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一応花婿である武田太郎が主役なのですが、親父過多になるかもしれません。花婿目当ての方、申し訳ありません。
武田太郎(タケダ-タロウ)
この男、ダメ男である。
話は太郎が上杉家の長女花子との婚約を、花子の親父鉄男に報告する27年前まで遡る。
どこまでも広がる淀んだ星空。場所は日本屈指の工業地帯である高田市(実在するかは知らん)でございます。
東京タワーならぬ、高田タワーという中途半端な高さしかない電波塔。その塔に一番近い松平工場で働くのが上杉鉄男でございます。
幼い頃から不器用、無口、頑固と堅物を絵に描いたような男でありました。そんな男に恋をしたのが工場長の一人娘である松平桃子でございます。
この桃子、鉄男が失敗に失敗を重ねながらも、諦めずに何度も挑むその姿勢に惚れたのであります。
一方、不器用な鉄男は工場の仕事が上手くこなせず、心の中で嘆く日々。そこに現れたのが清楚で可憐な桃子譲でした。
すぐに恋愛物語が始まってくれたらいいのです。が、そこで何も出来ないのが上杉鉄男でございます。
すぐ横に、手をのばせば届くところに桃子譲。だけどのばさないのが鉄男くん。どうしたもんかと桃子譲。
互いに興味はあるけれど、自分に自信のない二人。
黙って互いに目を逸らす。
そんな一日が今日もまた過ぎるのでありました。