第7部
20編
(私は…私は…
どうすればいいの?見たくないわ。
自分の未来の姿なんて…。怖い…。)
「…麗華…麗華!どうしたの?」
「…。はっ!何でもないわよ。さっさと
あのドラゴンに復讐しに行きましょ。」
麗華がまた未来の世界で何かに
悩んでいる様子だった。
(少し心配だな…。
この中級ボス討伐が終わったら、
何かしらのサポートはしないと。)
「胡桃、麗華!置いてくぞ。
次の中級ボスの情報も
確認したいんだが。」
「あ、ごめんね。
未来の中級ボスは時生さんによると
攻撃力とHPが高いパワー型の
ドラゴンらしいよ。
属性は無いみたい。」
「パワー型かー。お兄ちゃんの守りが
必須になってきそうだね。
属性が無いなら、私の魔法や
胡桃ちゃんの攻撃は効きにくいのかな。」
「そうだな。
とは言っても、俺にも守りの限界がある。
やっぱりここは未来のキーパーソンである
麗華が活躍するべきじゃないか?」
「私も覚悟はしてたわ。
今の所、不動の舞と癒しの舞で
麻痺させたり、眠らせたりして
演舞爛漫で状態異常のターン数を
増やすことは出来るけど…。
決め手には欠けるわね。
やっぱりさっきレベル40になった時に
習得した惑わしの舞が役に立つのかしら。
新たに混乱状態に出来るみたいよ。」
「混乱状態か…。
使い所によっては今回のタイプの
ドラゴンには相性がいいかも。
あ、着いたよ。」
私達はストレングスドラゴンの巣窟に
辿り着いた。
早くも身の毛もよだつ
禍々しい雰囲気を放っている。
「皆、構えて!」
「ギャオオオオオ!」
私達の目の前に麗華を襲った
ストレングスドラゴンが舞い降りた。
ストレングスドラゴンは
私達を見るや否や早速突進してきた。
「皆、回避して!」
「ゴォォォオオ!」
「あれを食らうと一溜りも無さそうだな。」
「だね…。まずはドラゴンの動きを止めるね。
アンデットカース!」
地面からボコボコとアンデット達が
現れてドラゴンを足止めしている。
しかし、ドラゴンの怪力でアンデット達は
跳ね飛ばされている。
「効かないわね…。
演舞爛漫!からの癒しの舞!」
ドラゴンは眠り始めた。
「美春と胡桃!今だ!
俺も攻撃に加わる!地割れ!」
「アンデットカースからのリバイブ!」
「どの属性が効くか分かんないけど…。
1番威力の強いファイアソード
3連撃からの突き!」
雷太と美春と私の集中攻撃でも、
ドラゴンのHPは3分の1減った程度だった。
「やっぱりHPが高いだけあるな…。
麗華の状態異常が
攻略の要となってくるのか?」
「雷太!ドラゴンが起きたよ!」
集中攻撃が止むと同時にドラゴンが
起き出してしまった。
ドラゴンは豪快にボディを地面に叩きつけ、
大きな振動を放った。
「わわっ!揺れるね。
まずいよ!麻痺になっちゃった。」
「そんな時は俺の出番だ!
トリックシールド!」
トリックシールドの効果で
雷太が麻痺状態になっている間は
相手も麻痺状態にすることが出来た。
しかし、麻痺状態も解けるのは
時間の問題だった。
「今こそ、私の出番よ。
演舞爛漫からの惑わしの舞!」
麻痺状態に引き続き、ドラゴンを混乱状態に
させることに成功した。
ドラゴンはその場を動けなくなると同時に
訳が分からなくなり、自分を攻撃し始めた。
「凄い!ドラゴンが自分を攻撃し始めたよ!」
「元々攻撃力が高いから、混乱状態になって
自分を攻撃するとそれだけ
HPの減りは早くなるね。」
「このまま一気に攻めるぞ!」
こうして混乱状態が効いたドラゴンは
凄い勢いでHPを減らしていき、私達の
集中攻撃で見事討伐成功に至った。
「やったぁ!今回もドラゴンを倒せたよ!」
「今回は麗華の大活躍だったな。」
「やっぱり新しく習得した惑わしの舞が
攻略の要となったね。」
「私も私を襲ったドラゴンを
倒せてスッキリしたわ。」
こうして私達は未来の中級ボスである
ストレングスドラゴンの討伐に成功した。
「後は現在の中級ボスか…。
どうやって現在まで行こうか?」
「私から提案が有るんだけど、
一つ良いかしら。」
今回大活躍した麗華から提案があった。
しかし、その提案は
衝撃的なものであったのである。
21編
麗華の提案は衝撃的だった。
私が最も耳にしたくない言葉であった。
「私がモンスターに殺られて死んだら、
賭けではあるけど現在に飛べるんじゃない?」
「麗華ちゃん…。それ本気で言ってるの?」
「そうだ。幾らキーパーソンの
お前が死んで異次元の扉が開くとしても、
過去か現在どっちに
飛ばされるか分かんないんだぞ。」
「私も反対。
また麗華が死んでいく様なんて
見たくない。」
しかし、麗華は覚悟を決めていた。
「それ以外に方法は無いじゃない。
それに私が死んだとしても
過去か現在に飛ばされれば、
また復活するし、最悪美春の蘇生を使えば
良いじゃない。
過去か現在のどちらかに
飛ばされるのは2分の1だけど、
決して少ない確率ではないわ。」
麗華の言うことに私達はぐうの音も出なかった。
「分かったよ。麗華がそこまで言うなら…。
受け入れるしかないよね。
でも、麗華こんな無茶なこと
買って出てくれて本当にありがとう。」
「お礼なら無事に現在に
辿り着いてからでいいわよ。
じゃあちょこっと
モンスターに殺られてくるわ。」
そう言って麗華は今の私達では到底叶わない
モンスターが居るフィールドに突っ込んで行った。
そして、見事に大敗し死んでしまったのである。
「異次元の扉が開くぞ!突っ込め!」
雷太の掛け声と同時に私達は現在に辿り着く
事を祈りつつ異次元の扉に入っていった。
次に目を開けた時は異次元の世界を渡った
後だった。そこに広がっていたのは平和だった
頃の見慣れた私達の街だった。
「やったー!現在に戻ってこれたよ!」
「見事博打は成功だったな。」
「それより麗華は!?」
「居るわよここに。無事に成功したみたいね。」
心配されていた麗華の安否も無事であった。
「私の心配より、さっさと現在の中級ボスを
倒しに行きましょう。現在の中級ボスの情報は?」
「えーと。属性は…。火・水・風・土の4つの
属性!?これじゃあ幾らキーパーソンの
私でも活躍できるかめちゃくちゃ
不安なんだけど…。」
「4つの属性を持ってるって事はそれぞれの
属性に弱点もあるって事だろ?
まだ分かんないぞ。」
「確かにそうだけど…。過去や未来の中級ボス
よりもかなり厄介そうだね。とりあえず
向かうしかないか。」
大きな不安を残しつつも、私達は現在の
中級ボスであるオールパーパスドラゴンの
巣窟へと向かうのであった。
22編
(私に敵うのだろうか…。
私が活躍しなかったら
ドラゴンは倒せない。
何か手立てはないの?)
大きな不安を他所に
ドラゴンの巣窟に着いてしまった。
「着いたよー!」
「さて、どう攻略していくかだな。
やっぱり攻略の要は胡桃だろう。」
「胡桃、期待してるわよ。」
「う、うん…。」
「ドラゴンが来るぞ!」
「ゴォォォオオ!グギャァァァァ!」
今まで見た中級ボスの中で
1番の迫力だった。
圧倒的な迫力に
呆然とするしかなかった。
しかし、ドラゴンは
私達の準備などお構い無しに
早々と攻撃を仕掛けてきた。
「ブァァァァァァ!」
「ゴォォォオオ!」
「ドゴォォォォォン!」
ファイアブレス、濁流、地割れと
休む暇もなく次々と攻撃してきた。
「うわ!これじゃあ
俺の盾でも防ぎきれないぞ!
美春!回復をドンドンしてくれ!」
「お兄ちゃん!分かった!」
「私も状態異常で足止めするわ!
演舞爛漫!からの癒しの舞!
不動の舞!惑わしの舞!胡桃!
今のうちに攻撃するのよ!」
(そんな事言われても、
どの属性の攻撃をしたら良いか
分からないよ…。一通り試してみるか。)
「ファイアソード!アクアソード!
ウインドソード!アースソード!
ダメだ!あんまり効いてない!」
「状態異常も長くは続かないみたい…。
っつ!攻撃が来るわよ!」
「ギュルギュルギュル
ギュルギュルギュル!」
大きな竜巻がドラゴンから放たれた。
「うわぁぁぁぁ!きゃぁぁぁぁぁ!」
私達は巨大な竜巻に巻き込まれて
全員瀕死状態になってしまった。
「うぅぅぅ…。皆大丈夫か?」
(やっぱり強い…。
でも、全員瀕死状態になったと
言うことはチャンスでもある!
ピンチの時こそチャンスよ!)
私達の身体から眩い光を放ち始め、
全員無双モードへと突入した。
「胡桃ちゃん!チャンスだよ!
でも、幾ら無双モードでも
今のままだと倒せないと思う…。
だから攻撃の発想を逆転させて!」
(発想を逆転させるか…。
単体での属性の攻撃が
駄目なら全部の属性を合わせてみたら
どうだろう?案外いけるかも…。
やってみる価値はある!)
「ファイアソード・アクアソード・
ウインドソード・アースソード全発動!
フォーアトリビュートソード
3連撃からの突き!」
私は火・水・風・土の4属性の
魔力を剣に込めて今、自分が使える
全ての力を放ち、オールパーパスドラゴンに
渾身の攻撃した。
「ギャァァァァァァォァ!!」
(効いてる!やっぱり思った通りだ!)
1つの属性だけで攻撃した時とは
格段に与えられるダメージが違い、
一撃でドラゴンを
瀕死状態まで追いやった。
「皆!後は無双モードで集中攻撃だよ!」
「行けー!」
こうして私の発想の逆転により、
オールパーパスドラゴンは
無事に討伐されたのであった。
「いやー、胡桃ちゃん。凄かったね!
4つの属性を全て解き放って
攻撃するなんて、
私には思いつかなかったよ!」
「一撃であそこまで追いやるんだもんな。
やっぱりキーパーソンは違うぜ。」
「悔しいけど、今回は
胡桃の活躍のおかげね。」
「私も4つの属性を合わせると、
あそこまで攻撃力が上がるとは
思わなかった。」
(今回属性を合体させてからの
3連撃と突きであれだけ攻撃が出来るなら、
もっと色々な剣技を身に付ければ
可能性は広がりそうだな。)
「さて、無事に中級ボスは全て討伐出来たね。
これからどうしよう?」
「次は魔王幹部とやらの討伐に向けてか?」
「えー。またレベル上げ?もう嫌だよー。」
「……。」
この時、中級ボスに全て勝てた嬉しさから
麗華の様子がおかしい事に気付くことが
出来なかった。