05 光
モチベーションの問題にて更新がなくて申し訳ありませんでした。
持ち直してきたので、少しずつでも更新していこうかと思います。
「あの……」
「何だ?」
「もうかれこれ数時間こうしてますけど、そろそろ行きませんか?」
ラトリアはこれまでの神生でもっともげっそりした顔で、アキラに問いかける。
アキラは実験台に利用していたゴブリンに止めを刺すと、額の汗を拭った。
「そうだな。完全に日が暮れるてしまうのは避けたい」
聖剣をしまったアキラは、一言、「ステータス」とつぶやく。
名称:アクツ アキラ
年齢:17歳
性別:男
職業:勇者
人種:人族(異世界人)
Lv:3
HP:379/384
MP:201
ATK(攻撃力):28
DEF(防御力):20
MAG(魔法力):14
AGI(素早さ):22
RES(抵抗力):44
《スキル》
鑑定:Lv2
拷問:Lv1
(レベルはこの時間で二つほど上がったが……感覚的にゴブリンでは効率が悪そうだな)
ステータスウィンドウを閉じたアキラは、多少乱れた衣服を整える。
「おい、拷問というスキルが増えているんだが、これはどう扱えばいい?」
「ご、拷問⁉ おそらくは他者を殺害しない程度に痛めつけるスキルだと思いますが……あまりにも持っている人が少ないので詳しくはちょっと」
「そうか。ならばこうして突然スキルが増えるという現象はありえるのか?」
「いえ、それはあなたがゴブリンを痛めつけたから、スキル修練扱いになったのかと……基本的に、スキルとはレベル0の状態です。何かそのスキルに関係する行いを反復することによって、初めてレベル1になります。勇者は比較的この世界の人間に比べレベルが上がりやすくなっていますので、不思議なことではありません」
「……分かった。これからはもう少し積極的にスキル習得を目指した方がよさそうだ」
アキラはため息を一つこぼし、その場で体をほぐし始める。
ステータス上では、HPがほんの少し減っていた。
これをアキラは、肉体的疲労から来たものだと認識している。
ダメージ以外でも減ることを身をもって経験したのだ。
それと精神的疲労はステータスに強くは反映されないことも確認してある。
これらの要素を加味して、アキラはステータスを過信することをすでにやめていた。
(いくらHPがあろうが、心臓を貫かれれば即死。ちまちま削っていっても、一定の割合以下になれば減りが緩やかになる。HPが百ある人間が、百回針で突かれたところで死なないというわけだ。すべてが数値に支配されているわけではない――今はこれだけでも収穫か)
アキラはここで一度思考をリセットする。
情報に限りがある状態で考え込んでも堂々巡りだ。
意味がないことを彼は嫌う。
現状でもっとも問題となっているのは、人里がどこか分からないという部分だ。
「本当に人里の位置は分からないんだな?」
「はい……すみません」
「もはや責める気も起きない。さっさと探すぞ。もうこの辺りの魔物で脅威に感じるやつはいない」
「わ、分かりました!」
二人は宛もなく歩き始める。
それから一時間が経過し、やがて二時間、三時間と時だけが過ぎて行った。
気づけばすっかり夕暮れ時となり、すでに夜といっても差し支えない時間となってしまう。
「——駄目だ。今日は野宿だな」
「え⁉ 諦めずに頑張りましょうよ! こんなところで寝たら体痛くしますよ⁉」
「お前がしたくないだけじゃないだろうな……? 土地勘のない場所を明かりもない状態で歩くのは愚の骨頂だろう。いくら魔物どもが相手にならないと言っても、リスクは冒したくない」
「明かりだったら私がなれますよ! ほら!」
訝しげな視線を送るアキラの目の前で、突然ラトリアの体が発光する。
さながらLEDライト並みの光を放つ彼女に対し、アキラは速攻で顔をそらした。
「明かりの代わりになるくらいならきっと許していただけるでしょう! これでどうですか⁉」
「……もう少し落とせないか? 悪目立ちする」
「あ、そうですか……」
得意げだったラトリアの顔が曇り、光が少し弱くなる。
彼女がいれば夜道を歩くことができるが、同時に様々な者の目を引き寄せることにもなってしまう。
やはり野宿の準備をしようとアキラが言いかけたとき、突然近くの茂みが揺れた。
「っ!」
とっさに聖剣に手をかけ、アキラは警戒態勢に入る。
次の瞬間、一人の男が茂みから飛び出してきた。
「た、助けてください!」
中肉中背の男は、アキラに向かって叫んだ。
するとその後ろから、いくつもの犬の遠吠えが聞こえてくる。
「ラトリア、下がってろ」
「え! え⁉」
「こんなに早く厄介ごとが舞い込んでくるとはな」
アキラの目線の先、そこから三体もの狼が飛び出してきた。