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見つけた花畑、しばしご飯

先を考えながらで、なかなか進みませんでした。一人と一匹はご飯タイムです

状況は変わらず森の中。キュンキュン言うふかふかのお供を連れて、私はさくさく歩きます。

『シホ、ニオイ、ツヨクナッタ』

「あ、私も分かるかも。なんか凄く甘い匂い」

香水とかじゃない、甘い匂いにシリウスと一緒になって鼻をひくひきさせてしまう。

「うわぁ、綺麗」

『オイシソウ』

「美味しそう、とはまた情緒のない表現だなぁ」

白い花の群生は圧巻です。薄暗い森の中で燐光を放つ姿は幻想的で、甘い匂いがそこらじゅうに満ちています。

『シホ、シホ、ハナシテ』

ウゴウゴと腕の中でシリウスが下に降りたそうにするので、ゆっくり地面に近づけて下ろしてあげる。すると、ピョンと飛んで花の中に着地して、おもむろに大きく口を開けた。

「シリウス、何して……あっ」

ばっくりと目の前の花にかぶりついて、むしゃむしゃと咀嚼する。

「ちょっ、コラ、花なんか食べてだいじょ」

『オイシー、スゴクオイシー』

目の前の一輪一輪を、ものすごい勢いでパクパクと平らげていく。残るのは茎と葉っぱだけで、花だけが綺麗に刈り取られていく。欠食童子を目の当たりにしてなんだか少し笑ってしまった。

「もしかしなくても、この花がスターシアの花なのかな? 説明」

またも浮かぶ半透明の黒い説明枠。さっきまでシリウスに出ていた説明は消え去り、目の前の花に枠が浮かんでいる。


《スターシア(植物)》

《森の奥深くに自生する植物。花の蜜は菓子などの材料になる。その甘い香りには人の気持ちを落ち着ける作用がある》


なるほど、枠は一回に一個出るだけなのか。どっかで開いたら、前のは閉じると。

あ、お菓子に使うくらいなら、私も食べられるかしら。空腹を思い出して自分も屈んでスターシアを覗きこむ。蜜は花の奥に貯まっているようでうっすら黄色く見えた。

「何より、美味しそうなんだよね」

『オイシー、アマーイ』

歓声をあげながら、花だけにかぶりつくシリウスは時折花に激突して花粉を浴びながら前進していく。いや、あんだけ食べられるとどんな味なのか、ホントに気になる。

「いただきまーす」

額のところでプチっと摘み取り、百合のように深い筒状の花を傾けると貯まっていた蜜がとろりと落ちてくる。

「ん、甘い。凄く美味しい」

花の蜜は薄くて美味しくないハズだけど、これは濃厚で美味しい。シリウスは花ごといっているわけで、これも、もしかして美味しいのかな、どうかな。人間、お腹がへると正常な判断力が落ちるようで。普段ならば絶対にしないけど、やってみたくなりました。花弁を1枚めくりとってみて、ちょっとだけかじってみる。

「うまっ、シャキシャキのレタスみたい」

『オイシー、シホ、オイシー』

「シリウス、そろそろUターンして、食べてきなさい」

『ユーターン?』

「あー、こっちに向かって食べてきなさい」

しばらく、二人の食事は続くのでした。


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