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村に侵入と同時に展開した歩兵隊は敵部隊の激しい抵抗を受けていた。
「くそっ攻撃が激しすぎる!」
ブラッドハウンド歩兵班長のディアロ軍曹は言った。
「MG42!」
この声と同時に物凄い勢いで銃弾が飛んできた。MG42は毎分1200発の発射速度で、布を裂くような独特の発射音から連合軍兵士はヒトラーの電動ノコギリと呼んで恐れた。その銃が今はブラッドハウンドの歩兵隊に襲い掛かっているのだ。
「反撃出来ねぇ!」
ディアロ達歩兵隊は建物や建物の瓦礫の影に隠れて銃弾をやり過ごす。だが、突然銃撃が止んだ。止むのと同じタイミングでライフルの銃声がなった。
(ウォルフか)
ディアロは思った。ウォルフ・ドーゼン上等兵が敵の機関銃手を狙撃したのだ。彼はブラッドハウンドが誇る名狙撃手で彼が弾を外すと嵐が来るとまで言われるほどの命中精度をもつ。
「今だ!」
ディアロは叫び、建物の影から出て敵歩兵を撃っていく。そしてディアロの言葉で他の隊員達も影から身を出して撃つ。もちろんウォルフも狙撃をする。彼が愛用しているライフルはGew43というライフルだ。これはセミオートマチックライフルでマガジンの装弾数は10発だ。このライフルの連射性とウォルフの狙撃テクニックとディアロ達の攻撃により敵兵は次々に倒れていく。だが敵も一歩も退く様子はない。そして敵部隊はとんでもないものを出してきた。
「おいおいおい、マジか!」
「Ⅱ号だ!」
敵はⅡ号戦車を出してきた。Ⅱ号戦車は主砲に20mm機関砲を装備している。それが火を吹いた。20mmの砲弾がブラッドハウンド隊に目掛けて飛んでくる。
「くそっ、何でこんなときに戦車隊と離れちまうんだ!」
初めは戦車隊と共に行動していたが、敵戦車との戦闘と混乱で離れてしまった。
「アール!」
ディアロは部下のアール三等兵を呼び、
「そいつをぶちかませ」
「了解!」
アール!は背中に担いでいた対戦車兵器、パンツァーシュレックを肩に担ぎ、
「掩護をお願いします!」
とディアロに言った。ディアロはうなずき、敵に
銃弾を浴びせる。その間にアールはパンツァーシュレックを構え狙いをつける。そして引き金に力を入れて
「発射!」
と叫んだ。勢いよくパンツァーシュレックのロケット弾がⅡ号戦車目掛けて飛んでいく。しかし、Ⅱ号がタイミング悪く発射したとたん後ろに後退し、ロケット弾はⅡ号戦車に当たることはなかった。さらに、撃ったことでこちらの居場所が見つかり、砲塔がこちらに向いた。
「やっばい!」
ディアロはそう叫び逃げようとした。が、体が動かない。あまりの恐怖で頭では逃げようとするものの体は硬直してしまっていた。ディアロは死を覚悟し目をつぶり、そして砲声がなった。しかし、Ⅱ号戦車のものではなかった。しかも大きな爆発音まで聞こえた。ディアロは目を開けた。そこには大破したⅡ号戦車があった。後ろを振り返るとM4シャーマンがいた。主砲からは煙が出ていた。間一髪、エンジェルスの戦車隊が駆けつけたのだ。
「俺は一生分の運を使ったな」
ディアロは一人呟いた。そしてすぐに部隊に指示を出した。
「戦車がこんだけいたらこっちが有利だ。一気に押し込むぞ!」
その言葉に隊員達は一斉に身を乗り出して敵に銃弾を浴びせた。エンジェルスの戦車隊も4シャーマン輌で榴弾を発射し、車体前方機銃掃射して敵を追い詰めていった。