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01 これが勇者

新作です! よろしくお願いいたします!

 とある女神、ラトリアは泣きそうだった。

 彼女は両腕で抱えなければならないほどの爆薬を持っており、洞窟の中に立たされている。

 目の前には黒い髪の少年がいて、先ほどからしきりに周囲を見渡していた。


「あの……何をなさるのですか?」


「察しが悪いな。その爆弾を見ても分からないか?」


「いえ、やろうとしていることは分かるのですが……その、やっぱり何でもないです」


 ラトリアは目を伏せる。

 ああ、こんなことをするために女神に生まれたわけではないのに――と。

 

「よし、ここでいいな」


 少年は洞窟を支える天然の石柱に近づくと、ラトリアに向けて手を差し出した。

 爆弾をよこせということらしい。

 彼女は渋々といったようすで彼に爆弾を手渡す。

 

「――設置完了。退散するぞ」


「はい……」


 彼はライターを取り出すと、爆弾の導火線に火をつける。

 そして二人は洞窟の外に出た。

 

「10、9、8、7、6……」


 少年は自分の腕時計を見ながら、カウントダウンを開始する。

 その間、ラトリアは極めて不安そうな顔で洞窟の中へと視線を向けていた。


「5、4、3、2、1……」


 ――ゼロ。

 少年がそう告げた瞬間、耳をつんざくほどの轟音が響き渡る。

 もちろん、発生源は洞窟の中からだ。

 土煙が噴き出し、ラトリアは思わず顔を覆う。

 

「よし、いい威力だな。今後も使えそうだ」


 その隣で全く動じていない少年は、洞窟の入り口を見てそう告げる。

 土煙が晴れると同時に、ラトリアは目を見開いた。

 もはやその視線の先に、洞窟はない。

 あるのは不自然に崩れた瓦礫の山だ。


「よし、これでオークども(・・・・・)は全滅だな。クエスト解決だ」


「……あの」


「何だ」


「とんでもなく破天荒なことをしたって自覚はありますか?」


 ラトリアは表情の消えた顔で、少年にそう問いかける。

 しかし少年は何を言われているのか分からないと言った様子で、首を傾げるのであった。


「破天荒? 馬鹿を言え。俺はただオークの巣を破壊した。その過程でオークどもは全滅した。これは褒められてしかるべきの行いだ。まさしく勇者と呼んでくれ」


「あなたのような勇者がいますか⁉ せめて魔法とか剣を使ってください!」


「ふざけるな。やり方を任せるって言ったのはあんただろうが」


「だとしても限度があるんですよっ! 勇者らしさだって大事なステータスなんです!」


「勇者らしさ、ねぇ。……ふん」


「え、今鼻で笑いました? 私のこと鼻で笑いました? ねぇこっち向いてください……ねぇ⁉ アキラさん!」


 少年の服の裾を引っ張る女は、女神ラトリア。

 そしてそんな女神に引っ張られ鬱陶しそうな顔をしている少年は、阿久津(あくつ)アキラ。

 地球とは異なるこの世界、エルデランドに召喚された日本の高校生であり、女神ラトリアの加護を受けた――――正式な勇者である。


 なぜ彼らが現在このようなことをしているか、その理由を説明するには、かれこれ数日前へと時間を遡らなければならない。

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