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海に鳴く声  作者: 目目(めめ)
2/2

#1 はじめのはじまり

――まずは、どこから話そうかな。

時代背景がずっと、うんと前で、その前の前の話だからはじめのはじまりのところからかな。

あるものがある“なにか”と出会うまでのお話。

互いの名を呼ぶまでの本っ当に長い昔の話。

舞台はここ。見える全部。……たぶんね。それじゃ行くよ。

 

ここには、はじめなにもなかったんだよ。


そう、なぁんにもね。ほんとうになにも。だから、どれがどれともわからず、だれもわかってなかった。「だれも」の「だれ」っていっても、「だれ」なんてもまだいなかったから、今となってはもう随分、昔の話。

もしかしたら「なにもなかった」っていうのは嘘かな。「なに」がはじめにあったのかなかったのか、覚えているものはほとんどいなかったから。覚えているものがいなかったら、なにがあったのかわからないっしょ。それくらいに有耶無耶で、あやふやで、不明瞭なくらいなにかしも、なにもなかったってことさ。

 けど、なにもなくても、「なにもない」があって――次第にかたちづくられていった。

「なにもない」が「なにもない」といえるまで、「なにか」が命動をもって生まれ始めて。

そうして。

ひかったり、暗闇がやってきたり、火鉢を放って、ばちばちばちと「生命」が自生するまでは、静かで、それも長い時を必要とした。

ほんとうに長いとこ。

永い――永く。

時なんかまだないから、時間ときなんかわからないままに、しずかに、「なにもない」ところから「なにか」ができあがって、「なにか」の数は増殖していったんだ。

 増えるたびに「なにか」と「なにか」は接触して、夥しいほどの「なにか」は生まれ、失われ、また新しい「なにか」が生まれては、消えて。そうして、再び新しい「なにか」ってコト・モノってのが生まれて、一定の規律が出来かけた。それぞれにね。ルールとかそういうやつ。

また、消滅を繰り返し、また元通り、生まれてきたりもなんかあったんだろうねえ。

無秩序の内に生まれてはそれぞれ持つ力が拮抗しては押し競べ。そういう状景がどこかしらどこかしもあった。それも長い間の内に生死を決めていたり、一瞬だったりしたかもしれない。または長い中でようやく決定したものかもしれない。それから、決まらずに平行線にしばらく共存するのもあっただろうね。どっこかしも偶然の産物。ピンからキリまでさ。

 一定の規範内で秩序というのも「なにか」がさっき言った中で同じことを同じだけに繰り返したら繰り返す分に生まれ出した。

その出来事の一連は「なにか」の立場にとったら必死なこそ必死だったかもしれない。

だって、なくなったらそれまでだからさ。なくなるってのは「消滅」っていう意味だから。あとかたもなくなるんだよ。でもその頃に遡るとその「なにか」に意思があったのか定かじゃないけど。けど、鼓動を打ち鳴らすような熱のほとびはあった。

ひとつ、一時的に確固とした「なにか」が出来上がるまではそれもうほんとうに……気の遠くなるような話だったんだ。

 なにもないところから、「なにか」が出来るまではそれぞれ、太陽とか空とか今踏みしめている地面とか、見渡す限りのない海とか、削り出された大岩、そびえ立つ森林、雨を降らす大雲……とかそういったもの。

引き合いに出すボキャブラリーが貧困すぎて悪いけれど、ここ全体に見える構成された元素エレメントのそれぞれを指しているってこと。

そういった元素粒子が滞りなく循環されるまでそりゃもう怒濤のぶっ通しだった。

 一つの球体が出現してその偶然の繰り返しで形成された枠組みの中、天からさ。隕石が降って振っては、大爆発が起きては、起きまくった。地上へ大地へとぶつかりあって、巨大な力が衝突し合って、とにかく生命を生み出すのに、生きた素粒子を必要とした。海はこのときまだ火の海だったんだ。そして、活発だった熱が冷えるとその頃には水蒸気が発生するようになってね。

――始まりとなる雨が降ったんだ。たくさんたくさんね。

生命の源となる水が何年もかってくらい、どしゃぶりにずっと降り落ちた。辺り一面そこでまた生命を生み出す素になる大海が生み出すまでずっとずっと長らく時間が掛った。そこへ矢次と彗星が降ってきたり、ほんとうに爆発と爆流のその繰り返しだった。熱で塗り固められた火山が噴火したり、固まったら地となって足場が積み上げられたり、またこれでもかって隕石がかわりがわり、わい出ては「なにか」が消滅したり環境すみかに変化を及ぼしたりの流れの一連、影響を与え与えられ作用し合いそうして永らく。

 生命があぶくうった。

 あぶくうった命があって、はじめてなにかが誕生して、「なにか」は出来あがった。あっという間に消滅をえんえんと反復して。本当の本当に永遠の胎動の時を経てね。

そして、その中で肝心なその命を永らえるために秩序が出来上がっていた。その秩序を主に担ったのは、力が大きいものたちで有り体に言えば、秩序をつくる上でなくてはならないかみがまとめていた。熱には太陽、水には海、木には森林……ってね。たとえば、水の中にいる生物たちは水がなくては生きていけないだろ。地中に埋まっている植物も、そこから派生して生まれる生物たちも。自然界と云うものを成り立たせる自然の主さ。たくさんのエネルギーの衝突が起きては立て続き、生き残ったものたちが秩序で。そのそれらだった。

「なにか」がやっと定まるまでの間、ふわふわとして意思なんかまったくなかったけど、その中の性質というものがどんなものか時間を掛けてわかっていくと、それも出来始めていた。

〝思念〟っていうものが。

…。

………。

 まあさ、そんなところで、今日は仕舞い。

ほら、も、どっぷり夕方だしさ。ま、思いの外、長くなったかな。

今日は堅苦しくなったけど、次はやわらあかくなるから。はは、意外に真面目っぽくてごめんね。

言い訳がましいけど、人になにかを語るなんてはじめてのことなんだ。大目に見てくれると嬉しいな。これでも見た目、ポーカーフェイス気取ってるけど内心テンパってる。本当さ。ひやひやしてるくらいだよ。これから、面白くなる……筈さ。うん。

でも、一生懸命、話すからさ。ほんとほんと。

だからさ、聞きたかったらまた明日来てよ。なっ。


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