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「戦車引っ張って来てレストアするのはいいけど、こいつ出来んのか?」
ブラッドハウンド隊 隊長車の操縦手、マーズは今回の戦闘で回収してきた戦車を見ながら言った。
「Ⅳ号戦車J型・・・
かなりぼろぼろですね」
整備隊班長のケンが言った。
戦車やそれ以外の装甲車輌などの整備は整備隊の仕事だが、マーズが整備が得意で彼自信が整備をしたいと願うため操縦手であるマーズも整備隊と共に戦闘車輌の整備をしている。
「もうこれ直せないから放棄されたんじゃないのか?」
「放棄というより部品取りじゃないんですか?」
マーズの言葉にケンは返した。
「確かになぁ。左の転輪は8個中3個無いし、右は4個無い。」
「おまけに右はドライブスプロケットまでないですよ。他にも右は履帯無いし、左の砲手のハッチは無くなってるし、エンジンハッチのグリルまで割れてる」
ケンはⅣ号の修理ポイントを一つ一つ言っていく。
「どうします?」
ケンはマーズに聞いた。
「んー・・・
とりあえず全バラして使える部品使えない部品に分けて、エンジン、主砲、トランスミッション、その他もろもろをオーバーホールして、足りない部品と使えない部品はあそこにあるⅣ号から取っていこう」
マーズは格納庫の奥にある朽ちたⅣ号を顎で指しながら言った。
「あいつもこいつと同じような運命辿るんですね・・・」
「唯一違うのはレストアされるってだけだな。
そうだ、ばらす前にエンジン動くかやってみっか」
マーズはケンの言葉にそう返し、操縦席に入ろうとした。
「かけるんですか?エンジンかけたらドッカーンってなんないですよね?」
「・・・先にばらそう。」
マーズは言った。
「はぁ・・・、また途方もない過酷な整備になるわけですね。悪夢だ・・・」
ケンは深くタメ息をつき肩を落とした。
一方、エンジェルス隊では・・・
「はぁぁ・・・
もう少し砲力つかないかなぁ」
エンジェルス隊長のケイラーは自分が乗るM4シャーマンを見上げて言った。
M4シャーマンはアメリカの主力中戦車である。シャーマンは走・攻・守の3つがバランスよく取られた戦車ではあったが攻・守ではドイツ戦車に劣っていた。
「M1でも積みますか?」
ケイラー号車の砲手、ジェイク・フェードマン軍曹が言った。M1は76.2mm砲のことで砲身が長くなり、装甲貫徹力が強化されている。
「それもいいけど、90mmがいいよね。」
「うちで最大の火力持ってるのはジャクソンですもんね」
同号車の操縦補佐、マイク・サイモン二等兵が言った。ジャクソンとはアメリカの戦車駆逐車 M36ジャクソンのことだ。90mm砲を搭載した自走砲で1000m先からティーガーⅠの車体正面装甲を貫通できる程の火力を持っている。
「ブラッドハウンド隊の整備隊にお願いしてジャクソンの砲塔載せて貰おうかな?」
ケイラーはM36ジャクソンを見ながら言った。
「それじゃぁ、単なるB1になっちゃいまよ」
同号車の装填手、サラ・シャンティー軍曹が笑いながら言った。B1はM36の型式のひとつでM4A3シャーマンの車体にM36の砲塔をまるごと載せた車輌である。
「高火力で重装甲の新型戦車を要求はしてるんだけど・・・」
「それいつ配備されるんですか?」
ケイラーの言葉にマイクが言った。
「さぁねぇ、まだ試作段階だって聞くし配備されてもみんながそれに馴れるまでには時間かかるでしょうからしばらくあとね」
「ドイツはすぐに新型戦車を開発してくるってのに、アメリカはずっとシャーマンか・・・」
マイクはシャーマンを見上げながらそう言った。
「アメリカはいつになったら火力がある戦車が必要だと気づくんだろう・・・
はぁ・・・、ずっと75mmのまんまかぁ・・・」
「悪夢ですね・・・」
ケイラーの言葉にサラが気を落として言った。