第5部
15編
これまでに何十回と
モンスターと戦ってきた。
お陰でレベルは30まで到達し、
スキル振りも大分感覚を
掴めるようになってきた。
レア装備もそこそこではあるが、
まともな装備が揃ってきたので
MAXまで強化してみた。
「いやー。大分スキルも強化できたし、
レベル上げのお陰で能力値も増えたよね!」
「レアアイテムもそこそこ揃ってきたし、
MAXまで強化して装備をすると
今までよりも敵の攻撃を
受けにくくなって来てるわね。」
「武器もレア度が高い奴を使ってるお陰で、
大分楽にモンスターを
倒せるようになってきたよな。」
皆、それぞれスキルや能力、
装備を強化したことで
モンスターとの戦いが楽になってきて
いるのを実感しているようであった。
「これなら結構強いモンスターが現れても
十分に戦えそうだよな。」
雷太が珍しく楽観視したその時だった。
明らかに強そうな禍々しい雰囲気を纏った
巨大な龍のようなモンスターが現れたのは。
「皆、危ない!」いち早く龍の存在に
気付いたのは麗華だった。
しかし、麗華がモンスターの前に
立つと同時に龍は強力な炎の攻撃を放ち、
攻撃は麗華を直撃してしまった。
「麗華!」
3人が口を揃えて叫んだ時には
時すでに遅しであった。
信じたくはなかった。しかし、麗華の
HPは0になっていた。
「麗華!しっかりして!美春も早く蘇生の
魔法を!」
私はぐったりとなった麗華の身体を
抱えながら美春に指示する。
「…。ごめんね、胡桃ちゃん。私のレベルでは
まだ回復しか出来ないんだ。
蘇生はできない…。」
「嘘だろ?アイテムの中に蘇生できるのは
無いのか?!…。
そんなものあったらとっくに
見つけてるか…。」
「…。」
静寂が辺りを包んだ。
麗華を攻撃した龍は
いつの間にか居なくなっていた。
(麗華が死んだ…。嘘でしょ?
嘘だと言ってよ!
4人揃って無きゃダメなの!
昔からこの4人でずっと
これからも一緒に
居られると思ってたのに…。)
頭の中で麗華との思い出が巡った。
憎まれ口を叩きながらも、私達とずっと
一緒に居てくれた友達。
喧嘩も多かったけど、
雷太とは違う同い年の同性の友達。
麗華の裕福さが羨ましかった。
暖かい家庭に産まれて、お父さんと
お母さんに大切にされてて…。
私なんかが持ってないものを
いっぱい持ってたのに…。
そんなことが頭をよぎったその時だった。
残った私達3人が不思議な光に包まれ、
何と異次元の扉が開いており、その中に
吸収されて行った。
(こんな絶望の中、何処に行くの?)
そう思いながら、目を閉じた。
16編
次に目を開けた時は以前に見た光景が
目の前に広がっていた。
(ここはもしかして…。)
「ここって過去の世界じゃない!?」
私の疑問もそのまま口にしてくれたのは
美春だった。
「何で俺達、過去の世界に飛ばされたんだ?」
「それよりも麗華は!?やっぱり
もうこの世に居ないの…?」
私が再び麗華がこの世から
居なくなってしまった
現実に浸ろうとしていたその時だった。
「痛た…。勝手に私を殺さないでよ!
生きてるわよ!」
私が今、最も聞きたかった声が
聞こえてきた。
「麗華!」
皆、麗華の元に駆け寄った。
「麗華ちゃん〜心配したんだよ!」
「生きてたか。本当に良かった。」
「麗華…。」
私は気付いたら
ポロポロと涙を流していた。
「何泣いてんのよ、胡桃は。」
「だって麗華が死んじゃったと思って…。」
「この通り生きてるわよ。でも、未来で
龍に襲われたはずなのに、何ともないわね。」
(確かに…。麗華は未来で龍の攻撃に直撃した
はずなのに、怪我一つ
負っていないのは何故?)
「麗華ちゃん、大変だったね。
でもこれでハッキリしたよ。」
どこかで聞いたことのある声が
聞こえてきた。
「時生さん!何で過去の世界に居るの?」
「どうやら君達が現れてから、僕が異次元の
世界を渡ることが出来る基準も君達の
行動次第で飛ばされるみたいだ。そして、
今回過去の世界に飛ばされたのは、
麗華ちゃんが未来の世界で
死亡したからだ。」
(どういうこと…?麗華が未来の世界で
死んだことが異次元の扉が開く条件に
なってるってこと?)
「それはどういうことですか?」
私は疑問をそのまま口にした。
「麗華ちゃんは未来の世界の
キーパーソンなんだ。
キーパーソンがその世界で死ぬと、
ランダムで異次元の世界に飛ばされる。
キーパーソンの役割はその世界で
非常に重要となってくる。
死ねば異次元の世界に飛ばされるし、
中級ボス・魔王幹部・ラスボスを倒す要に
なってくるのもキーパーソンだ。」
「キーパーソン?麗華が?それって
未来だけじゃなくて、過去や現在の
キーパーソンも居るの?」
「その通りだ。雷太くんと美春ちゃんは
過去のキーパーソンで、胡桃ちゃんは
現在のキーパーソンなんだよ。」
「俺達もか?そんな重大な役割なんて
ごめんだな。」
「私も魔王幹部とかラスボスとかと
戦うなんて怖いよ…。」
(私も現在のキーパーソンだなんていきなり
言われてもどうすれば良いの?
目眩がする…。)
「それでも戦うしかないんだ。
キーパーソン達が中級ボス・魔王幹部・
ラスボスを倒さないと
俺の今までの調査ではモンスター達は
完全に消滅しない。俺も昔1人で
そいつらを倒して
モンスターを消滅させた。
俺が戦ってた頃はここまで
モンスターは強くなかったがな。
それに麗華ちゃんがやられたと
言っていた龍は未来の
中級ボスのことだろう。
まずは過去・現在・未来の
中級ボスを倒すといい。
中級と言っても今の君達のレベルでは
かなり強いがな。どうせしばらくは
異次元の扉は開きそうにないし、
この過去の世界でまたレベル上げを
したらどうだ?俺が知っている情報は
提供しよう。」
(中級ボス・魔王幹部・
ラスボスを倒すことで、
モンスターを消滅させられるの?
また、私達の街が平和に
なるならやるしかないのかな。
17編
「因みに時生さんが知っている情報って何ですか?」
「俺が知っているのはまずは中級ボスに
ついてだが、中級ボス攻略のポイントは
キーパーソンの能力強化だ。例えば、
未来の中級ボスは状態異常と踊りの力が
弱点で同時に攻略の鍵となってくる。
その世界のキーパーソンがいかに
活躍するかで各ボス達を倒せるか
どうかが決まってくる。」
「なるほど…。じゃあしばらくは
過去の世界で強化して、過去の世界の
中級ボスと戦うのが先決ってわけね。」
「胡桃、戦う気か?」
「胡桃ちゃん、本気で言ってるの?」
「馬鹿な事言わないでよ!私がさっき
あんな目に合ったばかりなのよ?」
3人はまだ決意が固まっていないらしい。
「でも、戦わなきゃ倒さなきゃ私達の街に
平和は一生戻らないんだよ?」
「胡桃ちゃんの言う通りだ。確かに
これ以上戦うのは怖いだろう。だが、
平和を取り戻すには戦わなきゃいけない
時がある。それが今だ。」
時生さんも私の言葉の後押しをしてくれる。
「平和を取り戻すには仕方ないのか…。
俺は覚悟を決めたぜ。」
「お兄ちゃん…。私もこれ以上、私達の街を
めちゃくちゃにされるのは嫌だ!戦うよ!」
「しょうがないわね…。お父様とお母様を
危険に晒す訳にもいかないしね。いいわよ。」
「皆、ありがとう!まずは過去のこの
世界でレベル上げしよう。」
「了解!」
私達のモンスターと戦う目的が明確に決まった。
「俺みたいにならなきゃ良いがな…。」
時生は捨て台詞を残し、その場を去っていった。