第16部
48編
「皆、今だ!総攻撃しろ!」
雷太の掛け声と共に私達は総攻撃を始めた。
「ファイブアトリビュート五連撃からの
ジャンプ斬り!」
「ザン!ザクッ!ザァァァァァ!」
「百花繚乱!」
「ゴォォォォォ!」
「ウォォォォォォ!クソ!
我にダメージを与えるとは…。
お前達はこれでも食らってろ!地震!」
「グラグラグラグラッ!」
「そうはさせるか!地震で地盤が揺れるなら
壊してしまえばいい!地割れ!」
「ガラガラガラガラガラッ!」
「地盤を壊すだと!それではお前達の
足元まで崩れる…。何?崩れてないだと⁉︎」
「俺が仁王立ちで3人分の反動を受けてるからな!
美春!回復してくれ!」
「はーい!パーフェクトヒール!」
「パァァァァァァァ!」
「これでは我が負けてしまう…。
奥の手を使うしかないか…。古の呪い!」
「グォォォォォォォ!」
「今度は何なの⁉︎
呪いだって?動けない…。」
私達は地べたに這いつくばるしかなかった。
「これじゃあ攻撃出来ないどころか
一歩も動けないよ!」
「手も足も動かないわ…。
敵の集中攻撃を受けてしまうわ!」
「クソ!俺も動けない…。
強力過ぎる呪いだ…。もうダメなのか?
考えろ!考えるんだ!
まだ打開策はある!…。
そうだ!あの技を使えば…。」
「フハハハハハ!我の強力な呪いに
一歩も動けまいだろう。これでお終いだ!」
「俺達はまだまだこれからだ!
トリックシールド!」
「そのショボい技は何だ!…。
何?動けないだと⁉︎」
「トリックシールドは自分が状態異常の時に
相手にも同じ状態異常に出来るのさ!
美春!魔法は使えるだろう。
俺を集中的に攻撃してくれ!」
「お兄ちゃん⁉︎何言ってるの?
いくら蘇生できるとは言え、
お兄ちゃんを死なせる様な事は
出来ないよ!」
「いいから!とっておきの秘策があるんだ。
出来るだけ俺のHPを強力な技でドンドン
削って欲しい!俺を信じろ!」
「お兄ちゃん…。分かったよ!私の
最大級の必殺技ホーリーライト!」
「パァァァァァァァ!ヒュォォォォォォ!」
「くっ!耐えるんだ…。
耐えれば耐える程俺は強くなる!」
「お兄ちゃん…。もう見てられないよ…。」
「ハァハァハァ…。よし!
これで反撃できる!厄災の神め!
これでお終いだ!カウンター!」
「バギャァァァァァ
ァァァァァォァァァァ!」
「止めろ!我が死ぬだと?認めない!
認めないぞ…。シュゥゥゥゥゥゥ!」
「雷太くん、お見事だ。
自分に敢えて攻撃を集中させて、
HPが少ない程攻撃の
威力が増すカウンターを使うとは
君達の戦略の勝利だ!」
「俺達、勝ったのか…?
やった!やったぞ!」
「お兄ちゃんー!もうぼろぼろじゃない!
どうなるかと思ったよ…。」
「雷太、攻撃の発想が素晴らしかったよ!
私達厄災の神に勝ったんだ!」
「雷太にしては珍しく機転を利かせた
見事な発想だったわね!お手上げだわ。」
「お前ら…。こっちこそありがとな!」
こうして私達は雷太と美春の大活躍で
厄災の神の討伐に成功したのであった。
49編
俺達兄妹はあの時の事を
とても後悔していた。
ばぁちゃんを魔王幹部から助けた事で、
ばぁちゃんは死ぬはずだった原因を
俺達の手で取り除いてしまった。
しかし、次元は歴史を変える事を
許してはくれなかった。
結果的に俺達の目の前で
ばぁちゃんは死んだ。
10年前には見なかったばぁちゃんが
死ぬ瞬間を目撃してしまったのだ。
ばぁちゃんの命を救ったつもりが、
俺達の手で殺してしまったのでは
無いかとずっと考えていた。
美春には気丈に振る舞ったが、
内心はボロボロだった。
「俺達はわざわざ過去まで来て、
ばぁちゃんも結果的に助けられなくて
何しに来たんだろうな。
ラスボスを倒せた事は嬉しいが、
俺は報われた気がちっともしない。
虚しいだけだ。」
「お兄ちゃん…。」
「雷太…。」
「雷太くん…。
そんな事を考えていたのか。」
その時俺の心を救ってくれたのは
一番言葉を向けて欲しかった人だった。
「雷太!何言ってるの?
確かに雷太と美春のおばあちゃんが
目の前で亡くなった事は
相当なトラウマになっていたと思う。
だけど、ラスボスを倒さないでいたら
過去の世界は崩壊していたんだよ?
私達がこの17年間生きてきた短いけれど
大切な歴史を雷太と美春は
救ってくれたんだ。
もし過去の世界が崩壊していたら、
この街自体が無くなっていたって事だよ。
それは雷太のお父さんもお母さんも
そしておばあちゃんも歴史上
存在しなかった事になってしまう。
勿論私達もだけどね。だからこの街を、
大切な人達を救ってくれてありがとう!
雷太と美春の手で救ってくれたんだよ。
もっと胸を張って誇りに思ってよ!」
「胡桃…。俺は…。
俺は殺したんじゃ無いのか?
救ったのか?大切な人達を
守る事が出来たのか?
ウグッ!グスッ!ウゥゥゥゥゥ!」
俺は人目を惜しむ事も無く、
生まれて初めて男泣きをした。
俺の後悔が本当の意味で報われた気がした。
そして、その言葉をくれたのは俺にとって
一番大切な人だったのだ。
(ばぁちゃん…。
俺は大切な人達を守ったよ。
天国で見ててくれてるかな。
いつかそっちに行った時は
この時の事を褒めて欲しいな。)
こうして、俺が抱えていた苦しみは
消え去り、惜しまれつつも過去の世界を
後にしたのであった。
50編
「さて。次は未来の世界に来てみたは
良いけど、何か当てはあるのかしら?」
「次も君達がどんな戦いをするのか
楽しみだね。」
「時生さん、付いてきたんですね…。」
「いつの間に!ビックリしちゃった!」
「ハハハ。君達の行動と俺の行動は
リンクしている事を前に言っただろう?
胡桃ちゃん、次は何をするか君なら
分かってるね?」
「はい。未来のラスボスは邪神と言って、
魔法攻撃を主体にしてくるボスです。
魔法防御力が強い私と麗華が出番かと
思われます。物理防御力も弱いので、
雷太にも出番は有るかなと。」
「流石だ。攻撃パターンは
火魔法や風魔法、水魔法、土魔法を
使ってくる。使える魔法の属性も
豊富な事ながら、回復魔法や状態異常に
してくる魔法も使うから厄介だ。
長期戦になる事は必須だろう。
魔法攻撃を防ぎつつ、回復される前に
物理攻撃を仕掛けるのが一番良いかと
思うんだがどうかな?」
「良いと思います。ただ厄災の神と
戦った時に問題になったのが、全員が
状態異常にされた場合です。前回は
雷太が機転を利かせてくれて何とか
凌ぎましたが、今回は私と麗華も
戦うので身動きが取れないと
攻撃出来なくなります。」
「そういう事があったのか。
魅惑の精霊を司る麗華ちゃんのスキルに
解決方法は有るんじゃ無いかな?」
「私のスキルですか?
今出来るのは癒しの舞、不動の舞、
惑わしの舞、魅惑の舞、花鳥風月、
演舞爛漫、百花繚乱、扇舞と…。あれ、
もう一つ使ってなかったスキルがあるわ。
鼓舞の舞?これは何かしら。」
「それだ!スキル説明を
読み上げてごらん。」
「えーっと…。味方を鼓舞する事で
味方の攻撃力を増加させ、
状態異常になりにくくさせる。
ただし、状態異常を治すわけでは無いので
注意が必要であるですって。」
「今回の邪神にピッタリじゃない?」
「そうだな。攻撃力が上がって
状態異常になりにくくなるのは大きいな。」
「でも、状態異常を治せる訳じゃないから
なるべくならないように注意しなきゃって
事なのかなー。」
「そうだね。あくまで
なりにくくする物だから
状態異常になってしまったら、
雷太くんのトリックシールドを使うか
回復中心に切り替えて状態異常が
解けるのを待つしか無いかと思う。」
「じゃあ美春と雷太にも
頑張って貰わなきゃ困るわね。」
「分かってるよ。最大限の援護はする。」
「私も頑張って回復するね!」
「後は勝つも負けるも君達次第だ。
今回も俺はあくまで君達が死なない程度に
最低限のサポートしかしない。君達自身で
邪神を倒してくるんだ。」
「分かりました‼︎‼︎」
こうして私達は事前に邪神の攻略方法を
入念に話し合って討伐に
向かったのであった。