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生まれたものの、かたちとは

名前、出ました。いろんな意味で。

突っ込んだ先に触れたのは、しっとりしているわりにふわふわ。そして、生き物らしい暖かい体温。ちょっとプルプル震えてますね、うん。あー、良かった爬虫類じゃなくて。私、動物飼ったことないけど大丈夫かしら。

子犬ほどなそれをぐっと持ち上げると、光がゆっくりとおさまっていきました。良かった、ずっと光ってたらどうしようかと思うところです。

『カアサン、ハジメマ、シテ』

「ん?」

卵から、どうみても哺乳類がでてくるとは。体毛は濃い灰色で瞳は綺麗なスカイブルー。容姿は子犬に非常に似ているけれど、絶対的に違う点が一つ。額の辺りに可愛らしい角が2つ。

『カアサン、カアサン』

「あー、残念ながら私は君のハハオヤではありません」

『カアサン、カアサン』

キュンキュン泣いている声に、可愛らしい男の子の声が重なっていて、間違いなくこの獣が話しているように聴こえる。

「だから、私はカアサンではありませんって」

『デモ、ボク、カアサンガ、キタカラ、ウマレタヨ』

「偶々通りかかっただけですからね」

言っても呼び方は変わらず、まだ結婚もしてないのにそんな風に呼ばれるのは大変微妙です。そもそも恋人がいないから、結婚などありえません。

『カアサン、ネェ、カアサン』

「せめて、名前で呼ぼうか。私は、藤堂志穂」

『ト、トゥ……シオ、シホ』

「と・う・ど・う・し・ほ」

『ト、ドー、シシホ』

「……うん、志穂でいいや。言ってごらん、し・ほ」

『シホ、シホ!』

喜びも顕にキュンキュンされると、なかなか悪い気はしません。頭をぐりぐりと撫で回すと、頭でこちらを押すように答えてペロペロと手を舐めてくる。うう、可愛い。

『シホ、シホ。ボクノナマエ、ナニ?』

小首傾げても、あざとく可愛いだけだから。しかも、さりげなく命名しろときたもんだ。名付けってなかなか責任重大じゃないですか。どうしたもんか。

「あー、大事なことだから、後で決めようか」

『アト、イツ?』

泣きそうなくしゃくしゃの表情で、しっぽもだらんと下がる。

「適当にしちゃ、不味いでしょ」

『アト、イヤ。イマ、イイ』

「そんな事言われても」

期待に満ちた目で見ないで欲しい。キラキラして、何気に押しが強いし。

「分かった分かった、考えるから」

『ウン』

うんうん唸ったものの、すぐ出るわけもなくだんだん疲れてきたのでこれでもういいかと決めました。

「シリウス、でどう?」

『シー、ウス?』

「シリウス、し・り・う・す」

『シィリウス』

ま、大体形になってるかな。って、私は結局何してるんだか。

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