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ギルドカードがプラバンってどうよ  作者: 十一月十二月
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第二章 評価確定(ギルドカード)

 ファイターギルドの後、透は進むブース進むブースでファイターギルド同様測定器の結果に驚かれ、謎のブツを次々掴まされては驚嘆されるという次第。

 一番大変だったのは、最後のテイマーブース。

 他のブースの倍ぐらいの広さがあるな、と入ってみるとそれぞれのサイズに合わせた檻に入った大小10匹ぐらいの動物がいた。

 そこにいたムツゴ〇ウさんに似た係の人によると魔獣とのこと。そしてやらされたのは、それらの魔獣を順番にわしゃわしゃして行くというものであった。

「魔獣と言っても怖くないですよお。魔獣と言ってもこの子たちは普通のペットと変わらないですからあ。」

 透は、動物の写真を見るのが非常に好きである。しかし、ナマの動物に触るということは非常に苦手である。まず、ぷち潔癖症なので不潔に感じられるのである。また、怖いのである。噛まれるのが怖い。そして生きてるものに触るのが怖いのである。例えば犬がお腹みせて寝転がってるのをなでたり、動物を持ち上げたりしたときにその柔らかさとか息遣いとかを感じたらそれ潰したらどうしようって言う強迫観念が起こってしまうのである。それでも何とかすべてわしゃわしゃし終わったら、ムツゴ〇ウさんがブースの外からリードを引いて連れてきた熊みたいなやつをわしゃわしゃしろって言われた時は死ぬの?俺と思った。

 そんなこんなで疲れ切った透は、体育館の出口付近に並んでいるギルドカード発行待ちの列の後ろについた。

 クリアファイルに入った紙に、各ブースの担当がそれぞれ何か記入しているが、透が見ても、何が書いてあるのか全然わからない。まず日本語でない。英語ですらない。聞くところによるとギルド連合では何か独自の文字があるとか。そういうものか、と透がクリアファイルを眺めているど、体育館に市の職員っぽい人が駆け込んできて、「呉羽さん、呉羽透さんはいますか!」と呼び出し始めた。

 透は何事?と思いながら、「はい」と手を挙げると、職員らしき人は、「市民会館の4階の中会議室にいらしてください」と告げた。


 透が中会議室のこんこん、とノックをすると、中からパタパタと足音が近づいてきた。

 ガチャ。会議室のドアが開き、中から灰色と白のシスター服?のような服装の少女が現われた。

「呉羽さんですね、どうぞ中へ。」

 透の胸ぐらいの身長、透が185cmであるから下手をすると150cmに届かないほどの少女に促され、透は会議室に入り、ドアを閉めた。

 会議室は、本来そこに配置されていたであろう会議用テーブルと簡易椅子が折りたたまれて部屋の隅に積まれていて、ひろびろとした空間になぜか社長室にでもあるような机が真ん中におかれ、右側に書類の山、左側には手動の裁断機のようなものが置かれていた。

その机の手前と向こう側に座り午後地のよさそうな椅子が置かれていた。

「そちらにお座りください。」

 透は促されるままに手前の椅子に腰かけた。

 少女は机を回り込んで向こう側の椅子にぴょん!と腰かけた。

 こちら側からは見えないが、多分足が地面についていないであろう。

 透はまじまじと少女を見た。結論から言うとどストライクである。ふわさらの金髪ロングに小柄な美少女である。いい歳こいてアニメ美少女に萌えー、推しーとかつぶやくような男には目の前に奇跡が顕現しているとしか見えないのである。

「はじめまして。私は、フレイシア・プラムリングといいます。ギルド連合日本支部の中央管理部ってとこに所属してます。」

「呉羽透です。どうも。。。」

「呉羽さん、実はですね、」

「はい。。。」

 透は緊張して答える。何か重要なことが告げられるようなプレッシャーがかかるが、緊張は、目の前の奇跡の顕現との会話に対しての方が大きかった。

「呉羽さんの適正検査の結果から考えると。。。」

「考えると。。。」

「該当するギルドカードを選べないんですよ。」

「へ!?」

 奇跡に見入っていた透は、突然の宣告に混乱した。

「奇跡、じゃない、カードが選べないってもらえないんですか?受け皿のシビルでさえないって市民権すらないんですか?」

 フレイシアは、笑顔で答えた。

「いえいえー。カードはお渡ししますよ。ただ、どのギルドにも該当しな。。。いえ、すべてのギルドに所属するって言った方がいいですね。すっごく規格外なんですよ。」

「規格外?」

「適正検査の測定器ありましたよね?あの装置で呉羽さん、どのギルドの測定器も針がピクリともしなかったそうなんですね。でもあれってものすごく精密な装置なんですよ。適正ジョブ以外のジョブであっても微量な数値がでるんです。」

「はあ。。。」

 透は、とりあえずカードがもらえることに安心し、また奇跡の金髪が揺れるのを眺めだした。

「それがピクリとも動かないということはどういうことかわかりますか?」 

 フレイシアは少し前にのりだして聞いた。

「いや。。。」

「測定器が測り切れないほど大きな値は測定器壊しちゃうんで安全装置が遮断しちゃうんですよ。」

 フレイシアは金髪を揺らしながら両手を胸の前で握りしめた。

 透はその姿に、あざとい!そこがいい!とか思いながらきらきら光る少し赤味がかった瞳をみつめた。

「つ・ま・り、呉羽さんはどのジョブも測定範囲外を叩き出しちゃったので、どのジョブが一番適正かってわからないんですw。どれでもあって、どれでもない。すごいですよね!適正値の差なんて誤差みたいな感じになってます。」

 透は、奇跡からすごいって言われて天にも昇る心地であった。

「そ・こ・で」

 フレイシアは、口をすこしとがらせて、右手の人指し指を口の前で振りながら、何故か小声で言った。

「そこで?」

「特別に、特別なカードを発行しま~す。」

「特別なカード?」

 フレイシアは机の上の書類の山の一番上にあった大判の封筒を取り、中から何かを取り出した。

「じゃーん!」

 フレイシアは、取り出したものを透に見えるように目の前に差し出した。

「プラバン。。。?」

 見た感じ、紛うことなき透明なA4サイズのプラバンであった。反動で少しびよんびよん揺れている。

「違いますよ。これは魔素結晶から切り出したシートです。ギルドカードの材料です。」

「ギルドカードがプラバンで。。。」

「だ・か・ら、プラバンじゃありません!」

 ちょっと怒った奇跡もよいな、と透は思った。

「本来ならこのシートにそれぞれのギルドにあった魔周波を流して、あ、魔周波っていうのは、魔力も音や光のように波があってそれのことを言うんですけど、それを流すと魔素結晶は流された魔周波の特性を持つんです。」

「ふむ。」

「特性をもった状態の魔素結晶に対して特別なエンチャントでシーリングしてギルドカードになるんです。」

 フレイシアは、少し胸を張りどや顔になっていた。胸はつつましい。

「今から呉羽さん用のギルドカードを作ります。私特製ですよ。」

「特製」(ごくり)

 透は少しテンションが上がった。

「はい。呉羽さんの場合、どれかのジョブを割り当ててもいいと言えばいいんですけど、もったいないですよね。だからギルドカードに特性を持たせないようにします。ギルドカードって特性を持たせて、所有者とリンクさせることで所有者のジョブ能力を引き出す効果が出るんですけど、呉羽さんの場合、ギルドカードに特性持たせなくてもジョブ能力が駄々洩れしてくるレベルの数位なんですよw。」

 フレイシアは手に持ったシートをびよんびよんさせながら言った。

「駄々洩れ。。。」

「それじゃあ作っていきますね。」

 フレイシアはぴょんと立ち上がり、机の右側、透から見て左側にあった裁断機のようなもののレバーを上げ、手にもってシートをセットし、レバー両手でつかみ、体重をかけて振り下ろした。

 じょぎぎぎぎぎ...ずん。

 プラスティックを押し切るような音がした。

「やっぱりプラバンじゃねえのか?」

 透は思った。






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