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20 忘れたものを取りに帰……れるのだろうか……。

 

「あっ」


 ふと思い出したのは、国境を越えてしばらく進んだ時だった。ビオ……辺境伯領とは打って変わって、見渡す限り茶色い平原が続く、乾いた赤土の街道の真ん中。


「どうした?」

「忘れ物でもしたのぉ?」

「いや……いや、うん、忘れてた……」


 そうだ、俺はすっかり忘れていたのだ。


「この世界にいる間、俺が元いた世界の時間ってどうなってんだろう……?」


 これは大問題だ。

 数日だったらG・W中だからどうにか――


 ――いや、そういえば楠坂(くすざか)とゲーム合宿やる予定だったっけ……やっべぇな……。


 俺がここに飛ばされてきた次の日から、ゲーム仲間の友人が来ることになっていたんだ。徹夜でガンアクション&謎解きゲームの最新作をクリアしよう、って。中学の時からの親友だけど、アイツ、変に生真面目でめんどくさい奴だからなぁ……俺が約束を破って連絡も入れないで行方不明になったら、絶対怒るし後からうるさいに決まってる。


 ……俺が行方不明になったことを、最初に気付くのはアイツだろう。

 ソシャゲのログインも完全に途切れるから、きっと心配する――


 会社? 会社はアレだ……行方不明の期間によっては戻った時クビにされてるだろう。それが一番のネックである。復帰……は無理だろうなぁ。異世界トリップに失職補償とか無いよな……。


 ベスターがしんみりした様子で何度も頷いていた。


「そうよねぇ、セイリュウちゃんにはセイリュウちゃんの暮らしがあったんだものね」

「そりゃ、まぁ、うん。大した暮らしじゃなかったけど」

「こんな風に勝手に呼び出されちゃうなんて、カワイソーだわぁ」

「うーん、まぁ……」


 確かに、唐突過ぎる上に問答無用な話だったけど。


「……でも、言うほど悪くはないよ。今のところ」

「アラ、そーお? セイリュウちゃんってばちょっとお人好しすぎない?」

「そうか? あー、でもまぁ、一人で放り出されてたら嫌になってただろうなー」

「つまりアタシたちに会えて嬉しい、ってことね! ヤダァ嬉しいのはこっちの方よ~!」

「うあああああ持ち上げるなって! 持ち上げるなっっってっっっ!!」


 190cm越えに持ち上げられる怖さを知ってるか?! いや知らないだろう!



 散々喚いてようやく下ろしてもらった。無駄な体力使わせるなよベスター……ただでさえ体力少ないんだからさ……。


 ふいに、ハンクスがぽつりと言った。


「早く戻りたいよな」

「え? あー……うん……」


 戻りたいか戻りたくないかと聞かれたら、さすがに戻りたい。

 だが――


「――そういや聞いたことなかったけど、戻れんの、俺?」

「……俺は知らない」

「そうだよな……」


 あのポンコツ神官どもめ。そういう重要なことは教えておいてくれっての。……聞かなかった俺も俺だけど。


「王都につけばどうにかなるかなぁ……」

「そう願うしかないな」

「オッ、あんちゃんたち、王都に行くんやな!」


 ふいに関西弁風の子どもの声が交ざってきた。

 声の方を振り向くと、傍らの木の上から少年が飛び降りてきた。紫色のローブがふわりと翻った。薄い褐色の肌の少年。白と黒が入り交じった坊ちゃん刈りがめちゃくちゃ似合ってた。小学校の五年か六年くらいに見える。

 レモンみたいな色と形の目が俺を見上げて、満面の笑みになった。


「奇遇やなぁ、ボクも今から行こうと思っとったんや。ほな一緒に行こか!」

「え? あの……え?」

「ボクはピット。足引っ張らへんように気張りぃや、あんちゃん」

「はぁ……はぁ?」


 大人たちが揃って首を傾げたのを、ピット少年は面白そうに眺めていた――



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