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27 尋問、拷問、よかろうもん。


 どうにか埋葬し終えて(といっても俺は途中から耐え切れなくなってへばっていたから、ハンクスが九割方片付けたのだが)、すっかり日が落ちた森の中。


「せやからな、ボクは悪ぅないねん。悪いんは一に魔王、二に魔族、三に魔物でおしまいや。な?」


 縛り上げられたピット少年が焚火の横でくっちゃべっていた。

 ベスターの大きな溜め息。


「じゃあどうしてアタシたちを霧の中に閉じ込めたのかしら?」

「あん屍術士を退治てほしかったからやて言うたやろ? 魔性の霧を出すなんて簡単やからなぁ、徘徊する死者に襲われて、にっちもさっちもいかへんようになれば、自然と退治しに行ってくれると思ったんや。ま予想外に時間が掛かったけど」

「それならそうと言ってくれればよかったじゃない。どうしてだまし討ちみたいなことしたの?」

「いっくらヒジリオ様ゆうても、とっくに全滅した見知らぬ村なんか助けてくれへんやろなーって思ってたからや。ヒジリオ様が“自分お人好しです。頼まれごと何でもします”て札下げて歩いててくれたらなぁ、ボクかてちゃっちゃと説明してご協力願ってたんやけど」

「そもそもどうして屍術士を倒したかったの? 村一つ滅ぼすぐらいの災害だったんだから、国の軍隊が出るでしょう。アナタ、さっきの村の出身なの?」

「……」


 ああ、やっぱりだ。さっきからこの質問に行きつくたびに、ピットは息絶えたように黙り込むんだ。


「なぁ、なんで縛るん? ボク何もせぇへんよ。あ、まさかそういう趣味でもあるんか、いややわぁ怖いわぁ」

「はぐらそうったって無駄よ、無駄」


 ベスターがぴしゃりと言った。(ちなみに縛っているのは俺との接触を封じるためである。事が片付いた直後、真っ先に俺に駆け寄ってきたのが原因だ。だから俺はすっかり安心して、手袋を外して全力で洗った。今は焚火に当てて乾かしている真っ最中だ。)


 ピットはぶすっと膨れてそっぽを向いた。意地でも口を開かないと決めたらしい。

 ベスターは再度溜め息をついて、ハンクスの方を見た。


「辺境の騎士団って、拷問とかするのかしら?」


 ごっ……拷問?!


 俺は思わず目を剥いたのだが、ハンクスは淡々としていた。


「凶悪な組織犯罪者が相手なら、しないことはない」

「そーぉ。じゃあお手の物ね」

「その手のことは盗賊団の方が得意じゃないのか?」

「ヤダ、偏見~! ――まぁ実際得意だけどね。どちらかというと精神的な責め方っていうの? 爪とか髪とか、あとは火を使ったりね」

「悪趣味だな。拷問なんか殴る蹴るだけで充分だろ」

「やぁん物騒だわぁ」

「どっちが」


 表面上は和やかなのに、中身が全然和やかじゃない……! ピットくんがちょっと震えてるぞ! 俺も震えてる! 怖すぎるってコイツら!

 このままピットが何もしゃべらなかったら拷問も辞さない……ってことか?


「いやいやいやいや、待てよ二人とも! さすがにそれはちょっと……!」

「あら、何が?」

「何がだ?」


 二人揃ってきょとんと首を傾げたって、俺は見逃さないんだからな!


「子どもを拷問するなんて絶対に駄目だからな! 俺は絶対に許さないぞ!」


 一瞬間が空いて、


「ウッフフフフフ!」

「わぷっ」


 笑い出したベスターが俺を抱き締めた。苦しいっ! 暑苦しいし息苦しいし! 暴れても全っ然放してくれねぇの何?! 拷問?!


「ヤダもぉセイリュウちゃんってば優しい~! でも早とちりよぉ! そんなことするわけないじゃない、ねぇハンクスちゃん!」

「当然だ。子どもは守らなければならない相手だ」

「そうそう。未来あるお子さま(・・・・)だもの、アタシたち大人が守ってあげなくちゃ――」


「ふざけんな! んなもんいらん!」


 突然、ピットが悲鳴のような大声を上げた。


「なぁにが大人や! “守らなければならない”や! 寝言は寝て言えアホンダラ……っ! 拷問でもなんでも好きにしたらええ! どーせボクは“いらない子”やからな!」

「いら、ない……子?」

「やぁっぱり。そんなことだろうと思ったわ」


 思わぬ言葉に絶句した俺を解放して、ベスターが肩をすくめた。


「アナタ、リューミンスト王国の王子さま、でしょう?」

「えっ?」


 びっくりした俺の目の前で、彼は頬を膨らませたまま、ごくごくかすかに頷いたのだった。




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