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ギルドカードがプラバンってどうよ  作者: 十一月十二月
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第一章 適正検査(トライアル)

「うあ、結構並んでるよ。。。」

平日の午前、片田舎の体育館が併設された市民会館の駐車場。普段なら止まってる車もほとんどなく、祭りや選挙の時ぐらいしかいっぱいにならないところにびっしりと車が駐車し、入れない車がさらに並んでいる。市民会館の入口前の広場にはコミケの待機列よろしく、小腸並びで人があふれかえっている状況など、この街で50年近く生まれ育ってきたが、透はこれまで見たことはなかった。

「こりゃ1日潰れるな。」

 魔素による能力顕現を検査し、適正なギルドへの加入が義務付けられてから1か月ほど、忙しさもあったが連日の適正検査トライアルの混雑をネットニュースで見て先延ばしにしていたが、そろそろ混雑が緩和されてるだろうという予想はあっさり裏切られた。

「半日で終わって午後は映画でも行こうって思ってたんだけどなあ。せっかくの有休が1日並び疲れで終わるのか。。。」

 昨日、会社で後輩が、

「トライアルなら一昨日行ってきましたけど、むっちゃすぐ終わりましたよ!余裕っすよ!ほら見てください、自分テイマーっすよ!何かかっこいいっしょ?」

とギルドカードを見せびらかしながら言ってたのを思い出し、ちょっといらっ☆っとした。

「何が余裕っすよ!だよ。そういやあいつの家ってうちよりかなり田舎じゃねえかよ。いま思いだしたよ。それに何がテイマーっすよ!かっこいいっしょ?だ。紋なし線なしカードの実力ってそこらのワンコに言うこと聞かせられるレベルだろ?よーしよしよしって、どこのムツゴロウさんだよ!」

 適正検査を受けると自動的に能力に合ったギルドへの加入となり、ギルドカードが発行される。、ギルドカードは8つのギルドそれぞれに色分けされている。

 ファイターギルド   赤

 メイジギルド     青

 クラフターギルド   黄

 ギャザラーギルド   緑

 エンチャンターギルド 紫

 テイマーギルド    茶

 シンガーギルド    桃

 シビルギルド     白

 そしてギルドのごとの小区分、例えばファイターギルドで剣士適正には斜めにホワイトのラインが入る。

 ラインが入らないものはそのギルド適正が他のギルド適正よりやや高いだけで区分上便宜上発行されているレベル。

 線なしと呼ばれていて、特に日常生活に大きな変化はない。

 それでも白以外の色は、持っているとちょっと自慢できるステイタスカードにはなる。

 白のシビルギルドは文字通り市民。シビル以外の適正が一切ない、つまり、何のとりえもないものに発行される残念カードと呼ばれている。

 線付きの中でも、能力の高い者は、カードに紋様が刻まれる。その能力が高ければ高いほど紋様が複雑になっていく。例えば剣士だとやや強い剣士は剣を模した十字みたいな記号が、上位になるとその十字が剣の形になり、その剣の周りに様々な装飾が施された形になる。

 紋つきカードとなると国から特別手当が出る。かなりの額であり、仕事を辞めても十分食っていけるほどである。ただし、ひとたび事が起これば動員されるという制約つきである。ただ、その事が起こるということがどういう事なのかは、ほとんどの者がイメージできていない。戦争に駆り出されるぞ、徴兵反対だとか9条を守れとかいうパヨクが湧いたりするが、今やギルド連合が世界を調停しているのに戦争が起こる訳もなく、いつまで経っても馬鹿だなあ、としか思われていない。

「紋つきにならねえかなあ。そしたら会社辞めてずっとネトゲとかソシャゲとかして暮らすのに。」

 透はやがて50歳。学歴としてはそこそこで、仕事の実績もあるがアピールが下手で上司に恵まれず、この歳まで役付きになれず、もはや出世など見込めない。

 ずっと仕事にかまけていたので結婚どころか女性と付き合ったこともなく(いやあるにはあるのだが、お見合いで数回会ってごめんなさいされたのが幾度となく・・・)、仕事以外はゲームとかアニメに明け暮れる典型的な社畜オタクである。


 朝8時に並び3時間、透は市民会館の受付を済ませ、ようやく適正検査の会場である市民体育館の入口にいた。

 受付の女性が、

「良かったですね~。午前の受付は呉羽さんで終わりです♡」

とか言って背後の視線がかなり痛かったが、透はちょっとうきうきしていた。

 市民体育館は、高さ2mぐらいのパーティションが持ち込まれいくつかの区画に区切られて展示会の企業ブースみたいな感じになっていた。

 係の人から、クリアファイルを渡され、番号順に進んでくださいと促される。

 クリアファイルにはブースマップと大きな病院でいろいろ検査する時に持ち歩くチェック用紙みたいなものが入れられていた。

 1番のブースに入ると強面のマッチョが待ち受けていた。

「受付番号1024番の呉羽透さんですね、どぉ~ぞぉ~♡」

 顔に似合わないというか、おネエ?みたいな声色とトーンにたじろぎながらブースに足を踏み入れた。

 強面おネエがメーターがついたダルマストーブみたいな装置から伸びたコードの先についたグリップを手渡してきたので、透はグリップを右手に受け取り握りしめた。

「あらぁ~、残念ねえ、ファイタァギルドには縁がなかったみ・・・?」

 強面おネエが一瞬躊躇する。

「壊れているのかしら。ちょっと待ってねえ~♡」

 測定器の横にいくつかある蓋を開けたり閉めたりして強面おネエは首をかしげる。そして、透の持っていたグリップを取り、自分で測定器を動かしてみる。びぃ~ん!と言う音とともに測定器の針が一気に赤いゾーンまで跳ね上がる。

「強面おネエすげえな」

透は心の中で漏らした。

「壊れてはいないようねぇ・・・。そうしたら、ちょっとこっちを持ってみて。」

 強面おネエは、測定器の横に並べてあったいくつかの筒状のものの一つを透に手渡した。

 透は渡された筒を握る。やや扁平で筒というよりは剣の柄のようであった。

「両手で握りしめて、あ、そこの帯みたいなとこに親指おいて、っ目を瞑って力込めてみて。」

 透は言われるがままに力を込めた。

「いいわ、力を抜いて。」

 透は力を抜いて目を開ける。

「驚いたわ」

「?」

「じゃあ、次はこっちに変えて同じことしてみて。」

 今度は、さっきよりやや大きめで剣の柄というよりは鍬の持ち手のようなイメージのものであった。

「ふん!」

「まさか!。」

 透は、今度は促される前に目をあけたが、握ってるものに何の変化もない。しかし、強面おネエは異常に興奮している。

「次はこれ。」

「今度はこれ。」

 言われるがままに透は並べてあったすべての筒で同じことをさせられた。

「これは運命かしら♡」

 何か鳥肌が立つようなことを言われて、透は硬直していた。

「はい、いいわよ、次の順路に従って進んで行って。多分、無駄になると思うけどぉ♡」

 透は強面おネエに両肩を掴まれ、一瞬引き寄せられた後、前に押し出された。

「ファイターギルドになるのか?それはうれしいけど、おネエと運命って。。。」

 隣のブースにふらふら歩き出す、呉羽透49歳であった。



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