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52 王様と仲良くなっておくとお得な感じがある

 

 階段は幅が狭く、急角度で、ほとんどハシゴみたいだった。

 どうにか登り切ったところにあったのは、埃っぽい小部屋。小さな嵌め殺しの窓から日の光が射し込んでくる以外に光源はない。薄暗くて息が詰まる。ちょっと踏み込むとミシリ、と床が軋み、埃が舞った。


「ふむ。そういえば、外から見ればあるのに、中から探すと見つからない窓がある、と噂になっていたな。ここがそれか。ふむふむ、道理で」


 王様は長いローブの裾が汚れることなんてちっとも気にせず、部屋の中を歩き回った。意外と愉快なおっさんなのかもしれない……。


(しっかし、まぁ)


 俺はぐるりと部屋の中を見回した。家具のたぐいは何も無い、殺風景な部屋。


(……ゲームとまったく同じなんだよな……)


 ちょっと不可思議な話である。どうしてここまで同じなんだろう?


「おっ、ヒジリオ殿、何かあったぞ!」


 弾む声に呼ばれて慌ててそちらへ行く。

 王様が手に持っていたのは、これまた古びたノートだった。

 慎重にページを開けた王様が、眉を顰めて唸り声を上げる。


「む、読めんな……なんだこれは。文字なのか?」

「どれです?」


 ひょいと渡されたノートに目を走らせる。


『I'll tell you about the truth of this world.』


 英語だ。


(そうか、英語はこの世界にないのか……!)


 ということは、このノートはもしかして、初代国王が書いたもの……? いや、それにしては、筆跡が初めて英語に触れた中学生みたいに角張っていてぎこちない。その分丁寧で読みやすいからいいといえばいいんだけど。筆記体だったらツラいし。

 答えはすぐに出てきた。


『私は三人の女神によって召喚され、初代国王となった者だ。ヒジリオよ、よくぞこのノートを見つけてくれた。私は君を救うために、女神に隠れてこのノートを残す。部屋の外へは持ち出さないようにして、最後まで読んでほしい』


 なんだかちょっと不穏な空気だ。でも。


(俺を、救うために? それって――)


 それって、もしかして、この窮状をどうにかする方法を教えてくれるってことだろうか?


「どうだね、ヒジリオ殿? 読めるか?」

「はい、読めます」


 俺は飛び上がりたくなったのを抑えて冷静に答えた。


「そうか! それなら、書斎のテーブルでもどこでも好きなところを使って読むといい。できれば内容を教えてくれると助かる」

「はい。でもあの、このノートは部屋の外へ出すなって書いてあったので」

「なんと。ではこの場で読むのか? ……掃除が必要だな。よし、あとで信頼のおける者を寄越そう。それと、ランプと椅子がいるな。しばし待たれよ」


 王様はひとりでぱっぱと話を決めると階段を下りていってしまった。うーん、なんだか、けっこう人の好いおっさんのようだ。事態が事態じゃなければ仲良くなれたかもしれない。


 残された俺は、とりあえず窓際に寄って床にあぐらをかいた。

 ノートは半分ほどまでぎっしり埋まっている。

 あとは難しい単語が出てこないことを祈るばかりだ。ある程度までは東欧史のゼミで鍛えられたから大丈夫だと思うけれど。


(嘘から出た(まこと)、ってこういう時に使うのか……なるほど)


 ハンクスたちへの気まずさが少しだけ薄れて、俺はさっそく救われたような気持ちになった。ありがとう初代国王!

 

 

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