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りょーちゃんはね、カワイソウなんだ

作者: 村上泉

 りょーちゃんはカワイソウなんだ。

 りょーちゃんはいつもひとりで公園にいるんだ。

 だから私はりょーちゃんと遊ぶの。

 りょーちゃんと遊ぶのは楽しいよ。

 だって、りょーちゃんは優しいから。

 頭だって撫でてくれるし、お絵かきだって上手だ。


 りょーちゃんはカワイソウなんだ。

 優しすぎるから、恋人にフられちゃったの。

 でも、りょーちゃんは私に、にっこりと笑うだけなんだ。

 だから、私はりょーちゃんにぎゅってしてあげるの。

 でも、りょーちゃんは困ったようにまた笑うだけなんだ。


 りょーちゃんはカワイソウなんだ。

 りょーちゃんは、おうちが嫌いなんだって。

 あんまり帰りたがらないんだ。

 だから私もりょーちゃんが帰りたくなるまで帰らないの。


 りょーちゃんはカワイソウなんだ。 

 だって、りょーちゃんはとっても絵がうまいのにお父さんとお母さんは誉めてくれないんだ。

 だから私がいっぱいすごいって言うの。

 だって私も誉めてもらいたいから。

 りょーちゃんはありがとうって笑ってくれて、だから私もありがとうって笑うんだ。


 りょーちゃんはカワイソウなんだ。

 りょーちゃんは男の子なのに泣き虫なの。

 私のことで泣いちゃうの。

 手と肩と足とお腹、ちょっとだけ痛いんだ。

 それで私のことを泣きながらぎゅってするの。

 あんまりにも強くぎゅってするから、黒くなっちゃったところが少し痛いけど、温かいから私はりょーちゃんのぎゅっが好きなの。



 ある日、りょーちゃんは怖い顔をして、私の手を握った。

 もう日が暮れて、真っ暗になってる。

 いつもとは違う道を歩いた。

 不安になって、りょーちゃんを見上げたけど、りょーちゃんも泣きそうな顔をしてて、私はりょーちゃんにニコッて笑った。

 

 白い壁の建物が見えてきて、りょーちゃんは「もうすぐだよ」って言ったんだ。

 私はよく分からなかったけど、「うん」って頷いた。

 

 建物に入ると驚いた顔のおじさんがいた。

 そこで、おじさんにりょーちゃんが何か言って、私はおじさんと二人でおしゃべりしてってりょーちゃんに言われた。


 おじさんは色んなことを聞いてきた。

 とくに、お母さんのこと。

 私はいっぱい話した。

 お母さんはすぐに怒って叩くし、大きな声で叱るし、物を投げる。

 ご飯もくれない時だってある。

 だから嫌いだって。


 おじさんの顔はどんどん怖くなって、でも最後は優しく頭を撫でてくれた。


「もう大丈夫だよ」


 おじさんもりょーちゃんもそう言った。

 確かその日は帰ったんだと思う。

 でもしばらくして、私は白い建物で暮らすことになった。

 もうお母さんとは会わなくていいんだって。

 それは嬉しかった。

 りょーちゃんは会いに来てくれるし、白い建物でお友達も出来た。

 毎日楽しいんだ。



「綾ちゃんは可哀想なんだ…か」

「なんだよ、それ」

「小さい私の日記」

「ふーん。読ませて」

「いいよ。でも、「りょーちゃん」のことしか書いてないよ」

「なんだよ、それ」

「私から綾ちゃんへの愛しか詰まってないよ。綾ちゃんは可哀想って。言い得て妙だよね。鋭いな、小さい私」

「やめてくれよ。可哀想じゃない、俺は。自分の人生に満足してるし」

「なにそれ、おじさんくさい!」

「もう十分おじさんだろ」

「おじさんでも大好きだよ、綾ちゃん」

「…勘弁してくれ」



 「りょーちゃんはカワイソウなんだ。」

 ー小さな私が必死に主張したこと。

 自分を守るための言葉。

 

 可哀想な子に捕まっちゃった可哀想な綾ちゃん。

 ずっとずっと大好きだよ。

 ずっとずっと一緒にいてね。


 

 

 


 

 

1000字を目指しましたがまとまりませんでした。読んでくださりありがとうございました。

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