いつもの朝、まさかの穴
始めてみましたが、どこまで行くか、、、。
広いお心でご覧下さい。
代わり映えのしない朝、家を出た私はガツガツとハイヒールを鳴らして最寄り駅に向かって移動中。
空は快晴、真っ青に晴れ渡り、雲一つなし。
ハイヒールがカツカツなんて可愛らしい音じゃないのは、限りなく走るに近い歩幅とスピードだから。
正直暑い、スーツの下に着込んだブラウスは汗まみれ、化粧は溶けて目の周りがパンダちゃんになっているかもだが、どんなに暑かろうが、今スピードを落とすわけにはいかない。
なぜならば、はっきり言ってこのままだと見事に、もれなく遅刻です。真面目に笑えません。
直属の上司は柔和な面立ちに反してなかなかのスパルタ加減なので。あの見かけに騙された何人が騙されたのか。
いや、それを上司に言ったなら『勝手に幻想抱いて、勝手に勘違いしてろバーカ』などと言われそうですが。
とにかく、遅刻などしようものなら…怖くてこの先は話せない。どうなってしまうかなんて考えたくもないのです。
そんな恐怖を噛み締めつつ、背中に愛用のリュックを背負い、速度を維持しつつ航行中。
いや、自分は船じゃないけどね。慌てて移動しているせいかガッシャガッシャと音を立てるくらい揺れているリュックの中の大事なお弁当がどうなってしまうかなんて、最早些末なことなのです。お昼には間違いなく後悔したとしても。
そんなこんなで、私は非常に焦っていたのです。だから、道路に空いた大穴に全く気づかずに、あっさりすっぽり落ちました。遊園地のフリーフォールより早く、大きな浮遊感に包まれて情けなくも『びゃーー』という、可愛くない悲鳴をあげながら落ち続けたのです。