第17部
51編
私が未来の世界に懸ける想いは
特別な物となっていた。
こないだまで自分の未来を考えるのが
怖くて見て見ぬ振りをしていた。
でも、いつまでも
逃げてばかりはいられなかった。
私はある行動に出た。
結果的に良い物となったけれど、
直後に雷太と美春の悲しい結末を見て
自分はまだ恵まれていたんだと
申し訳ない気持ちになった。
だからこそ、今回の邪神戦で私だけじゃなく
お父様やお母様、そして胡桃達の未来も
守るんだと決意していた。
私にしか出来ない、大切な人のこれからの
人生を守る事はこの総力戦での私の心の
支えになっていたのであった。
私にとってこの戦いは私の今までの
集大成になると予想していた。
「麗華ー!行くよ。」
「分かってるわよ。
また空から降ってくるんじゃ
無いでしょうね?」
「今度は私達が
邪神の住処に向かうんだよ。」
私達は邪神の住処へと向かった。
「何か如何にも魔王の住処って感じの
禍々しい雰囲気に包まれてるな。」
「今にも出てきそうで怖いよ…。」
「私の住処によくぞきた。歓迎しよう!」
突然現れた巨大な黒い扉に
私達は導かれていった。
「ここは何処なの?」
「何か異様な雰囲気に包まれてるな。」
「まさか邪神の住処じゃないよね…?」
「そのまさかだったりするのよ…。」
「私の住処にようこそ。
君達が来るのを長い間ずーっと
待っていたんだ。今宵の時、
戦える事を楽しみにしているぞ。」
「何故かめちゃくちゃ歓迎されてるぞ。」
「魔王に歓迎されても嬉しくないわね。」
「さぁ。待つ時間も惜しいぞ。
早速君達の力を見せてくれ。
私も全力で戦うとしよう!」
「皆、構えて!」
「先ずは小手調べとしよう。
火炎放射!タイフーン!」
「ゴォォォォォォォォォォォォ!」
炎を纏った竜巻がこっちに向かってくる。
「私と麗華に任せて!雷太は攻撃の準備を!
美春は私達2人の回復に徹して!」
「了解‼︎!」
「胡桃!この爆炎風をどうするのよ⁉︎」
「私が弱点の属性の技を
使って食い止めるから、
その間に麗華は
状態異常にしたり攻撃して!」
「分かったわよ!」
「アクアソードとファイアソードの合体技!
ツーアトリビュート五連撃!」
「君達は頭が少し足りないようだね。
水と炎は打ち消し合う事も
知らないのかい?」
「頭が足りないのはどちらかしら?
合体技といっても、
水属性と火属性を交互に発動して
連撃すれば打ち消し合う事は無いのよ!
食らいなさい!」
「シュゥゥゥゥゥゥ!」
爆炎風は瞬く間に消えていった。
「何とも小賢しい真似を…。
しかし、これは私の
ほんの一部の力に過ぎぬ。
ショーはこれからだ!」
こうして邪神との戦いは
幕を開けたのであった。
52編
「戦いをショーですって?舐めないで!
今度はこっちの番よ!フォーアトリビュート
五連撃からのジャンプ斬りと突き!」
「私も行くわよ!鼓舞の舞!」
「フハハハハハハ!
魔法攻撃など通用しないぞ!」
「じゃあこっちはどうだ?一刀両断!」
「何だこの力は!
さっきまで軟弱に見えていたのに…。
凄い力だ!グハッ!」
「やったー!
麗華ちゃんの鼓舞の舞のお陰だね!」
「私にダメージを与えるとは…。そろそろ
本気で行こうとしようか!濁流!地割れ!」
「ゴォォォォォ!ガラガラガラガラ!」
「キャァァァァァァァ‼︎!ウォォォォォォ!」
「流石に本気になると
受けるダメージが半端ないな…。
美春!次々と回復してくれ!」
「分かった!
ラージヒール!ラージヒール!」
「回復の隙など与えないぞ!
ファイアブレス!暴風雨!」
「ウゥゥゥゥゥ…。やっぱり魔法攻撃を
連発してくるのね。回復しても直ぐに
ダメージを与えられてしまう…。」
「君達もそろそろ限界だろう。私も
とっておきの技を
決めさせて頂くとしよう!魔蝕!」
「ジワジワジワジワジワ!」
「身体が動かないですって?
状態異常になりにくいはずなのに…。
雷太!あの技を使いなさい!」
「分かってるよ!トリックシールド!」
「何をやってるのだ?この技をただの
状態異常だと思っているのか?
残念だが魔蝕は特殊な
状態異常で簡単には解けないぞ。
1ターン毎にHPと MPが削られていって
やがて死に至る。
そこで、死にゆく瞬間を
待っているがいい!」
「何これ…。
このままどうにもする事出来ないの?」
「くっ…。美春!回復は出来ないのか?」
「出来るけど回復しても
減るのは変わらないよ!
これじゃあイタチごっこと一緒だよ…。」
「状態異常なら私に
何とか出来ないのかしら。
考えるのよ、麗華。…。そうだ!美春!
確かあんたのスキルに女神の守りって
合ったわよね?
あれって確か即死はしないように
なってるんじゃなかったかしら?
それを私にかけて、尚且つ私だけ
回復しないで欲しいの!」
「麗華ちゃん!何言ってるの?
そのままの状態で邪神の総攻撃を
食らったら死ぬんだよ?」
「私に考えがあるの!信じなさい!」
「何か前もこんな事有ったような…。
どうなっても知らないからね!
麗華ちゃんを信じるよ!女神の守り!」
「パァァァァァァァ!」
「他の2人と私は回復し続けるよ!
ラージヒール!ラージヒール!」
「バカな娘だ。自ら死期を早めるような
行動に取るとは…。
早く楽にしてあげようではないか。
マグマ!」
「キャァァァァァァァ!熱い!熱いけど
耐えるのよ…。もう少し。もう少しで!」
「まだ耐えるのか…。今度こそお終いだ!
濁流!」
「ゴォォォォォ!」
「ウゥゥゥゥゥ。意識が飛びそう…。
でもこんなとこで死ぬ訳にはいかないわ。
よし!今よ!」
麗華の身体が突然眩い光に包まれた。
「麗華‼︎麗華ちゃん!」
「HPが極限に減るまで待っていたのよ!
この無双モードを使うためにね!」
邪神との戦いはまだまだ
波乱を呼ぶのであった。
53編
「無双モードだと⁉︎ふざけるな!」
「ふざけてなんかないわよ!
考えに考え抜いた秘策なんだから!
無双モードになれば、
特殊な状態異常でも皆を
治す事が出来るのよ!
無双モード発動!」
「パァァァァァァァ!」
「ウゥ…。あれ?
動けるようになってるよ!」
「本当だ!麗華ちゃんありがとう!」
「流石未来のキーパソンだな。
助けられたぜ。」
「これで全員動けるようになったわ!
総攻撃よ!鼓舞の舞!」
「麗華!ありがとう!
4属性がダメならこれならどうかしら?
スチールソード五連撃からの回転斬り!」
「一刀両断!」
「麗華ちゃん!今回復するよ!
パーフェクトヒール!
そして、ホーリーライト!」
「百花繚乱!」
「グァァァァァァァァ!まさか魔蝕を
打ち砕くとは…。お見事であった。
私の完敗だ。負けを認めよう…。
シュゥゥゥゥゥゥ…。」
こうして邪神は消えていった。
「やったー!麗華のお陰で勝てたよ!」
「まさかこんな秘策を思いつくとはな。」
「麗華ちゃーん!凄いよー!感動したよ!」
「私だってやる時はやるわよ!
もう駄目かと思ったけど…。」
「え?何か言った?」
「何でもないわよ!とにかく邪神に
勝利した事は事実よ!やったわね!」
「今回は麗華ちゃんの大活躍だったね。
俺が手を出さなくても、自分達の力だけで
勝利した事は誇りに思っていいぞ。
素晴らしかった!」
「時生さん…。ありがとうございます。
あの時、時生さんが悩んでいた私に道標を
くれたお陰で私にとって未来という物が
かけがえのないものだと気付いたんです。
こちらこそ感謝しても
仕切れないくらいです!」
「あの時の麗華ちゃんからは想像も付かない
前向きな言葉が出てきてくれた事を俺は
嬉しく思うよ。君の力で他の3人や
君の大切な人達のこれからの人生を
守ったんだ。その事は麗華ちゃんの人生の
転機となる事は間違い無いだろう。」
「はい!今のこの気持ちを忘れずに
怖がらずに未来の人生を歩んでいきます!」
「そうすると良いさ。
さて、過去の厄災の神も
未来の邪神も倒した君達に残された
最後の壁は現在のラスボスだ。
今までもかなりキツイ戦いであったと
思うが、ここからは俺の時でさえ
何度も戦うのを諦めそうになるくらい
想像を絶する程の圧倒的な
力を現在のラスボスは持っている。
過去・未来のラスボスでも入念に
攻略方法の計画は練ったが、
通用しない部分もあったのは確かだ。
幸い、機転を利かせて回避できたが
今回の戦いだけは生易しい物ではない。
下手すれば1撃で全滅する可能性だってある。
覚悟して挑むと良い。」
時生さんがここまで言うのは珍しかった。
私達はこれから待ち受ける戦いに
息を飲むしかなかった。