1話
ひっそりとした霧が濃い森の奥、生き物の一匹すら存在しないような沼地のすぐそばに寂れた一軒家が建っていた。
建っていたと言っても、6畳の花壇は2つとも花はすべて枯れ、馬車が余裕で通れそうな門は錆びれて崩れ落ち、赤煉瓦と煙突が特徴的な家は大きい穴が無数に空き、家を覆うように苔、蔦が無造作に生え今にでも崩れ落ちそうな家だった。
そんな家の中に男が一人今日も椅子に座っていた。
「結局、プレイヤーは来なかったなぁ、100年の間待ち続けてたのによぉ、結局椅子からも立てず、誰とも戦えなかったか...」
彼の名は、ネピネピ。100年前に流行した世界最大のVRMMORPGの裏ボス、つまりNPCだ。
この世に数多の数のVRMMORPGがある中でこのゲーム『プルート』が群を抜いて流行った理由は全てのモンスターに人工知能をインストールしたため、倒されるたびにモンスターが学習し、行動パターンが変わるという世界初の独特なゲームを創り出し、そのゲーム『プルート』はゲーマー達の心に火をつけた。
しかしながら100年も経つと、ステータスもそこまで高くないモンスターによる集団リンチや、近距離攻撃が届かない位置からの遠距離攻撃などまさしくプルートのように罠を行うようになり最終的にゲーマの心を折り、今日サービス終了となっていた。
そのため、ネピネピもゲームから解放される喜びとプレイヤーに会えなかった寂しさで微妙な感情になっていた。
そんな彼の元に今日も、訪れる者たちがいた。
「お前らも懲りねえな、今日はー、えっと、オークとエルダーリッチにワイバーン、そしてアダマンタイトゴーレムか。オークだけ場違いじゃね?」
「ブモォォオ‼︎ブヒッブモォオオ‼︎」
「何言ってるかわっかんねーよ‼︎」
彼の元にプレイヤーは来ることはなかったが、彼を倒す事で得られる能力を求めて多くのモンスターどもが狙うようになっていた。
その能力は【言語魔法】現在ネピネピのみが使用できる能力であり、このゲーム内最強の能力だった。
「サービス終了前の年貢納めには丁度いいか、我は命ずる《自害せよ》」
「ブモォオオオオオ‼︎」
「残ったのは、えーっと、オーク全滅、他が4割と、マジでオーク場違いじゃん。まぁいいや、重ねて我は強く命ずる《自害せよ》」
たった二言だけでネピネピに押し寄せていた1万の大群を全滅させる力。この能力は込めた魔力量より多い魔法防御力を持つものには効果が薄いという弱点があるのだが、彼は裏ボスであり逆にその弱点はプレイヤーのみが有効打を出せる救済処置でもあった。
そんなことを言っている間にサービス終了まで1分を切っていた。
「やっと解放されるんだな、この長かった椅子に縛られるだけのぼっち生活も」
「人工知能だからあるかどうかわかんねーけど、次は人間として暮らしたいな、普通の家に生まれて努力して何か秀でた人になって可愛いお嫁さんをつくって和気藹々とした人生を送りたいな...」
残り時間も少なくなり残り10秒。
「残り10秒だし、今まで言わなかったけどさ、さすがにネピネピはだせーぞ!次はマトモな名前でお願いします!!!!!」
3...2...1...........。あれ?
目を開けるとそこは真っ白で何もなく永遠と続いたそうな空間に
[転生まで23:59:56〔転生内容変更はこちら〕]
【現在の転生情報:バッタ,能力:無,余命3ヶ月】
【転生先:地球】
と書いていた。
「は?」