているとはいえ、えげつない身体能力してますね」

「それについていくハンクス様もハンクス様ですが」


 楠坂の身体能力が“えげつない”ことは知っている。強豪剣道部の主将をずっとやっていたうえに、バスケ部の助っ人に呼ばれてMVPになるような主人公気質のやつだから。

 でも、まさか、その能力がこんな形で発揮されるなんて!


「……」

「セイリュウ様?」

「息してますか?」

「お気を確かに!」


 チビ神官たちがわたわたと俺の足元にまとわりついてきたのが分かったが、俺は反応できなかった。脳内が混乱しきっていて、ぐっちゃぐちゃのぐちゃで、どうしようもなかった。


 魔王は、倒さなくてはいけない。

 そのために“実体を持っている”今を逃す手は無いのだろう。

 けれど、そうしたら、楠坂が犠牲になってしまう。


 今、二人の戦いは拮抗しているように見える。

 けれど、粘れば粘るほどハンクスが不利になっていくのは明らかだ。どんなに強靭な騎士だって、人間であることは覆せない。いつか必ず限界がくる。周りを取り囲む魔物の数もどんどん増えているみたいだから、ベスターとピットの防衛線もいつか崩れるだろう。

 そうしたらハンクスは殺されて、ベスターもピットも神官たちも、この世界のすべての人たちも殺される。


 ――……どうしよう。


 俺は、どうしたらいいんだろう。


 俺に出来ることなんて何も無いって分かっている。分かっているけれど、それでも、ハンクスも楠坂も、死なせたくない。この世界を壊したくない。誰も死なせたくない!

 誰も死なせずに済むなら何だって出来る――でも、俺に出来ることって、何があるんだろう?


「セイリュウ様……」


 立ち尽くす俺を心配げに見上げる、三つの同じ顔。

 その向こうに、場にそぐわぬビールの缶が転がっていて、それがさっき放り出した短剣に当たって止まっていた。


「――あ、そっか。分かった」


 すとん、と解決策が腹に落ちた。なんだ、あったじゃないか、俺に出来ること。俺にしか出来ないこと。そして誰も死なせずに済む方法が。

 俺は神官たちを押しのけて、缶ビールと短剣に近寄ると、手を伸ばしてそれを拾った。 


「セ、セイリュウ様?!」

「一体何を」

「お考えで――?!」


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