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47 そういやログボ途切れたな……。

 

 ピットと庭園を眺めながら、あの木の形がおいしそうとか噴水が秘密の部屋に繋がってそうとか適当なことを言って盛り上がっていたら、ノックの音が聞こえた。


「はーい」


 返事をして隣のリビングっぽいところに行き、廊下へ繋がる扉を開く。

 と、お城の使用人って言えばいいのかな、いかにもな感じの制服を着た女性が立っていた。


「ヒジリオ様、陛下がお呼びです」

「陛下……って、王様ですか?」

「ええ。ご案内いたします」


 パッと駆け寄ってきたピットが「ボクもついてくで!」と足にくっ付いた。こっちから頼もうと思っていたからぶっちゃけ超ありがたい……。

 俺はきちんと手袋をしていることを確認してから、使用人さんの後について部屋を出た。



 白亜の宮殿は中身もそんな感じだった。俺は石に詳しくないからこれが何石なのかは分からないけれど、床も壁も天井もちょっと灰色がかった白い石でできていて、切れ目はまったく見えなかった。

 窓にはステンドグラスがはめ込まれていて、廊下に色とりどりの模様を映している。めっちゃ綺麗。

 世界滅亡の時には一部の人間を選別・収容して立てこもりそうだな、なんて思ったのは秘密である。


「はぁーさっすが、偉い豪勢やなぁ。なんぼかけたんやろか」

「わかる、そこ気になるよな」


 ピットの感性は庶民の味方だった。心強い。



 近所のコンビニに行くよりも長い距離を歩いて(体感)、ようやく王様のところに着いたらしい。

 ものすごくどでかい扉の前には、槍を持った兵士が二人。

 女性が頭を下げると、兵士たちは一度敬礼をしてからおもむろに扉を押し開けた。


 いわゆる、謁見の間、というやつらしい。


 俺は唾を飲み込んだ。

 まず目に入ったのはとんでもなく豪華なシャンデリアだ。数千万くらいしそう。それがいくつも連なっている。

 そして真っ赤な絨毯。見て分かるふかふかふわふわ感はうっかり寝転がってみたくなるほどだ。そのうえでこの光沢、なんて恐ろしい。


 で、その最奥に、鎮座まします王様。

 ここからでは顔はハッキリ見えないけれど、遠目にも鮮やかな金髪をしていることが窺えた。


(……こういう重大イベントっぽいところの前にはセーブポイントを置いておいてくれ……)


 俺は現実逃避的にそんなことを思いながら、使用人さんの後に続いて中に入った。


 ふかふかすぎる絨毯に足を取られないよう気を付けて進む。ピットもその軽い口をぎゅっと引き締めて、俺の長いローブの裾を掴んでいた。

 玉座の目の前まで来る。

 王様は席を下りて、俺の前までやってきた。背が高いおじさんだ。俺の父親くらいの年齢だと思われる、たぶん。でもやっぱりすごく目に痛いほどの金髪だ。そして深い緑色の瞳。ハンクスと同じ取り合わせだ。


 これあれか。ひざまずいて敬礼的なことをしなきゃいけない場面か。

 なんて思った俺の前で、王様はゆっくりと笑った。なんだかねぎらわれているような――憐れまれているような、そんな視線だ。


「よくぞ参られた、ヒジリオ殿。まずはここまでの長旅、ご苦労であったな」

「は……はぁ、どうも……」


 握手に応じてから、慌てて「すみません手袋したままで」と頭を下げた。


「気にせずとも。神官たちから聞いている。【被庇護の肌】というのだったか」

「はい、そうです」

「苦労が絶えなかっただろう」

「あー……」


 言われて、思い返す。

 苦労はあった。確かに。なんでこんなことに、って何度も思ったし、【被庇護の肌】ってなんやねん意味分からんわ、って何度も突っ込んだ。

 でも。


「……いえ、そうでもありませんでしたよ」


 そういうと、王様は「そうか」と頷いて、どこかうつむきがちに微笑んだ。

 それからふと真剣な顔になる。


「では、ヒジリオ殿。本題に入ろう」

「本題?」

「うむ。魔王の討伐と封印についてだ」


 ――そうだった。そのために俺は呼ばれたのだった。(ちょっと忘れかけてた。)


「ここから先はヒジリオ殿、あなた一人にしか聞かせられない。魔法使い殿には申し訳ないが……ヒジリオ殿お一人で、ついて来てほしい」


 王様の言い方と視線には敬意が感じられて、俺は好感を持った。この人のことは、たぶん、信用して大丈夫。……まぁ万一予感が外れていたら、触ってしまえばいいわけなんだし。

 ピットがぎゅっとローブを握りしめた。俺はその小さな白黒の頭をちょっと撫でて、心を落ち着けてから答える。


「分かりました。じゃ、行ってくるよ、ピット。また後で」

「……あとでどんな話だったか、全部聞かせてもらうからな」

「分かってるよ。それじゃあ」


 俺はちょっとだけピットに手を振って、王様の数歩後ろに連なった。

 




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