自己紹介
翌日の朝、今日も昨日と同じ時間に登校する。
昨日と違って今日からは8時半登校だからなのだろうか、教室にはすでに数人生徒がいた。俺の隣の席にもすでに男子が座っていた。
顔や首があまり日焼けしてなく、肩幅があまりない小柄なやつだ。身長は160cmくらいだろうか。
まあ、特に挨拶をすることもなく俺は自分の席に座った。
隣の生徒はちらっとこちらに目を向けたが、それだけだった。
そして、1時間目が始まった。
2日目なだけあって欠席している生徒もなく、予定通り自己紹介が行われている。
話すことは、名前と中学の時の部活、それと趣味だった。
出席番号順に行われているが、やはり顔も名前も1,2回では覚えられない。
そう思いながらもそれぞれの自己紹介を聴いていると、昨日の朝の読書少女の番が回ってきた。
彼女は立ち上がり俯きがちに自己紹介を始めた。
初めて聞いたその声は弱弱しく自信のなさげなものだった。
「関本亜矢です。中学では文芸部に入っていました。趣味は読書です。よろしくお願いします。」
言い終えた彼女は席に座る。その後ろの生徒が立ち上がり自己紹介を始めた。
なるほど、昨日のお遊びでやった推測はあながち外れていなかったらしい。どうでもいいことだが、そんなことに運を使ってしまったと思ってしまうのは俺だけだろうか。
そんなことを思っているうちに、俺の隣の席の男子の番になった。
「えーっと、中西勇太です。中学では弦楽部でした。趣味は音楽を聴くことです。よろしくお願いします。」
彼はやる気のなさげな声でそう言った。
彼の雰囲気からなんとなく思ってしまった、ああ、こいつはクラスの中であまり馴染めないのだろうなと。自己紹介からこのテンションはあまり友好的でないように感じた。
そして、ついに俺まで順番が回ってきた。
クラス中の視線を受けつつ立ち上がり、誰の顔を見るでもなく前の黒板に焦点を合わせて話す。
「渡辺桂人です。中学ではサッカー部に入ってました。趣味はアニメとゲームと読書、主にライトノベルなんですけどね。よろしくお願いします。」
クラスメイトの顔を見渡してから、席に座る。
彼らの反応はいろいろだった。
あるやつは興味のなさそうな顔をし、またあるやつは嫌そうな顔をしたり、といずれにしても好意的な反応をする人はいなかった。
これで俺のクラス内の立ち位置は俺が行動をしなくても勝手に決まるだろう。少なくとも中心的な人物にはならないはずだ。そうでないならどこでもいい。
2時間目になった。先生が教卓の前に立ってこの時間に行うことを説明する。
「この時間では委員会活動決めを行います。委員会自体は数も多いわけではないので全員がやることはないんですが、それでは不公平なのでクラス内の係をいくつか作りました。なので、どれか1つはやることになります。
なお、各委員会は男女一人ずつと決まっているのでうまく分かれてくださいね。
先に学級委員を決めて、あとは学級委員二人に進めてもらいます。」
黒板には学級委員、保健委員、図書委員・・・と次々に委員会と係が書かれていく。
先生がそれらを書き終えてから5分後に再び話を始めた。
「もう決まったかな?聞いていこうと思います。学級委員やりたい人は挙手!」